BLゲームの悪役令息に異世界転生したら攻略対象の王子に目をつけられました

ほしふり

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【第六章】悪役令息の奔走

(1)攻略対象&攻略対象

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陽の光が窓から差し込む朝。
鳥のさえずりにより爽やかな気分には…なれなかった。

「…。」

俺は寮のベッドから起床すると深い溜め息を吐いた。
正直に言うと困っていた。
今後の行動について。
悪役令息の俺は本当にこのままでいいのか?という疑問に直面していた。
何をやっても俺はぐだぐだ。
フランツには襲われ、サイラスには言葉と金で言いくるめられ、果てはムキになってあんな事に…

「はぁ…」

ぶっちゃけ、元の悪役令息ベリル・フォン・フェリストにとってはありえないことの数々である。

(俺は…こんな状態で原作を遂行できるのか?)

不安が積もっていた。
正直…泣きたい。
だが、どれだけ俺が頭を抱えようとも陽の光は登る。
今日もまた学校だ。
ベリルとして朝のルーティーンを終えると、制服を着て俺は重い足取りのまま自室から出た。

「…うん?」

俺が部屋から出て廊下を歩こうとした際、窓の外に見慣れた人物を発見する。
ここは寮なので、顔見知りがいること自体は普通なのだが…。

(フランツとエリオット…だと?)

組み合わせが特殊だった。
二人は寮から出て、少し離れた場所へと向かっている。
それにしても、変わった組み合わせだ。
もしエリオットがフランツに近づいたとなれば…
これは…

(まさか、リズがエリオットルートに向かったとか?)

最近はリズの様子を見ることが出来なかったのもあり、物語がどの方向に進行しているのか把握できていなかった。
もしリズがエリオットのルートへ入ったのならまずい。
ただでさえ四面楚歌の状況なのに、エリオットまで俺の敵に回ったら駄目だ。

俺は二人の会話を聞くために急いで寮を出た。
二人を探して寮を出ると、建物の裏の方へ向かっていた。
盗み聞きするべく俺は二人の後を追う。
しばらく歩いた後、エリオットがフランツと向き合って口を開いた。
俺はとっさに物陰に身を隠す。

「貴方は一体、なんのつもりですか?」

エリオットは訝しげな表情を浮かべて言う。
対するフランツは仏頂面で対応していた。

「なんのつもりとはどういう事だ?」
「とぼけないでください。昨日、サイラスがうちに来ましたよ」

話の話題はサイラスか…

「それも、話によればベリル様にちょっかいを掛けて困らせたとか。どういうつもりなのですか?」

苛立たしそうにエリオットは問い詰める。
俺は心の中で謝罪する。
遅かれ早かれあの夜の相手は知られると思っていたが…

(秘密倶楽部にサイラスを招待したのは俺なんだよなぁ)

事前にエリオットに言っておくべきだったか…
彼はフランツに対して文句を口にしている。

「私でさえ昨日は忙しくて時間が取れなかったというのに、貴方の部下がベリル様を独占するなんて遺憾です」

ただの愚痴じゃないのかこれ?
八つ当たりのような気もするのだが…部下を持つ上司としてなのか、フランツはエリオットの話を黙って聞いている。

「それも、独占した上に個室で二人っきりですよ?あのベリル様がお金で買われるなんて…それも、部屋から気まずそうに出てきたのです。あの男が一体どのような暴挙を犯したのかわかりません」

ある意味、暴挙には違いないのだが…俺も売り言葉に買い言葉で対応してしまったのは認めよう。

「サイラスが何かやらかしたのなら俺から謝罪する」

静かに話を聞いていたフランツが口を開く。
だが、エリオットの溜飲は下がらない。

「世の中には謝罪では済まないこともあります。ベリル様があんな状態で部屋から出てきたなんて、私は心配で心配でなりません」
「あんな状態とは?」
「汚れた下着を脱ぎ捨てて足早に去ったようです。あの部屋で二人っきりで…それなりの事があったのは間違いありません」

その台詞にフランツは片眉をつり上げる。

「だが、サイラスは女性にしか興味がないはずだが…なぜベリルに?」
「最近のベリル様は大変お可愛らしいので、野獣の餌食になりかねません」
「その点に関しては同意だが」

同意するのかよ!?と、俺は心の中でツッコミを入れる。

「どんな卑怯な手を使ったのかは知りませんが、私は黙って見過ごすことは出来ませんよ」
「…一応確認するが、お互いの同意という事はないのか?」

フランツは律儀に確認する。
対するエリオットはぐぅっと唸り声を漏らす。

「……それは…わかりません」
「そうか」
「ですが、多額の金でベリル様を買収して二人っきりになったのは確かです」
「…。」

フランツは静かに話を聞き、思考を巡らせている。

「少なくともあなたの監督不行き届きですからね!!」
「すまない」
「ですから、謝って済むことではないのです!」
「あぁ。そうだな。サイラスには俺の方から言っておくよ」
「はい!お願いします!!」

一通り、言いたいことは言ったとばかりにエリオットが鼻を鳴らす。
腰に手を当ててふんぞり返るエリオットを見ながら不意にフランツが問う。

「エリオット、お前から見て今のベリルはどう見えている?」
「ベリル様は大変お可愛らしいです。無邪気さに拍車がかかったところもありますが、以前に比べて狡猾なところが薄れたといいますか…」

言いながらエリオットは目線を落とし、ぽつりとつぶやく。

「とても危ういですね」
「…だろうな」
「一応訪ねますが、貴方はどう思いますか?」
「正直に言うと今のベリルは放っておけないと思っている。だが、本人があれなもので…俺から彼の話を聞き出せないままだ」
「フン。無様ですね」

俺の前では見せたことのないような態度でエリオットはフランツを嘲笑する。
接客中ではないので、こっちが彼の素ではあるのだが。

「幼馴染なんて名目だけでベリル様のそばにいる貴方なんかにどうすることもできないでしょうね」
「それはそうだが」
「ではフランツ、私と一つ交渉しませんか?」
「交渉?どういう意味だ?」
「ベリル様からお話を聞く役目を私からサポートします。そのかわり、ベリル様から聞くことが出来たお話は私にも聞かせてください」
「それはできない」

きっぱり断るとフランツは続ける。

「エリオットはどの程度の話を想定しているのかは知らないが、ベリルに関わる重大な事情なら俺の口から話せないからな」
「そうですか」
「そこまで気になるのなら、お前の方からベリルに探りを入れないのか?」
「私はあくまで従者です。ベリル様の下僕です。ご主様の悩みを解決したいと願う事には違いないのですが、全てを暴いて我が物にしたいという欲望とは違います」

フランツは瞳を細めながら、従者と名乗った男を見据える。

「我が物にしたいとは本当に思わないのか?」
「思いません。なぜなら、私は貴方ではありませんので」

エリオットは相手を睨みつけたまま、軽蔑するような表情を浮かべている。

「真面目ぶった優等生の本性なんて見飽きていますよ。貴方は表面に善意を貼り付けただけの偽善者です。欲しい物を手に入れて滅茶苦茶にしたいという独占欲を隠している」
「俺はそう見えるのか?」
「えぇ。本性を隠した獣です。そんなに飢えているのなら私が夜のお相手しましょうか?」
「冗談にしては笑えないな」

俺の目からは本気で言っているのかどうかわからない。
ただ、二人の背中には『ゴゴゴッ…』と、威圧的な何かを感じるのだが…

(これは『俺のために争わないで~!』と、いうやつなのか?だが、俺の話か…)

そもそも俺がベリル本人ではないという話は口が裂けても言えない。
とはいえ、俺に対して二人とも感づいているのならばどうしたものか。

(気が滅入るなぁ)

ため息を吐きたくなった。


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