あなたにも最愛と思えた人はいますか?

伽藍 瑠為

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「感情と理性」

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1「感情と理性」




2023年6月27日。
今年の六月は雨が少なく、夏の暑さが既に感じられた末の事。
そんな日にずっと昔から一緒に過ごしてきた大親友の想司(そうし)と僕は自室で対話をする。

「智理(ともり)……お前が正しかったって今では思うよ……」

想司とは幼い頃から何事も共有してきた友、知らないことはないと言っても過言ではない仲、だからこそお互い喧嘩も耐えない時もあったり、それでもお互いがお互いを必要と理解し合え、お互いには欠かせないと言い切れる物ある。

「だから言ったじゃん。 でも想司(そうし)……君自身もわかってた事だろ?」

想司の感情は混乱し、乱れ、昨晩大泣きしたのは言うまでもない。
それでも今の現実を受け入れようと頑張っていた。

「……まぁ……わかってはいたよ。 いつかはこうなるって、わかってはいた。 でもそれを変えたかった。 この運命を変えたかった。 その為にできる限りの事はしたし、頑張った。 だからこそ、この結果を変えられなかったことが、悔しいし、頑張った分、切ないんだよ……」

この現実を理性ではわかっていても感情が受け入れられていない状態だった。
それでも想司は頑張って押し出し言う。

「あぁあ……振られちゃたなぁ……」

去年の八月三日から交際していた璃々さんと昨日に別れてしまう事となった。
しかし、想司のその思いに僕は正さなきゃいけないと、その言い方はしてはいけないと思い、言い直させる。

「想司……その言い方は間違ってるよ。 振られたなんて君は言っちゃいけない」

僕は想司が被害者だと思う事で自分の心を少しでも守ろうとしているのがわかり、そう言った。
想司には逃げてほしくなかった。
璃々(りり)さんとの思い出をもっと大切にしてほしかった。
だから僕は言う。

「ちゃんと話し合って、自分でも理解して、これが正しいって、お互いがお互いの優しさの上での結果だった。 そうでしょ?」

「……まぁ……うん」

「なら、もう振られたなんて言わないで。 君が振られたと言う事は今までの幸せを否定する事になる。 それは僕が許さない。 想司には頑張って受け入れてほしいって僕は思う」

「……」

想司は理解しているからこそ、何も言わなかった。
これを伝えるのは僕の役目でもあるから。
だから僕は想司に聞く。

「そうとう泣いたね。 こんに泣いたのって子供の時以来じゃない?」

「涙の理由も質も違うよ。 でもだとしても……今回は今までの人生で一番泣いたかもな」

「だね。 でもそれって本当に素晴らしい事じゃない?」

「なんで?」

「人生で一番泣いたと思えるほどの恋愛だった。  璃々さんをそう思える人だった。 その悲しさ、その辛さ、その痛み、その大きさの分、璃々さんを大好きだった証拠。 想司が璃々さんを本当に思ってた証明だったて事じゃん」

僕は知っている。
想司が璃々さんとの交際で感じた感情達は過去の恋愛を遥かに超えていた事を。
過去の恋愛で理解できなかった緊張、興奮、高揚、高鳴り、感動を始め、子供への愛情表現にも近い好きが大好きに変わり、大好きが愛してるに変わった事を身に実感し、更にそれを最大限表現できた恋愛は想司にとって、人生の恋愛の中で一番になったことを僕は知っている。
だから僕は想司に伝える。

「その胸の痛みなんかと比べられないほど璃々さんへの思いはもっと大きい。 その気持ちを、その思いを、璃々さんへの愛情を、想司は辛かったで片付けていい訳がない。 想司は璃々さんの事をめちゃくちゃ大切にしてたじゃん。 僕だって想司が大切にしてきた璃々さんを大切にしてきた。 なのに想司がその思いを、今の辛さを、今の涙を大切にしないでどうすんだよ」

「……確かに……」

「想司は中途半端な思いで璃々さんを愛してたなかった。 そうでしょ?」

「うん……それははっきりと断言できる。 本気だった……本気だったからこそ辛い」

「わかってるならその璃々さんに抱く思いも、悲しさも、辛さも、涙も全部を大切にしなきゃ」

「そうだよな……でもわかってはいる。 でもまだわかりたくない自分もいる」

「それで良いと思う。 その度に僕が君に言い続けるし、伝え続けるよ」

「うん。 ありがとう」

そして、想司の璃々さんを諦められない気持ちが僕に聞いてくる。

「なぁ……智理……」

「ん?」

「……いつか……また璃々さんと出会えるかな?」

「縁がまた繋がればな。 でもきっと何か意味があると思う。この出会いがあった意味が……」

「意味か……」 

「まだその意味は僕にはわからない。けど、その意味を一緒に探していこう」

「そうだな」

「そういえば、本当は璃々さんと約束してた二十八日はどうするの? 予定開いちゃったよね?」

「とりあえず楽しいことしたいな」

「なら、予定入れようよ」

「そうだな。 確か食事の予定を組もうとしてた雄太さんに連絡して予定入れちゃおうか」

「うん。 それが良いと思うよ」


想司のここ数年の人生は兎に角大変だったと、または壮絶だったと言い切れるのを覚えている。
しかし、世の中にはもっと大変な人もいると思う。
だが、僕が知る中では想司と一緒に実感したからこそ大変だったと思えた。
想司は結婚し子供を授かり、離婚してはいるが、同居の体制にある。
そんな中、想司は同じ職場の璃々に恋をしたのだ。
それも想司の人生を見てきた僕でも過去に無い、貴重で、とても大切で、宝と言ってもいい、そんな恋愛ができた事を羨ましいと思う程の恋だった。

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