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16・決して、負けたくありません!
しおりを挟む『簡単な事ですよ』
執務室に魔王様がいらっしゃっています。マリと勇者も居ます。
諍い事の顛末を、お話ししました。
『簡単と言いますと?』
『実に簡単です。力です』
な~んだ、本当に簡単ですね。
さっそく、全員、叩きのめしちゃいます。腰を浮かせかけた私を制して、魔王様が続けます。
『力を見せつけて黙ら……』
『おう! 分かった。俺が全員叩きのめして黙ら……んごっふ!』
横から口を挟んできた勇者は、私が裏拳を入れて黙らせました。
『あなた方が諍いを起こす事など些細なことで、根本的な問題点は皆が、マリさんの力量を知らないという事だけですから。マリさんの料理を食べさせて頂ければ丸く収まるでしょう』
『難しくありませんか? マリがそう簡単にお料理を作るとは、思えませんもの』
私は、そう言って、マリ専用超豪華机で、退屈そうにしていたマリを見やります。
ちなみに、その机は資材管理課長が血相変えて請求書を握り締め『ロキエル様、机一台で、こんな金額になる筈が無いでしょう』と、怒鳴り込んで来た逸品です。
あれ? いない、と、思いきや、床にひっくり返っている勇者のヒゲを抜いて遊んでいました。全部引っこ抜いちゃえ。
『まだ色々と納得していないようですし、何しろそういった意味では、とても頑固ですから』
『そうでしょうか?』
と、言って、魔王様は、マリに呼びかけます。
「マリさん!」
「は~い!」
返事をした時に、ヒゲを思い切り引き抜いたのでしょう、勇者が飛び起きました。
魔王様は片膝をついてマリの眼を見詰めながら、優しく微笑み、言います。
「マリさん、お願いがあるのですが」
「なーに? 魔王さま」
「厨房の皆さんに、お料理を作って頂きたいのですが、そうですね十二人前位ですね」
「うん、わかったー! 何がいい?」
「マリさんが美味しいと思う物なら、何でも結構ですよ」
「明日の、夜なら、だいじょーぶ!」
「おぉ、ありがとうございます」
何、この敗北感!
勇者がのそのそと、ヒゲを擦りながら魔王様の側に来ます。何だか、とても殴りたかったのですが、我慢しました。
『なぁ、魔王』
マリに聞こえないよう小声で、更には、異世界の言葉で話しかけました。
『何ですか?』
『俺が言うのも何なんだが、マリの事秘密にしておかなくていいのか? マリは最終秘密兵器みたいなもんだろ』
『勇者様、私はですね』
魔王様は一瞬、言葉を探すように、虚空を見つめます。
『秘密にするなど、マリさんの心に、微かにでも影を差すような事はしたくないし、させません。私はマリさんが、ただ、ただ真っ直ぐに、道なき道を、自由に、心の赴くまま、一歩前に踏み出して行くのを、見ていたいだけなのです』
かなわないなぁ、私。
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