公爵令嬢走る!/恋の闘争・正義は我にあり 序章

ペンギン饅頭

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19・ほんの一瞬の事ですが、見逃しませんよ。

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 思わず身を乗り出しました。

「色々噂話は集めたさ。俺は自分の見聞きした事しか信じないが、噂話から確実に見えてきた事だね」

「それが悪い事なの?」

「良い悪いの問題では無くて、何をしでかすか行動が読めないのが恐ろしい。武官という輩は命を元手に名を売る商売だから、ただでさえこちらの思惑を飛び越えた突拍子も無い事をしでかすが、欲があれば利に目が行って、進む方向がはっきりと見えて来るからね」

「ロッソ様は『利』に目が向かないと?」

「うん、何が彼の行動原理になっているのか読み切れない。はたまた、読ませないように計算づくで動いているとしたならば相当な人物だね」

「買い被り過ぎでは?」

「むしろそう思いたいよ。悪名は世間にあまねく広まっているけど、俺もその『悪名』という言葉に迂闊にも引き摺られていた。そんな一筋縄で括れるようなら、心配の種にもならないね。まあ、今の時点では噂話の寄せ集めに過ぎないから、わざわざお越し頂き申し訳ないが、もう少し精査する時間を頂きたいな。お嬢に固定観念を植え付けるような間違った話はしたくないしね」

「ランツ様なども欲が無いように見受けられますが」

 リリアが言い出したランツ様の名前を聞いて、少々胸が締め付けられる思いがしました。

「ランツ様なども欲が無いが、あの御方は『正義』が判断基準だから至極分かり易いだろう。お嬢もそうだね、お嬢にとっての唯一絶対の利は御家を守る事だから、その過程は複雑怪奇だけど目的ははっきりしているからね」「ぷぷぷ!」「リリア! 笑う所など無いわ!」「だって、ぷっ、『複雑怪奇』ですって、ぷぷぷ!」「俺は褒め言葉で言ったのだが?」「褒め言葉! ぷぷぷ!」「リリア! 笑いすぎ!」「リリアも簡単だよ。リリアの眼が向いている先は、たったひとつ……」「あ! 何ですか、エド小父様! 余計な事は仰らないで下さい!」「何よ! リリア、私は是非聞きたいわ」「うん、リリアはね……」「小父様!」「お~怖っ!」

 エドはおどけて怯えるように身を捩じらせましたが、すぐ真顔になって私をじっと見据えて言います。

「やはり動向は気になるところだから、お嬢の眼でしっかりと見極めて欲しいというのが正直ななところかな」

「分かりましたわ、投資の話もあるから、また近いうちに」

「いつでも大歓迎さ、リリアもね」

「はい、ありがとうございます、エド小父……いえ、これからは、エドアルド会長ですね」

「会長は止めてくれ!『小父様』と呼ばれるのは気に入っているんだ」

 本気で頭を抱えて天を仰ぐエドに。

「はい、小父様」

 リリアが、それはもう、とびっきりの華やかな笑顔で答えますが、交わした別れの握手を離した際、ほんの一瞬その表情がくもり、寂しそうに見えたのを私は見逃しませんでした。

(おや? 何だか面白いぞ!)
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