BLゲームの悪役令息に異世界転生したら攻略対象の王子に目をつけられました

ほしふり

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【前編】最悪なタイミングで前世を思い出しました

悪役令息ベリル・フォン・フェリスト

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『恥辱奴隷学園』
R18指定のBLゲーム。
俺がこのゲームを知る切っ掛けになったのは、姉がそのゲームをプレイしていたという事に他ならなかった。
弟の俺が言うのも何だが…姉は屈折した青春時代を過ごしており、その流れで成人した後もズブズブと己の趣味に走っていた。

無論、その趣味を両親に知られるわけにはいかず、姉のそれに巻き込まれるのは弟である俺の役目だった。
俺はというと、昔から気弱な性格であり争いは絶対に避けるタイプだった。
思い起こせば姉弟喧嘩も負けた記憶しかない。
そんな姉に逆らえるわけもなく、ゲーム攻略に付き合わされることもあれば、推しについてのトークを徹夜で聞かされるような毎日を送っていたわけだ。
最初のうちはうんざりしていた俺だったが、作品によっては感情移入できるものもあり、まぁまぁ楽しむ事ができるほどには視野が広くなっていたのだった。

そして、ここから『恥辱奴隷学園』の話に戻る。
姉が執心していたこのゲームは、平民の主人公が全寮制の貴族の名門学園に入学したのを境に悪役令息に目をつけられて恥辱と羞恥にまみれた学園生活を送ることになる。
三年間の学園生活の中でハードなプレイを強要され続ける主人公は攻略対象と出会い、愛を育みながらラブラブエッチを繰り返し、卒業の日に攻略対象によって救い出されるストーリーだ。

…だがこのゲームの物語の中で、悪役令息が罪に問われることは一切ない。
学園生活の中で性奴隷として弄り倒していた主人公に対しても、卒業後には興味を失いエンディング後の接点はないという。
姉いわく「プライドが高いベリル様が屈服するルートを探しながらプレイしていたのに残念~」らしい。
なんだかんだと一緒にその日も徹夜でゲームをプレイしながら過ごしていると、コンビニまでアイスとお菓子を買いに出かけたところで俺の前世の記憶は途切れていた。

思い出した。

…思い出してしまった。

俺は異世界に転生し、恥辱奴隷学園に登場する悪役令息ベリル・フォン・フェリストに生まれ変わっていた。
その記憶を思い出したタイミングも最悪だった。
学園の入学式後、ベリルが従えるモブ生徒たちを教室に集めて恥辱奴隷学園の主人公であるリズ・グラフィットを輪姦する場面で思い出してしまったのだった。
身につけていた制服を剥かれて全裸になった主人公リズが、教室の机の上で仰向けになりM字開脚した状態で上から下から男子生徒のそれを交互に挿入されて犯されている場面。
信じたくはなかったが、ゲームで見たことがあるスチルだった。

(うそ…うそだ…)

俺は記憶を思い出した瞬間、この惨状に対して凄まじいショックを受けていた。
今日の自分の行動を振り返る。
入学式中、隣に座るリズが平民の出身でありながら同じ場所に並んで座っていることが気に食わず、式の途中からずっとリズのズボンとベルトを緩めてそこに手を突っ込み、男性器を弄り倒していた。
艷やかな直毛の黒髪と榛色の瞳が可愛らしい童顔の少年リズ。
厳かな式の中で、彼が射精感に耐えながら声を押し殺す様子を眺めつつ、手元は寸止めで入学式を終えた。
教室に戻ったタイミングでベリルの指示に従った生徒たちがリズを取り囲んで今に至る。
最初は屹立していたリズの前を靴で踏みつけて吐精させたり、モブ生徒に指示してその精液をすくってリズの口に運ばせたり、後はモブ生徒が好きなようにしろと命令したりやりたい放題だった。
輪姦は今もなお続いている。

「あっ、ああっ、あ、あ、あぁっん」

腰を掴んで揺さぶられながらリズはBLゲームの主人公らしく色っぽく淫らに喘いでいる。
もうやめてあげて!お願いだからゆるしてあげて!などと、俺は心の中で懇願しながら頭を抱えたくなった。
原因は全て俺にあるのだが。
本来のベリルの人格は、俺が記憶を戻したことにより前世で培った道徳観と恥の文化に塗りつぶされながら俺の中に混ざり込んだようだった。
そのせいか、人格は本来の俺でありながらも性交に関する知識や経験やテクニックは頭から腐るほど湧き出てくる。
俺は童貞でありながらバリタチという称号を獲得してしまった。

(うそだ…うそだ…うそだ…)

現実逃避したくても視界に広がる世界は何ら変わらない。
ここからどうすればいいのかオロオロしていると、教室のドアが開かれた。

「そこまでだ」

ぬちぬちと水音が反響する教室に凛とした声が響き渡った。
教室の中の熱気を冷ますように廊下から空気が流れ込み、声の主が足を踏み入れる。
窓から差し込む光に輝く金髪と、長い睫毛が縁取る空色の瞳。
入学後とは思えないほど学園の制服が板についており、正しく伸ばされた背筋も相まって凛とした立ち姿はおとぎ話の中に出てくる王子様のようだった。

(…この顔には見覚えがある)

フランツ・フォン・レブラス。
正真正銘、この国の第二王子でありゲームの攻略対象の一人だ。

「ベリル。これは一体なんの騒ぎだ?」

フランツは教室の惨状を目の当たりにすると、眉を吊り上げて俺に詰め寄ってきた。

「なんの騒ぎだと言われましても…」

ツカツカと早足で歩みよって来た絶世の美形に気圧されながら俺はどもった。
言い訳のしようがない輪姦現場です。
眉を吊り上げて正面から対峙するフランツにどう説明するべきか考えるが答えは出ない。

「すみません…!ぼっ、僕が至らないばかりに皆様に迷惑をかけました!」

俺が言葉を吐き出す前にゆるゆると上半身を起こしたリズが震える声を張り上げた。
どう考えてもこの現状を目の当たりにしたら全裸で精液まみれになっているリズの方が被害者であるはずなのだが…
俺はハッと思い出す。
そういえば設定上、平民であるリズがこの名門学園に通うためには以前から色々と無理をしており、足りないお金はフェリスト公爵家に工面されていたはず。

(そういえば、ここで問題を起こせば学園に通えなくなるから自分のせいにしたんだっけ?)

まずい…
前世の記憶を思い出したとはいっても、俺には本来ベリルが経験した十六年間の時間も蓄積されている。
単純計算したとしても十六年前にプレイしたゲームの詳細を全て思い出せるかと問われたら、細部まで思い出すのは難しいかもしれない…
そもそも、このゲームに執心していたのは俺ではなく姉だったのだ。
リズの発言に対して、フランツは俺から彼に目線を向ける。

「…本当か?」

疑わしそうに問いかけ、リズがおずおずと頷く。
なにか事情があるのだろうと察したのか、フランツは「そうか」と一言つぶやいたまま、それ以上追求しなかった。

「ともあれベリル、公の場でこのようなことは控えろ」

ベリルと幼馴染設定のフランツはこの学園の中で唯一悪役令息を嗜めることができるストッパー役だった。

「あ、はい…以後、気をつけます…」

俺が相手の気迫に圧されながらもごもごと謝れば、フランツはにわかに信じがたいものでも見たかのように目を丸くした。

「…。」
「ど、どうかしましたか?」

無言で黙り込んで俺の顔を凝視していたフランツは「何でもない」と言葉を吐き出す。

「俺は彼を保健室に連れて行く。話は以上だ」

フランツはリズのところまで近づくと、自分の制服が汚れるのもかまわず彼に服を着せて抱き上げると教室を去った。
それはさながら、お姫様を助け出す王子様のごとく清々しい姿だった。
いや、そもそも彼は王子様なわけだが。
なにはともあれ、このイベントはこれにて終了した。

その後、モブ生徒たちが教室の後片付けをすることになった。
俺も片付けを手伝う旨を伝えたのだが、とんでもないとばかりに周りの生徒たちが恐れ慄き譲らなかった。

(これからどうしたものか…)


つづく。
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