人欲

茎わかめ

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二章

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甘野 悠(あまの ゆう)は人生に退屈していた。

毎日行きたくない学校に通い
意味の無い勉強をし、周りの友達から
浮かないように嫌われないように生きていた。

特に仲のいい友達もおらず
親とも仲良くはなく誰も助け舟は出してくれなかった。

こんな世界苦しくて生きづらい。

いやここは息辛いとでも言うべきか
そんな事を考えていた時だった。

「悠はどう思う?」

不意に話しかけてきたのは
九条 有栖 (くじょう ありす)だ。

女子のグループの中でリーダー的な存在で
友達も多い方だと思うが高飛車な所が
鼻にかかる。

咄嗟に質問をされ私は答える。

「え、えっといいと思うよ…?」

基本的には相手に合わせればいい。
それだけで大体は上手くいく。

「ふーん…」

九条さんは私を横目で見ながら通り過ぎて行った。
なにか言いたげなその目は少し怖かった。

適当に授業を聞いて友達と話を合わせ
気がつくと下校時刻になっていた。

今日も特に何も無かったな…
そんな事を思いながら家までの道のりを
歩いていく。

空は薄暗くどんよりとしていた。

家に着く頃には辺りは暗くなり
より一層嫌な雰囲気が漂っていた。

家に着くと制服を脱ぎ部屋着に着替え
夕飯を済ませ入浴し床に就く。

いつもと何も変わらぬ日常の風景だ。

そして私はベットでゆっくりと睡魔に
吸い込まれていった。

カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める。

時計を見ると朝の六時を刺していた。
学校は八時からなのでまだ少し早い。

二度寝しようとも考えたが妙な胸騒ぎを感じた。

重く、痛く、どこか粘りつくような嫌な感じだった。

少し早く起きたから体調が優れないだけだ…。

そう思うようにした。

いつもよりも重い足取りで家の玄関を開ける。

いつも通っている学校への道を歩き
八時前には学校に着いていた。

いつもの自分の席に座り鞄の中身を取り出す。

だがいつもと何かが違う…

そう直感的に感じていた。

私は支度を終え教室の中ではまだ
仲のいい友達に話しかけた。

「おはよ!」

「………」

聞こえなかった?いや、おかしい…
私は彼女のそばで話していた。

気づかないはずがない…

他の友達にも話すが結果は同じだった。

授業が終わり休み時間となった。
私はもう一度試みるが、やはりと言うべきか
皆何も言葉を発さない。

いや、正確的には話してはいるのだが
私が話しかけると話さなくなるのだ。

つまり無視をされているのだ

なぜ?どうして?
何も心当たりがない私は激しく動揺した。

昨日まで仲の良かった友達に無視をされるのは
かなり精神的に来るものだ。

授業なんて何も頭に入ってこない。

きっと明日になれば何か変わるだろう…
そんな淡い期待をしたが
無情に期待も虚しく無視され続ける。

次の日も…また次の日も…

親には学校で無視されてるから
学校を休ませてくれなどとても言えず
毎日楽しいと嘘を偽り続けるだけの日々。

そんな時だった。

「あ、あの…」
「悠さん…ですよね?」

私の瞳からは熱い雫が零れていた。

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