公爵令嬢走る!/恋の闘争・正義は我にあり 序章

ペンギン饅頭

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41・言葉を無くしてしまいました。

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「死神って、ファス様の事!?」

「ぷっ!」

 リリアが口に手を当て、下を向いて噴き出すのをこらえようとしましたが、耐えられなかったようです。
 何ですか、おかしな娘ですね、自分が言った事ではありませんか。
 顔を上げたリリアの、無理に笑いを押さえようとして、引きつつった表情に少々イラっとしてしまいました……あれ?

「ぷーっ! ぷぷぷ」

 私の不機嫌な様子が、余程、可笑しかったのでしょうか? リリアが臆面もなく笑い出しました……あれ?
 リリアが多少の毒をを吐くのは慣れっこですから、良いとしても、何でしょうこの違和感は?

「ねえ、リリア?」

「何ですか?」

「……責める訳では無いのよ。何が、そんなに可笑しいのかしら?」

 変な誤解を受けないように、ことさら丁寧に問い掛けました。

「『何が』……とは?」
 
 何時でも察し良く、私の考える事を先読みして答えるリリアが、質問を質問で返してきて、困惑の表情を浮かべました。

「『何が』と、言われても答えようが無いのですが?」

「そうね、笑う理由も、理屈も色々とあるでしょうけれど、それを探して説明したところで何の意味も無いわ。『可笑しいから笑う』ただそれだけよね。でもね」

「でも?」

「昨日、馬車の中で『赤鬼』と言った時に思ったわ。『リリアが誘いこまれるような笑い声を上げるのは、久しぶりの様な気がした』と……」

「まあ、そう言われれば」

 ぼんやりと違和感の正体が浮かんで……。

「これも責める訳じゃ無いのよ。何故、先程、赤鬼の居るところに向かおうとしたの?」

 突然の問い掛けに、リリアは眼を丸くしながらも答えます。

「……それは、お嬢が、赤鬼の事を、気に、掛けている、から……かな?」

 小首を傾げて、途切れ途切れに、言葉を探しながら答えるリリアです。

 その言葉には嘘が有るのでは?
 いえ、嘘では無いのでしょうが、リリア自身も、きっと、気付いていないのでしょう。

「そうね、私はリリアに引き摺られた訳では無いわ、私自身の意思で行ったの。でも、リリアも自らの意思で行ったのじゃない?」

「……」

 リリアの返事が無い事が、私の質問を肯定しています。
 しかも、私の意思と言っても、『いったい馬場で何をしているのだろう』『丁度いい、色々と聞き出してやろう』とか、何一つ考えずに、『赤鬼が居る』『行かなくちゃ』二つの思考が直接つながっていて、その間には何もないのです。
 リリアも同じなのでは無いでしょうか?

(ただ、赤鬼に会いたかっただけ?)

 余程、私が陰鬱な表情をしていたのでしょうか、リリアが不安気に問い掛ける言葉に。

「お嬢?」

 返事もできませんでした。
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