2 / 2
あなたの幸せを願います
あなたの幸せを願います
しおりを挟む
「無礼をお許し下さい。直ぐに消えます」
震える唇でそう呟くと、「ふん」と剣を投げ捨てた。
不当な扱いを受けて居ても、死ぬような思いをしていても、いざ目の前にその瞬間が来ると怖気付く。
そのまま姿が見えなくなった彼の背を追うように使いの男が「姫君もお部屋へ」と前を歩きだし、私もそれに続いた。
「王の無礼お許し下さい。姫君の部屋はこちらです。後日、使いの者をお連れしますので今日はゆっくりと休まれてください。」
こちらは先程と変わらずで、これはこれでたいへんな違和感だ。「皆からの不当な扱いは明日からかなあ」なんて考えてるうちにウトウト眠りに落ちてしまった。
どれほど眠ってしまったのだろうか。外は、ぼんやり日が差していた。城の中も騒がしい様子はない。
「…気持ちがいいなあ」
こんなに柔らかい布団で暖かい1枚の布で寝たのは一体いつぶりだろうか、体の疲れが取れるようだった。
「さあてと、」
ガタガタと部屋を整えると自分の身支度も手早くすませ、昨日に「明日また来ます」と言っていた使いの男の到着を待つ。
しばらくするとコンコンとノックの音と共に
「レディおはようございます。起きていらっしゃいますか?」
と声が聞こえた。「どうぞお入り下さい」と扉を開けて彼の目の前で地べたに正座をする。
使いの男は目を丸くすると、慌てて目線を合わせるように屈んだ。
「レディ足でも痛むのですか?」
「いえ、これ以上の無礼をする訳には行きませんので。私の事は使用人と考えて頂いて大丈夫です」
心配そうに顔を歪めていた使用人の男は、やはり怪訝な顔をして口をつぐんでいたが暫くするとハッとしたようにこう続けた、
「…レディもしかして、正式な王家の挨拶をご存知ないのですか?」
「…お恥ずかしながら分からないのです。」
やはりと口にすると使用人の男は片膝をつき、
「親愛なるルシア、我が名はイルティ・カルナ。アナタに照らされ、アナタの幸福を祈るもの」
長々とそう呟くとスラッとした長身を屈めやがて額を合わせる
「ここでは国名をいい最後に祝福をと続けます。これが王家のキチンとした挨拶です。王家の者しかこの挨拶はしてはなりません。それは太陽の国も同様です」
呆気にとられた顔をしているとバチッとまだ額をくっつけたままのカルナと目が合う。
カルナは何でしょう?と言うように首を少し傾げた。
彼もまた黒髪が美しい整った顔立ちの青年だった。
「…では、私はとんでもない無礼をはたらいたのですね…」
汚らしい幼稚な丈の足りないドレスに王家の者とは到底思えない無作法。王が怒るのも無理がなかった。
「…もし良ければ私が「カルナ」」
カルナと声を重ねたのは、
「何をしているんだ」
そう冷たく吐き捨てた、名も知らぬ王であった。
震える唇でそう呟くと、「ふん」と剣を投げ捨てた。
不当な扱いを受けて居ても、死ぬような思いをしていても、いざ目の前にその瞬間が来ると怖気付く。
そのまま姿が見えなくなった彼の背を追うように使いの男が「姫君もお部屋へ」と前を歩きだし、私もそれに続いた。
「王の無礼お許し下さい。姫君の部屋はこちらです。後日、使いの者をお連れしますので今日はゆっくりと休まれてください。」
こちらは先程と変わらずで、これはこれでたいへんな違和感だ。「皆からの不当な扱いは明日からかなあ」なんて考えてるうちにウトウト眠りに落ちてしまった。
どれほど眠ってしまったのだろうか。外は、ぼんやり日が差していた。城の中も騒がしい様子はない。
「…気持ちがいいなあ」
こんなに柔らかい布団で暖かい1枚の布で寝たのは一体いつぶりだろうか、体の疲れが取れるようだった。
「さあてと、」
ガタガタと部屋を整えると自分の身支度も手早くすませ、昨日に「明日また来ます」と言っていた使いの男の到着を待つ。
しばらくするとコンコンとノックの音と共に
「レディおはようございます。起きていらっしゃいますか?」
と声が聞こえた。「どうぞお入り下さい」と扉を開けて彼の目の前で地べたに正座をする。
使いの男は目を丸くすると、慌てて目線を合わせるように屈んだ。
「レディ足でも痛むのですか?」
「いえ、これ以上の無礼をする訳には行きませんので。私の事は使用人と考えて頂いて大丈夫です」
心配そうに顔を歪めていた使用人の男は、やはり怪訝な顔をして口をつぐんでいたが暫くするとハッとしたようにこう続けた、
「…レディもしかして、正式な王家の挨拶をご存知ないのですか?」
「…お恥ずかしながら分からないのです。」
やはりと口にすると使用人の男は片膝をつき、
「親愛なるルシア、我が名はイルティ・カルナ。アナタに照らされ、アナタの幸福を祈るもの」
長々とそう呟くとスラッとした長身を屈めやがて額を合わせる
「ここでは国名をいい最後に祝福をと続けます。これが王家のキチンとした挨拶です。王家の者しかこの挨拶はしてはなりません。それは太陽の国も同様です」
呆気にとられた顔をしているとバチッとまだ額をくっつけたままのカルナと目が合う。
カルナは何でしょう?と言うように首を少し傾げた。
彼もまた黒髪が美しい整った顔立ちの青年だった。
「…では、私はとんでもない無礼をはたらいたのですね…」
汚らしい幼稚な丈の足りないドレスに王家の者とは到底思えない無作法。王が怒るのも無理がなかった。
「…もし良ければ私が「カルナ」」
カルナと声を重ねたのは、
「何をしているんだ」
そう冷たく吐き捨てた、名も知らぬ王であった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
王女を好きだと思ったら
夏笆(なつは)
恋愛
「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。
デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。
「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」
エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。
だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。
「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」
ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。
ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。
と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。
「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」
そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。
小説家になろうにも、掲載しています。
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる