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42・そう言えば最近、本を読んでいません。
しおりを挟む「教師といっても……」
アンはあらぬ虚空の一点を見詰めて、寂しそうにつぶやきました。
「情けない事に、何が教えられる訳でも無いの……。齢を食っている分、あの娘たちより経験が多いぐらいで、だけど、その経験も、私とあの娘たちとは資質がまったく違うからあまり役に立たないのよ、プロ野球選手が将棋を教えるようなもの。せいぜい『おばあちゃんの知恵袋』と言ったところね」
「慰めるつもりは無いけど、あの娘たちは、アンの事を慕っているわ」
「嬉しいわ、そう言ってもらえて。そんな私でもあの娘たちの苦悩や悲哀を少しでも分かち合えるから」
「苦悩? 悲哀?」
確かに、あの娘たちが、そういった闇を抱えている事は分かりますが、言葉にして表されると酷く不快な気分です。
「ねぇ、日向、子供の頃に悪と戦うヒーローに憧れた事ってなかった?」
「何を突然? まぁ、魔法少女とか流行ったわね」
「実際にはヒーローなんて居ないの。正義の味方のはずの私たちが、悪の物の怪を退治しても化け物同士が暴れているようにしか思われないのよ」
アンはうつむき、自虐的な笑みを浮かべました。
「それは卑屈過ぎない?」
失礼とは思いつつも、感情を抑えきれずに、不機嫌な物言いになってしまいました。
「私はそういう半ば白い目で見られて来たし、正面切っては言われないものの、あの娘たちも同じ思いをしている筈よ。そんなあの娘たちの精神的負担を少しでも軽減できたらと、同類の私が教師役をしているのよ」
「立派な教師よ」
「ううん、日向にはとてもかなわないわ」
「私? 私が何を?」
「あの娘たちが何の屈託もなく、笑い合ってる姿を見れたのは日向のおかげ」
「特別な事をした訳じゃない、食いしん坊たちを餌付けしたようなものでしょう」
「美味しい料理は勿論だけど、日向はあの娘たちの特異な『力』を見ても、何の偏見も持たずに接してくれたでしょう?」
「と言うよりは、偏見を持つ暇を与えてくれなかったという方が正確な気がする」
「ううん、私が自分自身、『力』が有る事に少なからず劣等感を持っているし、あの娘たちの持つ『力』に対して嫌悪感をいだくこともあるのよ」
う~ん、この感情の高ぶりを何と表現すれば良いのでしょうか。
どうやら私は、マリのボキャブラリーの少なさを責めることが出来ないようで、思いついた一言を口にしてしまいます。
「いらねー!」
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