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36・どんとこいです。
しおりを挟む「先生がいらっしゃる?」
咲ちゃんに先に上がって貰って、後片付けをしているとハルが言い出しました。
「うむ、昨晩リコが出張報告をしなければいけないので、みんなで学校に行ったのだ。わざわざ『アルバイトをしています』と申告する必要も無いので黙っていたのだが、マリが『マリ、とり、マリ、とり、とりのとまと~に! おいしいか? おいしいぞ! のうた!』を歌っていたら先生が聞きつけて『何ですかそれは?』と尋ねられたのだ」
何故かハルもリコも困惑顔です。
「別にアルバイトしても良いのでしょう? 18禁の風俗店やブラック企業じゃあるまいし、先生がいらっしゃっても何の問題も無いじゃない?」
「もちろん、この店や日向に問題がある訳では無い、問題なのは先生の方で、店に迷惑が掛かること間違い無しだ」
「えぇ、『ハルの働いている姿が見たいから、普通のお客として伺う』と言い出しましたので、それだけは全力で阻止しましたわ」
「うむ、マリの『まかない、うめー!』の一言が無ければ危ないところだった」
どうやら、この娘たちには『店に迷惑をかけている』自覚が無いようです。
まあ、ハルは良く働いてくれますけど、しかし、そんな、この娘たちが『店に迷惑がかかる』と言う位ですから、『先生』とは何者なのでしょうか? もの凄く嫌な予感がします。
どちらにしても、わざわざ賄いを食べにいらっしゃるようですので、この娘たちに負けず劣らず、食いしん坊なのは間違いなさそうです。
「それで、今日いらっしゃるの?」
「うむ、急で申し訳ないが、賄いの時間は3時過ぎだと言っておいたので、もうすぐいらっしゃるはずだ」
「ちょうど良いじゃない、到来物の大鯛があるし、残り物だけどお肉もあるし、先生は好き嫌いはあるの?」
「別に好き嫌いは無いそうだけど、超一流ホテルでの結婚式の時に『こんな料理は食べられません』と言って席を立つてしまわれる人なのですわ」
え! 我儘、というか、傲慢、というか、自由、というか、羨ましくなんか無い、というか。
戸惑う表情を読み取ったのか、ハルが私の両肩を掴んで言います。
「ハルの料理なら大丈夫!」
私を励ますというよりは、『逃がさないぞ!』と言う気持ちがヒシヒシと伝わってきます。
もちろん逃げたりしませんよ、プレッシャーなんて感じません。
美味しい物を作るだけです。
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