1 / 11
1話
しおりを挟む
第一話「魔法のペンと奇跡の感謝状」
リーリ・クラリスは、朝からずぶ濡れだった。
村の泉で洗濯をしている最中、飼いヤギのバルドが暴れて桶をひっくり返したのだ。手伝ってくれるどころか、バルドはのんきにリーリを見下ろしながら「メエェ」と鳴いている。
「もう、バルド! 今日の洗濯はこれで三回目だよ!」
半泣きになりながら桶を拾い上げるリーリ。12歳の少女で、少しぼさぼさの茶髪と小柄な体が特徴だ。どこかドジっ子なところがあり、村人からは「おっちょこリーリ」と親しまれている。
そんな彼女の姿を、木陰から眺めている一人の少年がいた。
「相変わらずドジだな、リーリ。」
声をかけたのは幼馴染のカイン・アーク。黒髪で端正な顔立ち、どこか冷静な雰囲気をまとった14歳だ。彼は村で一番賢い少年として知られている。
「うっさいな、カイン! 助けてくれるなら文句言わないけど?」
「いや、見てるほうが面白いから。」
カインは肩をすくめ、少し笑みを浮かべると、バルドを追い払うために手を叩いた。
「ふーんだ、意地悪。」リーリが拗ねたように言うと、カインは目を細めて笑った。
そのときだった。
桶の中に、水の流れとは不釣り合いな光る物体が浮かんできた。
「これ……ペン?」
リーリが拾い上げたのは、細長い金属製のペンだった。表面には見たことのない紋様が彫られ、光が反射して虹色に輝いている。
「ただのペンじゃなさそうだな。」
カインが興味深げに近づいてきた。
「拾ったものに文句つけるのはやめてよ! たぶん、私の幸運の証なんだから!」
リーリは嬉しそうにペンを握りしめた。その瞬間、ペンの先端が青白く光り、小さな声が耳元で囁いた。
「心からの感謝を込めよ――奇跡はその手から生まれる。」
「えっ!? 今、何か喋ったよね?」リーリは驚いてカインを見るが、彼は首をかしげた。
「いや、何も聞こえなかったけど……」
ペンの声に戸惑いながらも、リーリは泉のほとりに座り込み、ペンを握りしめた。そして、彼女の頭に浮かんだのは、いつも家事を手伝ってくれる祖母のことだった。
「……おばあちゃんに感謝の手紙を書いてみようかな。」
リーリはそう呟くと、ポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、ペンを走らせた。
『おばあちゃんへ。いつもありがとう。おばあちゃんのおかげで毎日楽しいです。これからもよろしくね。大好きだよ!』
書き終えると、ペンが再び光を放ち、手紙が眩い輝きに包まれた。次の瞬間――手紙は風に乗り、ふわりと宙に浮かび、遠くへ飛んでいった。
「な、何これ!?」
リーリとカインは唖然として見つめる。
すると、村の方角から突如、大きな歓声が聞こえてきた。
「奇跡だ!村の作物が一気に実ったぞ!」
農夫たちが大声で叫んでいる。村の畑は、つい先ほどまで半分枯れかけていたはずだった。それが、見る間に緑色の葉を広げ、豊かな実をつけていたのだ。
「……今の手紙、何か関係ある?」
カインが目を丸くしてリーリを見る。
「わ、わかんないけど……すごいことが起きたよね?」
リーリの手にはまだ、魔法のペンが輝いていた。
その背後で、どこからともなく黒い影が村を見下ろしていた。
「感謝状の力か……。久しいな。」
低い声が呟く。
こうして、リーリとカインの「感謝状」と「奇跡」をめぐる冒険が始まったのだった――。
リーリ・クラリスは、朝からずぶ濡れだった。
村の泉で洗濯をしている最中、飼いヤギのバルドが暴れて桶をひっくり返したのだ。手伝ってくれるどころか、バルドはのんきにリーリを見下ろしながら「メエェ」と鳴いている。
「もう、バルド! 今日の洗濯はこれで三回目だよ!」
半泣きになりながら桶を拾い上げるリーリ。12歳の少女で、少しぼさぼさの茶髪と小柄な体が特徴だ。どこかドジっ子なところがあり、村人からは「おっちょこリーリ」と親しまれている。
そんな彼女の姿を、木陰から眺めている一人の少年がいた。
「相変わらずドジだな、リーリ。」
声をかけたのは幼馴染のカイン・アーク。黒髪で端正な顔立ち、どこか冷静な雰囲気をまとった14歳だ。彼は村で一番賢い少年として知られている。
「うっさいな、カイン! 助けてくれるなら文句言わないけど?」
「いや、見てるほうが面白いから。」
カインは肩をすくめ、少し笑みを浮かべると、バルドを追い払うために手を叩いた。
「ふーんだ、意地悪。」リーリが拗ねたように言うと、カインは目を細めて笑った。
そのときだった。
桶の中に、水の流れとは不釣り合いな光る物体が浮かんできた。
「これ……ペン?」
リーリが拾い上げたのは、細長い金属製のペンだった。表面には見たことのない紋様が彫られ、光が反射して虹色に輝いている。
「ただのペンじゃなさそうだな。」
カインが興味深げに近づいてきた。
「拾ったものに文句つけるのはやめてよ! たぶん、私の幸運の証なんだから!」
リーリは嬉しそうにペンを握りしめた。その瞬間、ペンの先端が青白く光り、小さな声が耳元で囁いた。
「心からの感謝を込めよ――奇跡はその手から生まれる。」
「えっ!? 今、何か喋ったよね?」リーリは驚いてカインを見るが、彼は首をかしげた。
「いや、何も聞こえなかったけど……」
ペンの声に戸惑いながらも、リーリは泉のほとりに座り込み、ペンを握りしめた。そして、彼女の頭に浮かんだのは、いつも家事を手伝ってくれる祖母のことだった。
「……おばあちゃんに感謝の手紙を書いてみようかな。」
リーリはそう呟くと、ポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、ペンを走らせた。
『おばあちゃんへ。いつもありがとう。おばあちゃんのおかげで毎日楽しいです。これからもよろしくね。大好きだよ!』
書き終えると、ペンが再び光を放ち、手紙が眩い輝きに包まれた。次の瞬間――手紙は風に乗り、ふわりと宙に浮かび、遠くへ飛んでいった。
「な、何これ!?」
リーリとカインは唖然として見つめる。
すると、村の方角から突如、大きな歓声が聞こえてきた。
「奇跡だ!村の作物が一気に実ったぞ!」
農夫たちが大声で叫んでいる。村の畑は、つい先ほどまで半分枯れかけていたはずだった。それが、見る間に緑色の葉を広げ、豊かな実をつけていたのだ。
「……今の手紙、何か関係ある?」
カインが目を丸くしてリーリを見る。
「わ、わかんないけど……すごいことが起きたよね?」
リーリの手にはまだ、魔法のペンが輝いていた。
その背後で、どこからともなく黒い影が村を見下ろしていた。
「感謝状の力か……。久しいな。」
低い声が呟く。
こうして、リーリとカインの「感謝状」と「奇跡」をめぐる冒険が始まったのだった――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる