異世界グルメ紀行~魔王城のレストラン~商品開発部

ペンギン饅頭

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15・本当の事を言われると、ね。

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 他人のことをやっかむ人は、何処にでもいるものです。

 総料理長が自ら、食材管理課から食材使用伝票を持参して来ました。

 顔、怖いです。

 商品開発室を開設する前は食べることが大好きな私ですから、総料理長とは親密にさせて頂いていました。私が多少、料理の知識は有るものの、食べる事しか知らないド素人だという事もご存知です。そんな、私が、いきなり魔王様直属の商品開発部の長に任じられ、総料理長率いる調理部の上部組織として位置づけされたのですから、面白い筈がありません。

 マリは料理の事になると、周りの事など一切気にしないで傍若無人に振る舞っています。魔王様のお墨付きの上、私がにらみを利かせているので、直接マリに不平をぶつける者はいないにしても、年端もいかない、言葉も通じない小娘が、料理人達から総スカンを食らうのは当たり前です。

『まぁ、随分と色々お使いになっておられますなぁ』

 まずは慇懃無礼攻撃です。

『それで、これだけの高価な食材を、いったい何に、お使いになったのですか?』

 マリの空っぽ頭の中には「高価」と言う文字はありませんからね。判断基準は「美味しくなる物」でしかありませんから。

『それにしては、お作りなった料理を拝見させて頂いた事はありませんが』

 はい、ほとんど豚の餌です。

『さぞ、美味しい料理をお作りに成られたのでしょうな』

『おい! お前は喧嘩を売りに来てんのか?』

 勇者です。
 魔王様のお墨付きを良い事に、図々しくも、朝から執務室の長椅子ソファーで寝っ転がっていたのです。しかし、初めて勇者を応援したくなりました。
 
 いったれー! 勇者!

『だったら、どうだって言うんだ! 買ってもらおうじゃねえか!』

 総料理長ももちろん負けていません。問答無用です。長椅子に手を掛けると、軽々と勇者ごと持ち上げて、壁に叩きつけました。素晴らしい腕っ節です。什器、備品が飛び散り、派手な音を立てて、戦いのゴングが鳴り響きました。
 勇者はすかさず跳ね起きると、首コキ、指ポキしています、

『いやぁ、なかなか楽しい事、やってくれるじゃん』

 余裕です。
 総料理長が洋服掛コートハンガーで打ち掛かるのを、勇者は足刀で迎撃して、真っ二つに断ち折りました。お見事です。総料理長は身体を沈めて、片足立ちになっている勇者の足元を薙ぎ払うように、地を這う蹴りを見舞いますが、勇者は片足立ちのまま、膝を曲げると、華麗に空を舞い、旋回し、後ろ回し蹴りを放ちます。いけません。空中で無防備になった勇者の横っ面に、折れた洋服掛が叩きつけられました。もんどりうって倒れる勇者に、追い打ちをかけるように、踏みつけようとする総料理長の足を辛くも避けて、間合いを空けると、

『マリの料理を食ったこともねぇくせしやがって、偉そうによぉ!』

 その通り!

『おめぇは喰らった事があるっていうのか、そりゃもう美味しい豚の餌をよぅ』

 そうです、マリは豚の餌ばかり作っています。でも~アレですね。本当の事を、あからさまに言われると頭に来るものですね。いけません。つい、執務机を飛び越えざまに、私の膝を総料理長の後頭部にめり込ませてしまいました。

『ごめんなさい。総料理長』
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