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第一話「魔法のペンと奇跡の感謝状」
リーリ・クラリスは、朝からずぶ濡れだった。
村の泉で洗濯をしている最中、飼いヤギのバルドが暴れて桶をひっくり返したのだ。手伝ってくれるどころか、バルドはのんきにリーリを見下ろしながら「メエェ」と鳴いている。
「もう、バルド! 今日の洗濯はこれで三回目だよ!」
半泣きになりながら桶を拾い上げるリーリ。12歳の少女で、少しぼさぼさの茶髪と小柄な体が特徴だ。どこかドジっ子なところがあり、村人からは「おっちょこリーリ」と親しまれている。
そんな彼女の姿を、木陰から眺めている一人の少年がいた。
「相変わらずドジだな、リーリ。」
声をかけたのは幼馴染のカイン・アーク。黒髪で端正な顔立ち、どこか冷静な雰囲気をまとった14歳だ。彼は村で一番賢い少年として知られている。
「うっさいな、カイン! 助けてくれるなら文句言わないけど?」
「いや、見てるほうが面白いから。」
カインは肩をすくめ、少し笑みを浮かべると、バルドを追い払うために手を叩いた。
「ふーんだ、意地悪。」リーリが拗ねたように言うと、カインは目を細めて笑った。
そのときだった。
桶の中に、水の流れとは不釣り合いな光る物体が浮かんできた。
「これ……ペン?」
リーリが拾い上げたのは、細長い金属製のペンだった。表面には見たことのない紋様が彫られ、光が反射して虹色に輝いている。
「ただのペンじゃなさそうだな。」
カインが興味深げに近づいてきた。
「拾ったものに文句つけるのはやめてよ! たぶん、私の幸運の証なんだから!」
リーリは嬉しそうにペンを握りしめた。その瞬間、ペンの先端が青白く光り、小さな声が耳元で囁いた。
「心からの感謝を込めよ――奇跡はその手から生まれる。」
「えっ!? 今、何か喋ったよね?」リーリは驚いてカインを見るが、彼は首をかしげた。
「いや、何も聞こえなかったけど……」
ペンの声に戸惑いながらも、リーリは泉のほとりに座り込み、ペンを握りしめた。そして、彼女の頭に浮かんだのは、いつも家事を手伝ってくれる祖母のことだった。
「……おばあちゃんに感謝の手紙を書いてみようかな。」
リーリはそう呟くと、ポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、ペンを走らせた。
『おばあちゃんへ。いつもありがとう。おばあちゃんのおかげで毎日楽しいです。これからもよろしくね。大好きだよ!』
書き終えると、ペンが再び光を放ち、手紙が眩い輝きに包まれた。次の瞬間――手紙は風に乗り、ふわりと宙に浮かび、遠くへ飛んでいった。
「な、何これ!?」
リーリとカインは唖然として見つめる。
すると、村の方角から突如、大きな歓声が聞こえてきた。
「奇跡だ!村の作物が一気に実ったぞ!」
農夫たちが大声で叫んでいる。村の畑は、つい先ほどまで半分枯れかけていたはずだった。それが、見る間に緑色の葉を広げ、豊かな実をつけていたのだ。
「……今の手紙、何か関係ある?」
カインが目を丸くしてリーリを見る。
「わ、わかんないけど……すごいことが起きたよね?」
リーリの手にはまだ、魔法のペンが輝いていた。
その背後で、どこからともなく黒い影が村を見下ろしていた。
「感謝状の力か……。久しいな。」
低い声が呟く。
こうして、リーリとカインの「感謝状」と「奇跡」をめぐる冒険が始まったのだった――。
リーリ・クラリスは、朝からずぶ濡れだった。
村の泉で洗濯をしている最中、飼いヤギのバルドが暴れて桶をひっくり返したのだ。手伝ってくれるどころか、バルドはのんきにリーリを見下ろしながら「メエェ」と鳴いている。
「もう、バルド! 今日の洗濯はこれで三回目だよ!」
半泣きになりながら桶を拾い上げるリーリ。12歳の少女で、少しぼさぼさの茶髪と小柄な体が特徴だ。どこかドジっ子なところがあり、村人からは「おっちょこリーリ」と親しまれている。
そんな彼女の姿を、木陰から眺めている一人の少年がいた。
「相変わらずドジだな、リーリ。」
声をかけたのは幼馴染のカイン・アーク。黒髪で端正な顔立ち、どこか冷静な雰囲気をまとった14歳だ。彼は村で一番賢い少年として知られている。
「うっさいな、カイン! 助けてくれるなら文句言わないけど?」
「いや、見てるほうが面白いから。」
カインは肩をすくめ、少し笑みを浮かべると、バルドを追い払うために手を叩いた。
「ふーんだ、意地悪。」リーリが拗ねたように言うと、カインは目を細めて笑った。
そのときだった。
桶の中に、水の流れとは不釣り合いな光る物体が浮かんできた。
「これ……ペン?」
リーリが拾い上げたのは、細長い金属製のペンだった。表面には見たことのない紋様が彫られ、光が反射して虹色に輝いている。
「ただのペンじゃなさそうだな。」
カインが興味深げに近づいてきた。
「拾ったものに文句つけるのはやめてよ! たぶん、私の幸運の証なんだから!」
リーリは嬉しそうにペンを握りしめた。その瞬間、ペンの先端が青白く光り、小さな声が耳元で囁いた。
「心からの感謝を込めよ――奇跡はその手から生まれる。」
「えっ!? 今、何か喋ったよね?」リーリは驚いてカインを見るが、彼は首をかしげた。
「いや、何も聞こえなかったけど……」
ペンの声に戸惑いながらも、リーリは泉のほとりに座り込み、ペンを握りしめた。そして、彼女の頭に浮かんだのは、いつも家事を手伝ってくれる祖母のことだった。
「……おばあちゃんに感謝の手紙を書いてみようかな。」
リーリはそう呟くと、ポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、ペンを走らせた。
『おばあちゃんへ。いつもありがとう。おばあちゃんのおかげで毎日楽しいです。これからもよろしくね。大好きだよ!』
書き終えると、ペンが再び光を放ち、手紙が眩い輝きに包まれた。次の瞬間――手紙は風に乗り、ふわりと宙に浮かび、遠くへ飛んでいった。
「な、何これ!?」
リーリとカインは唖然として見つめる。
すると、村の方角から突如、大きな歓声が聞こえてきた。
「奇跡だ!村の作物が一気に実ったぞ!」
農夫たちが大声で叫んでいる。村の畑は、つい先ほどまで半分枯れかけていたはずだった。それが、見る間に緑色の葉を広げ、豊かな実をつけていたのだ。
「……今の手紙、何か関係ある?」
カインが目を丸くしてリーリを見る。
「わ、わかんないけど……すごいことが起きたよね?」
リーリの手にはまだ、魔法のペンが輝いていた。
その背後で、どこからともなく黒い影が村を見下ろしていた。
「感謝状の力か……。久しいな。」
低い声が呟く。
こうして、リーリとカインの「感謝状」と「奇跡」をめぐる冒険が始まったのだった――。
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