上 下
46 / 77

43・サングラスは海辺で掛ける物だと思っています。

しおりを挟む
 
「え!?」

 いや、そんな驚かれても困るのですが。

「そんな話聞きたくも無いって事。あのたちがどんな『力』を持っていようがいまいが私には関係ないから、勿論、アンもね」

「………………」

 どうしたのでしょうか? アンが俯き身を縮こませ、少し震えているようです。

「その、言葉。信じて……いいの?」

 うつむいたまま、言葉を途切らせながら、絞り出すようにアンが言いました。

 私は軽い気持ちで、当たり前の事を言ったつもりなのですが、重要な事とでも受け止めているのでしょうか?
 それにしても『信じる、信じない』という話では無いと思うのですが、微妙ながあるようです。
 私のちょっとしたわだかまりを、不服の表れとでも勘違いしたのでしょうか、アンが慌てふためいて身を乗り出すようにして、手を振りかざして言います。

「日向、ごめんなさい。疑うような、念を押すような聞き方をしてしまって」

 私の方が動転してしまいます。

「い、いや、べ、別に気にしてないわよ」

「私を含めてだけど、あの娘たちに接する大人達は2通りしかいないの、利用しようとして近づくか、恐れ遠ざけるか」

「ちょっと待って、それこそ偏見じゃ無いの?」

 アンは力無く首を横に振ります。

「それが現実。あの娘たちの『力』は強大過ぎるのよ」

 確かにあの娘たちの超常的な『力』はの当たりにしていますから疑う余地もありませんが、それほどの物なのでしょうか。

「あの娘たちの獲って来る、美味しい食材が何か問題にでもなるの?」

「ぷっ!」

 アンが今度は臆面もなく笑い転げだしました。

「え! 私、可笑しい事言った? あれだけ美味しい食材だからあの娘たちから、略奪しようと利用する人はいるでしょうし、見た目の不気味さに遠ざける人もいるでしょ?」

「せやね、日向の言う通りやわ」

 アンが関西弁丸出しです。

「なんや、うじうじ考えとるのが、阿保らしゅう成ってきたわ」

 アンが剥き出しの感情を、初めて見せてくれたのでしょうか。 

 襟を正し、居住いを正し、真正面から私を見据え、アンが言います。

「どうか、どうか、私を含め、あの娘たちの事を、今後とも暖かく見守って頂けるよう、伏してお願いいたします」

 押し止める間もなく、アンがテーブルの上に頭を付け、深々とお辞儀をします。

「止めてよ、当たり前の事でしょ」

「うん、ありがとう!」

 頭を上げたアンの笑顔!


 ま、まぶしい!
しおりを挟む

処理中です...