逢魔が刻の料理店/『双剣の陰陽師』『聖なる祓魔師』『厄災の魔導師』『ただの?調理師』ごきげんなスタッフが、皆様のご来店をお待ちしております!

ペンギン饅頭

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64・電光石火の早業とは正にこの事。

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「日向がマリを泣かしましたわ」

 リコがうずくまるマリをなだめながら、非難の声を上げました。
 マリは嘘泣きなどという姑息な技を誰から教わったのでしょうか。

「で。マリはどーして欲しいの?」

 はーめんどくさ。

 するとマリは冷蔵庫の中をゴソゴソと漁って何かを取り出しました。

「たこー!」

 なぜ私が忘れていた物まで知っている!

「私が軽率でしたわ。さすが、マリですわ! このマリネ液とタコを揚げた物が合わない筈がありませんわ」

 まーそうだね。

「丁度良いわ、そのタコも一緒にお出しするから頂戴」「あまり量があるようには見えませんが、まさか全部出す訳では無いですわよね?」「え、え、え~ん!」「日向がマリを泣かせましたわ!」「マリ! 嘘泣きはもういいから」「日向! そのような言い方は酷すぎますわ」「あーもー、分かったから、直ぐに作って食べさせてあげるから」

「よろしいですわ!」

 リコまで何だか偉そうに言いやがった!

「ほら、マリ、トットと寄こしなさい」

「じー!」

 マリが疑いの眼差しを向けますが、擬音で言うのはやめて欲しいです。

「マリ、コーンスターチかたくりこ持って来て」「わかったー!」「リコもエスカベッシュ寄こしなさい」「は~い」

 まあ、作るのに手間も時間もかかりません。

 タコをひと口大に切って、軽く下味をつけて、コーンスターチをまぶして高温の油でサッと揚げるだけです。
 後はキスをそっと持ち上げて下に入れました。

「あら、そんな少しで宜しいの?」

「いいのよ、ちょっとしたサプライズみたいな物だから」

「あー成る程ですわ」

 残りのタコの上にエスカベッシュから少々野菜とマリネ液を失敬して掛けておきます。

「リコ、先にお替わり運んじゃって」「は~い」

「エスカベッシュのお替わりは……ん、何か良い香りがするな」

 ハルがタコの香りに誘われたのかズカズカと厨房に入って来ます。
 厨房への立ち入り制限を検討しましょう。

「む、何だこれは! 貴様らだけでズルいぞ!」

 言うや否やの、タコのエスカベッシュのイッキです。

 リコは涙目、マリは本当に泣き出しました。

「ふんぐぐん゛っん」

 ハル、何言ってるの?


「旨い!」

 
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