普通、ファミレスで子連れの男をナンパするか⁈〜Oh,my little boy〜

SA

文字の大きさ
19 / 19

(19)

しおりを挟む

「まるで赤ちゃんみたいに俺に抱かれたまま寝ちゃってさ。それで、その夜はそのまま一緒に寝たんだけど、久しぶりに間近で息子の寝顔見れて、いやあ、もう、かわいくてかわいくて、思い出しただけでもニヤけちゃうな」
俊哉はそう言いながら、実際、顔をニヤけさせている。そして、浮かれる気分のままマロンパフェをスプーンですくい、口に入れた。その甘さがより顔をニヤけさせる。
「へえ...」
能條はチョコパフェをスプーンでグチャグチャに掻き回しながら、気のない返事をする。
聡とののろけ話が面白くないのか、さっきから返事が素っ気ない。が、のろけたい俊哉はかまわず続ける。
「それからなんだよ。それから毎晩、聡が枕を持って、一緒に寝よって甘えてくるようになったんだ。でも、朝になると、いつものクールな聡に戻ってるんだから、そういうところがまたグッときちゃうんだよな」
「へえ...ツンデレかよ。そう来るか...」
能條は身を乗り出して、「今度は完全に分からせてやる。誰が本当に一番かわいいのかを」と性懲りもなく、聡に対抗意識を燃やしている。
「子供相手に大人気ない喧嘩をするのはもうやめろよな。まったく...」
俊哉は呆れるが、ただ能條にはある意味、感謝している。
「...でも、聡が素直に甘えてくれるようになったのは、対抗心を燃やす相手がいるからかもしれない。だから、これからも時々、喧嘩相手になってあげて」
そう言うと、能條はニヤリと口角を上げ、不適な笑みを返してきた。
まさか、これも?
この男のことだ。どこまで本気かは分からない。
もしかしたら、あの幼稚な喧嘩をしかけたのも計算なのかもしれない。
そう思うのは、少し買いかぶり過ぎだろうか...。
俊哉は向かいに座る男を見つめる。
ぐちゃぐちゃにしたチョコパフェを半分残したまま、「チョコパフェ飽きたな」と呟きながらメニューを開いている。
そういえば、この席だったな、と俊哉は気付く。
この場所で出会い、ここから始まった。
出会う前まで、このテーブルに誰も座らせる予定はなかった。
誰も入り込む隙間なんてなかった。
そう思っていた。
隣の席の男が俺の人生に入り込んできたなんて...。
いや、ほとんど無理やり割り込んできたようなものだ。
後先考えない子供のように。

「やっぱ、そっちの方がうまそうだ」
たっぷりのマロンクリームが乗ったアイスをスプーンですくったところで、能條がこっちに目を向けて言った。

「一口ちょうだい」「あげないよ」が一緒になる。

鈴の音のような笑い声が耳元で弾けた。


[完]





しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

この変態、規格外につき。

perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。 理由は山ほどある。 高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。 身長も俺より一回り高くて、しかも―― 俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ! ……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。 ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。 坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!

処理中です...