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第2章:風の少女と忘れられた空

第4話:風の止まった村

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森を抜けると、視界がぱっと開けた。
山あいに広がる小さな村。

けれど、そこには違和感があった。
――風が、吹いていない。

草も木も揺れない。
旗も洗濯物も、固く張りついたまま。

不自然なほど、空気は淀んでいた。

「……おかしいな」

リオは足を止めた。
額の汗がじわりと広がる。

夏の陽射しなのに、風がないせいで体に熱がこもっていく。

『この村……風を恐れている』

アウラの声が胸の内に響いた。
炎の精霊がそう言うなら、きっとただの偶然ではない。

リオが村に足を踏み入れると、すぐに視線を感じた。
人々は窓越しにこちらを見て、すぐに戸を閉める。

子どもが遊んでいたが、母親が慌てて抱えあげて去っていく。

(……僕のせいじゃないよね?)

炎を背負っていることを知られたわけじゃない。
この村全体に、何かの恐怖が染みついている。

そのとき――

「そこの君!」

背後から声がした。
振り返ると、白い布のマントを羽織った少女が立っていた。

長い髪がふわりと広がる。
……いや、揺れている?

風が吹いていないはずなのに、彼女の髪だけがゆるやかに踊っていた。

「君、旅人でしょ? こんなところに来るなんて、変わり者だね」

明るい声。
けれど、その瞳はどこか寂しげだった。

リオは思わず見とれてしまう。

「……君は?」

「わたし?ミナ。風の学院を出て、ちょっと旅してるの」

少女は胸を張った。
けれど次の瞬間、肩を落とす。

「――でも、この村に入った途端、風が止んじゃって。
  まるで空そのものを、怖がってるみたい」

リオは言葉を失った。
風を恐れる村。

炎を背負う自分。

まるで正反対の存在のような彼女が、今、目の前にいる。
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