「聞いた聞いた?? お前なんて産まれてこなければ良かった!と言われ続けた無能な非行少年!? 実は、神の末裔の生まれ変わりだったんだって!?」

Ⅶ.a Works

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24話

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第24話:水晶の谷の試練

霧を抜けた先に広がるのは、無数の水晶がきらめく神秘的な谷──水晶の谷だった。太陽の光を受けて反射する水晶は七色の輝きを放ち、その眩しさに目をくらませそうになる。だが、蓮たちは油断せず、一歩一歩足を進めた。

「美しい場所だけど、絶対に罠が仕掛けられているはず」
エリスが冷静に言うと、一行は頷いて警戒を強めた。風の遺物が奏でるそよ風、炎の遺物がほのかな熱を、そして水の遺物が微かな波紋を谷に響かせる。すべてが試練の鍵となる。

一の試練「反射の迷宮」

谷の入口には、巨大な水晶の壁が幾重にも立ちはだかっていた。壁面には鏡のように周囲を映し出す水晶が埋め込まれ、進むべき道は全く見えない。蓮は光の遺物を手に取り、まばゆい光を放った。すると、水晶の反射が不自然に歪み、本物の通路だけが明るく浮かび上がる。

「これだ!」
蓮の合図で四人は反射した道をたどり、迷うことなく奥へと進んだ。

二の試練「共鳴の協奏」

迷宮を抜けると、小さな池が現れた。池の中央には祭壇があり、その上に古びたチャイムが置かれている。チャイムには四つの鐘がぶら下がり、それぞれに異なる文様が刻まれている。

「これは…音を合わせろってこと?」
彩がそっと鐘を叩くと、柔らかな鈴音が谷に響いた。しかし、その音は次の鐘を鳴らすときには微妙にずれてしまい、祭壇の文様が反応しない。

「四つの遺物それぞれの音に合わせるのよ」
エリスが指示し、翼は炎の遺物をかざして低く熱を帯びた音を、亮は水の遺物で澄んだ水音を、蓮は光の遺物を透き通る鈴音として鳴らし、彩は植物の遺物でやわらかな風鳴りを奏でた。四つの音が重なり合い、水晶の祭壇が美しい共鳴を起こすと、祭壇がゆっくりと沈み、新たな道が開かれた。

三の試練「心の水鏡」

開かれた道を進むと、彼らは巨大な水鏡の前に立っていた。鏡面は静まり返り、そこに映るのはそれぞれの心のあり様。蓮は仲間を守る自信と不安、彩は過去の失敗への恐怖、翼は孤独感、亮は自らの弱さを映し出される。

「これは…自分と向き合えってこと?」
蓮は胸の中に湧き上がる不安を一つずつ言葉にして鏡に告げた。

「俺は仲間を守る強さを手に入れたい」
「私はもう、誰も失いたくない」
「俺は一人じゃない」
「俺も、仲間と共にいる意味を知りたい」

彼らが声を揃え、鏡面にある自分の投影を肯定するように語った瞬間、水鏡が揺らぎ、清らかな波紋が四方へと広がった。鏡の向こう側に封じられていた試練の扉が開き、最後の空間へと通じる。

最後の試練「水晶の心臓」

扉を抜けたその先には、巨大な水晶の「心臓」が浮かんでいた。心臓は脈打つように淡い蒼光を放ち、その周囲を闇の気配が取り巻いている。心臓が示すのは、谷を覆う闇の種子──新たな封印を完成させなければ、闇の力が再び解き放たれてしまう。

「急がないと…!」
蓮たちは四つの遺物を水晶の心臓にかざし、その力を流し込んだ。風の遺物がそよ風を、水の遺物が清流を、炎の遺物が温かい祈りを、光の遺物が澄んだ輝きを注ぎ込む。

心臓は激しく脈打ち、一瞬だけ暗転した後、何事もなかったかのように静かに光を放たなくなった。

「完了…?」
亮が心臓に触れると、水晶はすっと静まり返り、新たな水晶の結界が谷全体を包み込んだ。

「見事だ、君たちは試練を乗り越えた。これで水晶の谷も守られた。」エリスが微笑む。

「次は最後の扉だな…」蓮は仲間を見渡し、決意を新たにした。

光と風と水と炎と大地

水晶の谷を脱した蓮たちは、新たな遺物の力を胸に、最後の目的地──「虚空の門」へと旅を再開した。彼らの絆はさらに深まり、どんな困難にも立ち向かう覚悟が固まっている。かつてない大いなる試練が待ち受けていることは間違いないが、蓮たちはもう恐れない。なぜなら、仲間と共にある限り、この世界を守る力は無限だからだ。

――次回、最終決戦へ向けて最後の準備が始まる。虚空の門が開くその時、蓮たちは世界の運命を握る光となる。
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