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22・いつも通りと言われれば、確かにそうなのですが。
しおりを挟む「おや? お嬢様こんな所に」
折よく調理長が戻って来ました。
「ほっほ~いつもに増して可愛いらしい。良くお似合いですよ。お出かけでしたか?」
さすが調理長です。
調理場の不穏な雰囲気など気にも留めませんし、騒動の原因になっている私を目にしても、更には城館を抜け出していた事にも平然としています。
「調理長、私をお探しではありませんの?」
「ええ、、晩餐会の時間が早まりましたので、お知らせに行ったのですが」
「ロッソ様もお姿が見えないとか」
「困ったものです。ロッソ様の為に時間を早めたというのに、肝心の主賓のお姿が見当たらないというのですから。お料理をお出しする段取りが狂ってしまいます。今日のお料理は腕によりを掛けましたからな、楽しみにしていて下さい」
うん、実に調理長らしく、作ったお料理を美味しく食べてもらう事にしか興味が無いようで、思わず笑みが零れます。
私の笑みの意味が分からずキョトンとしている調理長に。
「楽しみにしております。では、後程、晩餐会で」
「あ、はい」
挨拶を交わして部屋へと向かいます。
城門の出入りさえ咎められなければ、この衣装でも『庭いじりをしていましたの』とでも答えれば良いのですが、うるさく言う人もいるので、なるべく目立たないように気を配りながら行きます。
それにしても赤鬼は如何したというのでしょうか? 気になります。
部屋に着き、急いで着替えて、リリアには様子をうかがいに行って貰います。
リリアと入れ替えるように、給仕長がやって来ました。
「お嬢様、どちらにお出かけ……ケホン、ケホン、どちらにいらっしゃったのですか、お探ししました」
「給仕長、ごめんなさい」
「本当ですわ。晩餐会の時間が早まったというのに、お姿が見当たらないのですから。今日は正式な晩餐会ではありませんので、私達がお着替えの準備をせずに良いとはいえ、遅参などという事にでもなれば御家の恥になりますわ」
「でも、ロッソ様もいらっしゃらないのでしょう?」
「今、お探しておりますが、主賓をお待たせするような非礼はできる筈も無いですから、お嬢様はとにかく饗応の間にお越し下さい」
「分かりました」
「では、お待ちしておりますので、急ぎお仕度をなさって、くれぐれも遅くなりませぬよう」
「はい」
給仕長も城館を抜け出したのは、見て見ぬふりしてくれるようですし、何より晩餐会を滞りなく開く事しか頭に無いようです。
晩餐会用の身支度をしているとリリアが戻って来ました。
「ねぇ、リリア、おかしくない?」
「ええ」
リリアは私の突然の問い掛けにも迷う事なく返事をして、憮然とした表情で、投げやりに言います。
「まぁ、いつもの事です」
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