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28・勝手に決められては困ります。
しおりを挟む「ねえ、日向さん」
咲ちゃんが耳打ちをしてきました。
「私、アメリカ在住の友人に聞いた事があるのですが外人さんって、『生魚を受け付けない』酢で〆てあっても生は生ですよね、そもそも『米酢が駄目』ワインビネガーが主体だとか、『お米の粒々が虫みたい』『白米のむせ返るような匂い』『もっちり感が嫌い』『ネバネバする』『変な甘みがある』とか『黒い食べ物は不気味だし、海藻を消化する酵素が無い』とか『味噌の酷い発酵臭』数え上げればキリが無いのですけど、『和食がブームといっても極一部の大都市だけの事』だと……嘘なのですかね?」
「嘘じゃないと思うけど、あの娘たちを外国人枠で捉えるの間違いなのよ」
3人娘、どんぶり物の作法に適って? お行儀よく? どんぶりを抱え無言で勢いよく掻っ込んでいます。
お味見程度ですが、私も頂きます。
スズキの身肉は薄切りに、他の食材は針のように細く、錦糸玉子の黄色、紅生姜の赤、大葉、浅葱の緑、茗荷のグラデーションのついた桃色、海苔の漆黒、艶やかな真珠色したスズキの身肉に皮の灰白色、色鮮やかな一品です。
ワサビを出汁醤油で溶いて掛け回し、ざっくりと混ぜ合わせて頬張ると、それぞれの食材が味も食感も、我を通しているようなのですが、酢飯がまとめ上げて調和の整った味わいとなって、舌の上に押し寄せてきます。
「マリは『うめー!』を連発しているが、実際は非常に珍しい事なのだ、咲の事も『てんさい』などと言うが眉唾に思っていたが、日向に負けず劣らずだな」「本当です。私も疑ってかかっていましたから、申し訳ない思いで一杯ですわ」「ごはん、くれー!」「あ、はい、はい」「咲、私もだ」「私もお願いしますわ」
どんぶりをあっという間に空にして、ご飯の催促に、咲ちゃんが慌てて御櫃を引き寄せますが、3人娘の食欲に唖然として口が半開きなのが可笑しいです。
「しかし朝からこんなに贅沢な食事でバチが当たらんか」
ハルが食事中には珍しく、難しい顔をして言いました。
「贅沢と言う程では無いでしょう」
味噌焼きに、茄子の煮浸し、沢庵に、汁物は味噌かぶりを避けて毬麩のお吸い物。
「まあ、料理店は体力勝負だから、朝からしっかりと食べておかないと身体がもたないのよ」
「良い職場でしょ」
咲ちゃんが胸を張って自慢げなのが、とても嬉しく思えます。
「……ふむ」
何でしょう、ハルが不満気というか、納得のいかない顔をしています。
「良し、分かった!」
ハルが憤然とした面持ちで、決断したかのような口振りです。
嫌な予感しかしませんでした。
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