【完結】悪役令息に生まれて断罪される上に嫌われてるらしいので罪を償おうとしたら主人公の様子がおかしい

神崎ロクス

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選択を伝えなきゃならない

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「ルーイ兄様ー! お会いしたかったですー!」

 尻尾を振りながらばたんと扉を開けたニコルを見て苦い気持ちになる。俺はライズを選んだ。だから、ニコルの気持ちには応えられない。それをどう伝えていいのかわからなくて反応できずにいると、ニコルが不思議そうに首を傾げる。

「ルーイ兄様、どうかしましたか?」
「……今日は大事な話があるんだ。屋上で食べようか」
「ルーイ兄様と二人で!?」
「俺もいるに決まっているだろう」
「ぶー。仕方ないですねえ」

 ライズが余計なことを言わなければ、二度と話さないだけで済む。黙っててくれ、とライズに耳打ちすると、ライズは頷いた。二人してお弁当箱を持って出入り口に行くと、ニコルがにぱっと笑って俺の手を引く。
 屋上は、近頃暑いからか人が少なく、でも今日は気持ちいい風が吹いていた。なるべく人から離れた場所に陣取ると三人で囲んでお弁当箱を広げる。これももう最後かと思うと苦しくなるけど、これから俺はニコルを傷つけるんだ。相応の対価だろう。
 お弁当を広げて食べ始めたニコルに向かって、俺は真剣な表情をして向かい合う。もぐもぐとおかずを咀嚼するニコルは首を傾げた。

「ニコル、話があるんだ」
「んぐ。昨日一昨日とライズ兄様の屋敷に泊まった話ですか? それならルーイ兄様のお母様から聞いてますよ」

 あっけらかんとした答えに俺は拍子抜けする。でも、セックスまでしたことは知らない。だから、俺は結論だけ告げることにした。

「そこで話し合ったんだ。それで俺は……申し訳ないけど、ライズを選ぶ。本当にごめん」

 ニコルの手から、ぽろっとフォークが落ちた。じわじわと涙が浮かんできて、しがみつかれる。

「どうしてですか!? ぼくが、ぼくが至らないからですか!? ルーイ兄様の好みじゃないからですか!?」
「色々あったし、ニーシェ家との関係も考えたんだけど……。俺、今両親に嫌われて追い出される寸前なんだよ。ニコルのことは友達として好きだよ。でも、その上の好きがライズにあるんだ」
「……っ! お前が、ルーイ兄様をそそのかしたのか!? どんな手を使ったんだ!」

 ニコルは見たこともない形相で大声を出してライズを睨んだ。遠くにいた生徒もこれはさすがに聞こえたようでなんだなんだというように様子をうかがってくる。

「そうじゃない。俺、この学園に来てからライズにすごく助けられたんだ。命だって助けてもらった。ニコルとは長い付き合いだけど、それが一番大きかったんだ。ニコルのことも、大切に思ってるよ」
「じゃあなんで……!」
「本当ならニコルのことを好きにならなきゃおかしいのはわかってる。でも、好きなんだ。どうしようもなく。それを昨日確信したんだ。ニコル、本当にごめん。愛してくれて、ありがとう」

 俺が弁当を床に置いて頭を下げると、ニコルはたじろいだようだった。そうだろう。前のルーイしか知らないニコルとしてはあのルーイが頭を下げるほど好きだという証拠なのだから。
 ニコルは、どうして、どうして、と呟いていたけど、俺の肩に手を置いた。

「頭を上げてください」
「どんな制裁でも受ける。だから、ライズだけは断罪しないでくれ」
「……本気なんですね」
「……うん」
「……ルーイ兄様、変わりましたね」

 その言葉にはっとして頭を上げると、涙をぼろぼろ流して笑顔のニコルと目が合った。そこには、恨みよりも諦めの様子が強くて、ぎゅ、と心を握られる。

「前のルーイ兄様だったら絶対僕に話さないで、謝りもしないでライズ兄様と付き合ってたと思うから。いざ問いただしたら、お前が悪いで終わり。でも、それでもぼくはよかったんです。ルーイ兄様は美しい。その肌に触れたくて、キスしたくて、それで……っ」

 ニコルは、純真な子だった。それを忘れていた。さっきは怒りで我を忘れかけたけど、本当はすごくいい子なんだ。それを振ったんだから相応の対価があって然るべきなのに、ニコルは許そうとしている。前を向こうとしている。俺もつられて泣いて、おそるおそるニコルの頭を撫でた。
 ニコルは気持ちよさそうに目を細めて、涙を流しながら頭を撫でる俺のシャツをぎゅっと握りしめた。

「よかった。素直に話して、謝ってくれて。そんな変わった兄様だから、ぼくも一瞬我を忘れるくらい怒れた。大丈夫。道が違くても、ルーイ兄様を好きだった気持ち、大事にします。これからは……たまに、お弁当を一緒に食べてもいいですか?」
「もちろん。断る理由なんてないよ」
「それと、王都に広まってる噂についても僕から手を回します。姉様が僕の味方だから、きっとイヴァリス家とニーシェ家の名前に傷をつかないようにしてくれるはずです」
「そんなことまで……」
「だから!」

 皺ができるくらいシャツをぐっと握りしめて、ニコルは笑った。

「幸せになってくださいね。絶対に」
「……うん」
「……俺も、悪かったな。ニーシェ家だっていうから、警戒してて」
「わかってましたよ。イレイソス家とのホームパーティのときに、ライズ兄様は勇敢で聡明な人間だ、とラグレス兄様がおっしゃってましたから」
「……そうか」

 ライズもまた、ニコルの頭を撫でる。俺たち二人に撫でられて、ニコルは笑った。

「ライズ兄様には負けちゃったけど……。頭を撫でられるのは、嫌じゃないです」
「これっきりだからな」
「はい」
「昼飯にしよう。いつまでも泣いてると昼飯が食えなくなるぞ」
「はい。ルーイ兄様を、よろしく頼みます」
「わかってるよ」

 ライズの返答はぶっきらぼうだけど、決して嫌ってのことじゃない。始めから認めてて、対応を見て優しくしている。ニコルもそれがわかるから、落としたスプーンを拾ってハンカチで拭くと、涙をぽろぽろこぼしながらお弁当を食べていく。
 ライズはそれを見て自分のお弁当に手をつけたけど、俺はニコルが最後の一口を食べ終わるまで、頭を撫でていた。
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