一人ぼっち令嬢はアナタの幸せを願います

ツムギ

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太陽の国 パルテナ。

日を浴び輝く花々や木々はこの国の聖女である女王 シーナによってさんさんと輝いていた。


そんな中で隣国 月の国 ルテラルからこの国の王位継承者1位であるシーナの三人娘が一人。長女 カナリアに縁談が、よくある話ではあるがルテラルを納める王は横暴で女を打ちオマケに婚約者までいる始末。


蝶よ花よと愛でていたカナリアへ辱めを受けたと感じたシーナは、顔を真っ赤に苛立ちを顕に薄汚い扉を乱暴に叩くと「出て来なさい」と冷たく一言放った。

「はい。女王様」

そう力なく呟くその少女の体はと言うと痩せこけ今にも倒れてしまいそうで、オマケに王家の煌びやかな内装には似合わない使用人だって身に付けはしないような布の切れ端を紡いだ薄汚いドレスを身に付けていた。


彼女の名前はルシア。
この国の王シーナの三姉妹が次女である、立派な王族だった。


「話は不要ね、盗み聞きしたならしたで良いけれども。拒否権は勿論ないわ。行きなさい。」


そう冷たく言い放つと汚物を払う様に嗚咽を漏らしながらしっしと手を振った。
その日以降も誰ひとりとして哀れんだり悲しんだりそんな表情をしている者は居なかった。

そのままあれよあれよと話は進んでいき、とうとう隣国へ旅立つ日となった。

「流石に正装しないと失礼になるからね」

と薄ら笑いを浮かべた母に着せられたドレスは、姉カナリアが10歳の誕生日を迎えた日にお祝いの席で着た、17歳のルシアが着るにはとても幼稚でたけも短く向かい入れる隣国を馬鹿にするようなものであった。

隣国が寄越した迎えの馬車を引く馬主でさえ、顔を赤くして乱暴に馬を走らせる始末。

「お世話になりました。さようなら」

この言葉に応答するものはいない。
当たり前のように誰も居ないその空間に乱暴な馬車の中から会釈をし、今後に起こるであろう身に降りかかる不幸に心を震わせていた。


隣国に着いたのは、夜も深けた頃。
乱暴に馬車が止まったかと思うと、「着きましたぞ」
と、その声が寒空の静寂を切り裂いた。

季節は秋が終わり冬。銀世界に凛と佇むその城は、繊細な雪細工のようだった。

思わず「はあ」と息を漏らすと、城のものだという男が目の前に姿を現した。


「王はお待ちしております。どうか雪をほろい、落ち着きましたら、大広間までお越しください。」

ゆっくりとした丁寧な物言いの彼に、久々に掛けられた温かみを持った言葉にむず痒さを感じながら、雪をほろい大広間へと足を進めた。


「寒い中ご苦労であった。」


ここでも予想とは以外に暖かい言葉を掛けられる。


「実に汚らわしい。この空間が不愉快だ。失せよ」
そんな思いも束の間で次の瞬間には、首元に剣を突き付けられていた。

見た目は自分と同じくらいの年頃であろう青年。
スっと高い身長は私の背丈より随分高く黒髪が銀色の装飾に映えて整ったその顔は彫刻画のようだった。
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