記憶の中に僕は居る

八頭 鶏

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 その日僕、白雛芥子しろひなげし 良蓋りょうがいは彼女である糸繰いとくり 桑花そうかとデートに行っていた。
 白雛芥子「今日の昼食は何がいい?」
 桑花「そうね、偶には貴方が決めたらどう?ラーメンでも良いわよ」
 白雛芥子「え?ラーメンでも良いの!!」
 桑花「ええ、だって貴方がお洒落なお店の一つでも知ってるとは思わないもの」
 白雛芥子「そんな事は無いって」
 そう言って、つい意地を張ってしまった。
 桑花「じゃあ、お洒落なお店の名前一つでも言ってみてくれないかしら」
 もちろん、意地を張ってあんな風に答えたがお洒落なお店なんて全く知らない。
 白雛芥子「うっ」
 桑花「ほら、やっぱり知らないじゃない」
 ふと、お洒落なお店を調べる事をしなかった僕のこういう所で、彼女に愛想を付かされてしまうのかと考え、怖くなってしまった僕はつい聞いてしまった。
 白雛芥子「もしかして呆れてる?」
 言葉を撤回しようとしたが、彼女はすぐに答えた。
 桑花「そうね、呆れてるわ」
 白雛芥子「えっ‼」
 桑花「私は貴方のそんな所にも惹かれているという事にも気づかないなんて本当に呆れた」
 その言葉を聞いた時、周りを気にも留めず桑花に抱き着きたい気持ちに駆られたが、どうにかその感情を抑え込み桑花に話しかけた。
 白雛芥子「桑花」
 桑花「何かしら?」
 白雛芥子「今日の昼食は桑花の好きなもので良いよ」
 桑花「フフッそうね、じゃあ着くまでに私がお洒落な店をレクチャーしてあげるわ」
 白雛芥子「ありがとう桑花」
 桑花「あら、それは何に対してかしら」
 白雛芥子「それは……」
 桑花「良いわよ、言わなくても分かってるから」
 その後、桑花はフフッと悪戯的な笑みを浮かべ、それに見惚れて止まっていた僕は先を歩く桑花を追い掛けた。
 そうして僕等は信号に差し掛かる、といっても青信号であったが、不運な事に僕はトラックに轢かれてしまった。
 「残念な事ですが、白雛芥子さんは記憶喪失のようです」
 そう、誰かが言う声がする、意識がはっきりしてくると、目の前に医者らしき人が見えるので多分その人が言ったのだろう。
 とんだヤブ医者だ、僕は意識が無くなる前にトラックに轢かれた事だって憶えているし、何なら薄っすらとだが小学校低学年のことも憶えている。
 そう思い、文句を言おうとすると声が出ない、それどころか僕はこう言った。
 良蓋「記憶喪失……」
 そう僕が小さい声で呟いたのをのを聞いて、まさかと思い、もう一度声を出そうとするが、声は出て来なかった、今度は体を動かそうとしてみるが動かない、もしかして、この体は僕の体ではないのだろうか?
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