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40_その後
しおりを挟む――――それから、あっという間に月日が過ぎていった。
あの日、救出された私は、ノアム陛下に抱えられ、アンティーブ辺境伯の領主館に運び込まれた。
幸い私は軽症で、手当てを受けて、翌日には動けるようになったので、次の日には陛下と一緒に、リモージュに戻る馬車に乗っていた。
――――そして今、私は、リモージュの王宮にいる。
「・・・・・・・・」
窓の外には、リモージュ王宮の美しい庭が広がっていた。
最初は、その美しい景観を眺めているだけで楽しかったものの、今では退屈を感じるようになっていた。
(・・・・私、いつになったら帰れるんだろう・・・・?)
王宮に留まり、もう二週間になる。
リモージュに戻るなり、陛下は私に侍医をつけてくれた。そして怪我が治るまで、王宮に留まるよう、命じられた。
事件の調査で負傷したのだから、自分に非があるというのが、陛下の言い分だった。自分の意志で行動した結果だから、私の責任だといっても、陛下は耳を貸してくれない。
ゼレールさんは今、投獄されている。
独房に閉じ込められ、ついに観念したのか、彼はすべてを告白した。
ルゥセーブルさんと共謀し、アンティーブ辺境伯夫人を殺したこと。
白磁の研究成果を奪うことが目的だったこと。
それ以前から、辺境伯の船に勝手に密輸品を乗せ、儲けていたこと。
夫人殺害後は、バルビエさんにすべての罪をなすりつけようとして、彼を自殺に見せかけて殺したこと。
――――口封じのために、セシールさんを殺し、遺体をミイラに加工して、売り飛ばそうとしたこと。
逃亡したルゥセーブルさんだったけれど、数日後にはあっさりと捕縛され、リモージュに連れ戻されたそうだ。今はゼレールさんと同じく、牢獄の中で、判決を待っているらしい。
領主館の使用人達は真実を知り、怯えていた。陛下は怒っていたけれど、罰さないでほしいと私が頼んだことで、不問となった。
助けてくれたブランカさんにだけは、陛下から手厚い報奨金が送られたという。
私の怪我はもう、完治した。だから何度も帰ろうとしたけれど、完治するまでは留まるようにという命令は撤回してもらえなかった。
今は、することがない。
(早く領地に戻らないと、色々することがあるのに・・・・)
アンティーブから戻ってきて以来、陛下には会えていないけれど、時々、アンベールさんが様子を見に来てくれた。
「陛下にお話があります。会いたいんですが、いつなら会ってもらえるでしょうか?」
すると、アンベールさんの表情が曇る。
「・・・・陛下は今、お忙しいので、当分は無理でしょう」
「そうですか。それでは、陛下に伝言を伝えてもらえるでしょうか」
「ええ、もちろん」
――――だけどその後も、私が陛下に会えることはなかった。
(・・・・私、もしかして陛下に避けられている?)
私がそう思いはじめたのは、アンベールさんに頼みごとをしてから、一瞬間近く経ったあとだった。
陛下と話をするために、何度も執務室や仮眠室の前を訪れているのに、一度も陛下に会えていない。
なのに、同じ王宮の中にいて、陛下に会えていないのは、私だけなのだ。他の貴族や侍女達は、毎日陛下と会っているという。――――私だけが会えない。
陛下が意図的に私を避けなければ、ありえないことだった。
(・・・・どうして避けられているんだろう?)
避けられる心当たりがない。気づかないうちに、嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。――――そう思うと、胸が痛んだ。
苦しい。どうしてこんな気持ちになるのだろうと考え――――自分の気持ちに気づく。
(・・・・そうか。私、陛下のことを・・・・)
陛下と話をして、話が面白い人だと思った。そらぞらしいきざな言葉は言わず、皮肉まじりだけど的確な指摘が入った話に、すっかり聞き入ってしまっていた。
(馬鹿な話・・・・)
釣り合うはずがないのに。
(とにかく、陛下と話をしないと)
頭を振って、感傷を振り払う。
とにかく今は、陛下と話をする方法を考えよう。陛下に嫌われたにせよ、話をして、ルシヨンに戻ることを伝えよう。
――――そうすればもう、陛下を煩わせることもないはずだ。
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