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3話
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第三話「封じられた秘密と始まりのペン」
翌朝、村にはいつもと違う空気が漂っていた。収穫祭の余韻が残る中、どこか不穏な噂が広がっていたのだ。
「昨夜、村の外れに奇妙な黒い霧が出たらしい。」
「いや、もっと恐ろしい怪物の姿を見たっていう話も……。」
村人たちの囁き声を聞きながら、リーリは深い溜め息をついた。
「昨夜のこと、誰にも言えないよね……。」
目の前ではカインが腕を組み、険しい表情で考え込んでいた。彼の冷静な瞳には、何か決意のような光が宿っている。
「……お前、昨夜あのペンで本当に怪物を消したんだな。」
カインが口を開くと、リーリは不安げに頷いた。
「うん。でも、それがどうして起きたのかはわからない。ただ、感謝状を書いたら光が出て……気づいたら全部消えてた。」
「それがただの偶然じゃないことは確かだ。」
カインはポケットから一冊の古びた本を取り出した。それは彼の祖父が遺した、古代の魔法に関する本だった。
「昨夜、家に戻ってから調べてみたんだ。『感謝状』にまつわる記述が載ってた。」
「え、そんなの本当にあるの!?」
リーリは驚いて本を覗き込む。そこには、かすれた文字でこう書かれていた。
『感謝の言葉を宿す者、それは奇跡を操る力を持つ。だが、その力が目覚めるとき、世界に眠る影もまた目覚める――。』
「……眠る影って、あの黒いローブの男のこと?」
リーリは思い出すだけで身震いした。昨夜の不気味な声、鋭い目――すべてが脳裏に焼き付いている。
「可能性は高い。」
カインは静かに頷いた。
「感謝の力が蘇ると、感謝を否定する存在もまた活動を始める。つまり、お前が拾ったそのペンは、ただの道具じゃない。」
リーリはペンを握りしめた。どこか不安そうな顔で呟く。
「でも、なんで私が拾ったんだろう……? ただの偶然だったの?」
「偶然かどうかはまだわからない。」
カインはリーリの手元のペンをじっと見つめた。
「ただ、あのペンにはもっと深い秘密があるはずだ。それを解き明かさない限り、お前も村も危険にさらされる。」
そのとき、村の広場が騒がしくなった。
「賢者アルベル様がお越しになられたぞ!」
村人たちの声に、リーリとカインは顔を見合わせた。
「賢者アルベル?」
「村に時々来る巡礼の魔法使いだよ。大したことはないけど、知識は豊富らしい。」
広場に向かうと、そこには白髪混じりの老人が立っていた。長いローブに杖を持ち、片眼鏡越しに村人たちを観察している。その表情は穏やかだが、その目には鋭さが宿っている。
「おや、君たちが『噂の光』を見た子供たちだね?」
アルベルがリーリとカインに視線を向けた瞬間、リーリは驚きに目を見開いた。
「どうして私たちのことを……?」
アルベルは静かに微笑むと、杖を軽く地面に突き立てた。次の瞬間、周囲の村人たちがまるで深い眠りに落ちたかのように動きを止めた。
「さあ、君たちだけに話す時間だ。」
リーリは唖然とし、カインはすぐに彼の言葉に反応した。
「あなた、ただの賢者じゃないですね。」
アルベルは杖を握り直し、深い声で語り始めた。
「その通りだ。私は『感謝の魔法』の伝承者。君たちが持つそのペン――それはこの世界に二度と現れてはならなかったものだ。」
「え!? でも、このペンのおかげで奇跡が……!」
リーリが抗議すると、アルベルは一瞬表情を曇らせた。
「確かに、感謝の魔法は奇跡を起こす力を持つ。しかし、それは同時にこの世界に混乱を招く力でもある。」
「混乱って、どういうこと?」
カインが鋭く聞くと、アルベルは静かに答えた。
「感謝状の力は人々の心を強くするが、その力に依存する者も現れる。そして、感謝の力を狙う『影』――無感謝の化身が力を得てしまうのだ。」
リーリは呟いた。
「じゃあ、このペンは……危険なもの?」
アルベルは深いため息をつき、こう言った。
「そのペンは、かつて世界を救った英雄が使ったものだ。しかし、その代償として英雄は全てを失った。君がそれをどう使うか、それがこれからの世界を決める。」
リーリとカインは押し黙った。ペンを巡る運命の重さを初めて実感した瞬間だった。
「だが君たちはまだ若い。正しい道を見つけるには助けが必要だ。」
アルベルは杖を掲げ、ペンに向けて何か呪文を唱えた。
ペンが再び光を放つと、その表面に見たことのない文字が浮かび上がった。
「これは……地図?」
リーリはペンに描かれた模様を見つめた。それは、この世界に隠された秘密の場所を示すような複雑な紋様だった。
「そこへ向かうがいい。君たちが真に感謝の力を使いこなせるかどうか、それが試される時だ。」
アルベルの言葉に、リーリは深く頷いた。そして、カインもまた覚悟を決めた顔で彼女に寄り添った。
「やるしかないみたいだな。」
こうして、二人は新たな試練と運命の旅へと歩み出すのだった――。
翌朝、村にはいつもと違う空気が漂っていた。収穫祭の余韻が残る中、どこか不穏な噂が広がっていたのだ。
「昨夜、村の外れに奇妙な黒い霧が出たらしい。」
「いや、もっと恐ろしい怪物の姿を見たっていう話も……。」
村人たちの囁き声を聞きながら、リーリは深い溜め息をついた。
「昨夜のこと、誰にも言えないよね……。」
目の前ではカインが腕を組み、険しい表情で考え込んでいた。彼の冷静な瞳には、何か決意のような光が宿っている。
「……お前、昨夜あのペンで本当に怪物を消したんだな。」
カインが口を開くと、リーリは不安げに頷いた。
「うん。でも、それがどうして起きたのかはわからない。ただ、感謝状を書いたら光が出て……気づいたら全部消えてた。」
「それがただの偶然じゃないことは確かだ。」
カインはポケットから一冊の古びた本を取り出した。それは彼の祖父が遺した、古代の魔法に関する本だった。
「昨夜、家に戻ってから調べてみたんだ。『感謝状』にまつわる記述が載ってた。」
「え、そんなの本当にあるの!?」
リーリは驚いて本を覗き込む。そこには、かすれた文字でこう書かれていた。
『感謝の言葉を宿す者、それは奇跡を操る力を持つ。だが、その力が目覚めるとき、世界に眠る影もまた目覚める――。』
「……眠る影って、あの黒いローブの男のこと?」
リーリは思い出すだけで身震いした。昨夜の不気味な声、鋭い目――すべてが脳裏に焼き付いている。
「可能性は高い。」
カインは静かに頷いた。
「感謝の力が蘇ると、感謝を否定する存在もまた活動を始める。つまり、お前が拾ったそのペンは、ただの道具じゃない。」
リーリはペンを握りしめた。どこか不安そうな顔で呟く。
「でも、なんで私が拾ったんだろう……? ただの偶然だったの?」
「偶然かどうかはまだわからない。」
カインはリーリの手元のペンをじっと見つめた。
「ただ、あのペンにはもっと深い秘密があるはずだ。それを解き明かさない限り、お前も村も危険にさらされる。」
そのとき、村の広場が騒がしくなった。
「賢者アルベル様がお越しになられたぞ!」
村人たちの声に、リーリとカインは顔を見合わせた。
「賢者アルベル?」
「村に時々来る巡礼の魔法使いだよ。大したことはないけど、知識は豊富らしい。」
広場に向かうと、そこには白髪混じりの老人が立っていた。長いローブに杖を持ち、片眼鏡越しに村人たちを観察している。その表情は穏やかだが、その目には鋭さが宿っている。
「おや、君たちが『噂の光』を見た子供たちだね?」
アルベルがリーリとカインに視線を向けた瞬間、リーリは驚きに目を見開いた。
「どうして私たちのことを……?」
アルベルは静かに微笑むと、杖を軽く地面に突き立てた。次の瞬間、周囲の村人たちがまるで深い眠りに落ちたかのように動きを止めた。
「さあ、君たちだけに話す時間だ。」
リーリは唖然とし、カインはすぐに彼の言葉に反応した。
「あなた、ただの賢者じゃないですね。」
アルベルは杖を握り直し、深い声で語り始めた。
「その通りだ。私は『感謝の魔法』の伝承者。君たちが持つそのペン――それはこの世界に二度と現れてはならなかったものだ。」
「え!? でも、このペンのおかげで奇跡が……!」
リーリが抗議すると、アルベルは一瞬表情を曇らせた。
「確かに、感謝の魔法は奇跡を起こす力を持つ。しかし、それは同時にこの世界に混乱を招く力でもある。」
「混乱って、どういうこと?」
カインが鋭く聞くと、アルベルは静かに答えた。
「感謝状の力は人々の心を強くするが、その力に依存する者も現れる。そして、感謝の力を狙う『影』――無感謝の化身が力を得てしまうのだ。」
リーリは呟いた。
「じゃあ、このペンは……危険なもの?」
アルベルは深いため息をつき、こう言った。
「そのペンは、かつて世界を救った英雄が使ったものだ。しかし、その代償として英雄は全てを失った。君がそれをどう使うか、それがこれからの世界を決める。」
リーリとカインは押し黙った。ペンを巡る運命の重さを初めて実感した瞬間だった。
「だが君たちはまだ若い。正しい道を見つけるには助けが必要だ。」
アルベルは杖を掲げ、ペンに向けて何か呪文を唱えた。
ペンが再び光を放つと、その表面に見たことのない文字が浮かび上がった。
「これは……地図?」
リーリはペンに描かれた模様を見つめた。それは、この世界に隠された秘密の場所を示すような複雑な紋様だった。
「そこへ向かうがいい。君たちが真に感謝の力を使いこなせるかどうか、それが試される時だ。」
アルベルの言葉に、リーリは深く頷いた。そして、カインもまた覚悟を決めた顔で彼女に寄り添った。
「やるしかないみたいだな。」
こうして、二人は新たな試練と運命の旅へと歩み出すのだった――。
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