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市川浩平という男5
そうしてついにやってきた運命の日。
今美鳥さんは、俺の家でシャワーを浴びている。
(長かった。遂にここまでこぎ着けた……!)
いつも通りジムでトレーニングを終え、帰ろうとしていたところに美鳥さんがやって来た。ああ、今日はすれ違いかぁなんて残念に思っていたら、なんとなく美鳥さんの元気がないことに気付く。話を聞けばなんでも元彼がストーカー化していて、家の前に待ち伏せをしているそうだ。まぁ、美鳥さんの別れ際の潔さというか、無情なまでのストレートな感じは以前目の当たりにしていたので、これまで無事だった事の方が不思議な気がするんだけど。
「随分、積極的な彼女さんなんですね……」
「俺、ゲイなんだ。だから彼女じゃなくて彼氏、かな」
「えっ……」
これまでに美鳥さんの性的趣向に関して言及したことがなかったので、敢えて「彼女」と言ってみれば、美鳥さんは少しだけ目を伏せると隠すことなく正直に告げてくれた。俺は全く知らなかったというように驚いた顔をした後、とんとん拍子で進む現実にニヤけそうになってしまう口元を慌てて手で隠す。
完璧すぎるくらい整った状況。
これは100%美鳥さんの罠。もとい、お誘いということなのだろう。素晴らしいお膳立てに感謝しかない。
(これまでの童貞クンたちはどうだったか知らないけど……俺はこの状況を逆に使わせてもらいますよ)
それから後は、演技なのか本気なのか、わずかに遠慮した様子を見せる美鳥さんを、何かと理由をつけては言い包め、自分のテリトリーに誘い込むことに成功したのだ。
まさか到着してすぐに美鳥さんからシャワーを貸してくれと言われるとは思っていなくて、あからさまに動揺してしまったが、美鳥さん的にはそれも「童貞っぽい」と判断したようで、特に何も言われることなく、むしろ嬉しそうに浴室へと消えていった。
なんでもサービス精神旺盛な美鳥さんは、シャワーを浴びた後には俺の服を来てくれるそうだ。こちらからお願いすることなく、彼シャツならぬ彼Tシャツをしてくれるなんてサービス精神旺盛すぎないか?敢えて大きめサイズの物を選んで渡したっつーの。
正直、これから始まるだろうめくるめく時間に対する期待と想像だけで、既にちんこが臨戦態勢になりそうだ。こんなんじゃあ美鳥さんの元カレのことも笑ってられないな……とも思ったけど、こちらは男との経験はなくとも、元カノやセフレの皆さんのおかげで、それなりに経験は積んできているつもりなのだ。そこら辺の童貞クンたちにはテクニックやサイズでは負けない自信がある。
「あ、そうだ」
悶々としながらも、いかに美鳥さんをアンアン言わせるか妄想をしていると、ふと自分がバスタオルの準備をしていなかったことを思い出す。びしょびしょに濡れた美鳥さんが困りながら声をかけてくるのを待つのも良いのだが、初めから気が利かない奴だと思われるのも癪なので、俺は仕方なく浴室の方へと向かった。
……決して、磨(す)りガラス越しに美鳥さんの姿を拝みたいからとか、そんな邪(よこしま)な気持ちはないからな?本当だぞ?
『……っ、あ、あ、あ♡』
「………」
邪な気持ちなんてなかったつもりなのに。
バスタオルを片手に美鳥さんへ声をかけようとすると、流れる水音に紛れて、聞こえる淫らな喘ぎ声は現実だろうか。パシャ…ッ、パシャ…と、不自然に水が跳ねる音と一緒に「ふぅ、ン♡」と美鳥さんの鼻にかかった声が響く。
(こ、これは……まさか美鳥さん、オナってる……?)
想定外の出来事に、俺の頭には一気に血が上ってしまう。今すぐにでもこの扉を開けて、浴室へ飛び込み、一人淫らな遊びに耽っている美鳥さんに襲い掛かってしまいたい衝動を必死で抑え込み、極力平静を装った声色で扉の向こうへ声をかけた。
「……美鳥さん?」
「ひゃぁっ、い♡」
まさか声をかけられるなんて思っていなかったのだろう美鳥さんは、嬌声まじりの驚いた声をあげる。もしかして、吃驚した拍子にイってしまったかもしれないな……なんて想像すると、ゾクゾクとした快感が背筋を走り、俺のちんこは一層硬くなってしまった。
「いきなり声かけてすみません。バスタオル用意してなかったと思って……」
「っあ♡ うん、……っ♡」
「タオル、ここ置いておきますんで。好きに使ってくださいね」
「はぁっ、ありが、とう……っ♡ もうすぐ、出るから……」
「はい。……待ってますね」
ガラス張りの扉を隔てて俺と話を続けるうちに、徐々に落ち着きを取り戻しているように感じる美鳥さんの声。
ああ……はやく、とろとろに蕩けたあの人の尻に、俺のをぶち込んで泣かせたい。
一体どんな淫らな姿を見せてくれるんだろう。これまでたくさんの男を魅了してきた美鳥さんを満足させるために、俺も全力で挑まなければ。そうして、今までの男よりも俺が一番だって思ってもらわないと。他の奴に目移りしないぐらい、どろどろのぐちゃぐちゃにしてみせる。
俺は昂る気持ちを落ち着けるために大きく息を吐き出すと、後ろ髪引かれながら浴室から離れてリビングへと戻っていった。
・
・
・
「あ、あっ、待って……まって……っ」
「もう充分待ちました。ほら、上手。さすがっすね……!」
――― ずぱんっ
「ああああああっ♡」
美鳥さんとセックスを始めて、驚いたことが二つ。
一つ目は、美鳥さんの後孔が今までのセックスと比べ物にならないほど気持ちがいいということ。これは惚れた欲目もあるのかもしれないが、蕩ける蜜孔はぐねぐねと俺のちんこに纏わりついて、まるで全てを搾りとるかのように蠕動を繰り返す。素晴らしいまでの名器ってやつだ。
二つ目は、思っていたよりも美鳥さんがセックスに慣れていないということ。いや、慣れていないと言ったら語弊があるのかもしれない。ベッドに移動してから、俺に伸し掛かってくる美鳥さんはビッチそのもので、俺の股間をいやらしく撫でたと思ったら、嬉しそうな顔を隠そうともせずに、興奮に勃ち上がったちんこを咥え込んでみせたのだ。
喉奥まで深く、深く。ぐぽっ、くぷ……ぐぷぷ……っ、と音を立てながら両手や舌先を駆使して披露される卑猥な行為は、我慢出来ずに射精しそうになってしまうほど巧みだった。しかし、まるで玄人のような奉仕とは裏腹に、驚くくらい他者から与えられる快楽に弱かった。後孔に含ませた指でイイトコロを擦ってやれば、「イっちゃう」「いやだ」と甘い声で啼きながら俺の指をぎゅうぎゅうと食い締めてたっぷりと吐精するのだ。可愛すぎないか?
俺の身体にぎゅうっと抱きついては、快感を甘受している美鳥さん。先ほどからぷるぷると震えながら、俺の耳元で熱い息を溢している。そこからはもう、気付けばお互いに演技などやめていた。俺が童貞ではないことも白状したし、美鳥さんも優しいお兄さんの仮面を被るのをやめて素のままの姿で俺に話をしてくれる。
俺はこれまで散々焦らされに焦らされた鬱憤を晴らすかのように、美鳥さんの美しい身体を隅から隅まで思う存分堪能した。後背位で思い切り腰を動かせば、なんでこんなに気持ちいいのと喘ぎ、薄くなった精液をまるで、お漏らしみたいに溢れさせる。
「ひあぁぁあっ♡ う、うそ……っ、俺また、ぁうっ……!」
「イっちゃいました? 我慢出来ないの、かぁわいい♡」
「ひぅっん♡ あっ、あぁっ……」
俺の枕に縋るように抱きしめている美鳥さんは、顔を真っ赤にしてぽろぽろ涙を落としている。可哀想でいやらしくて、淫らで……ああ、この人はなんでこんなに可愛いんだろう。
「や、あぁん……っ♡ も、やだぁ…やめ、やめてよぉ……っ!」
「今までどれだけ淡白なセックスしてきたんですか? これから、ですよ」
あんなに積極的なアプローチをしてきてくれていたのに。いざセックスになるとこんなにも及び腰になるなんて面白い。逃げようとする美鳥さんを押さえ込み、グイッと細い腰を引き上げて、トン、トン、トン、とリズムを刻むように一定の間隔で肉棒を叩き込む。動きだけは優しいそれを美鳥さんはいたく気に入ったようで、後孔をきゅんきゅんとさせながら盛大に身悶えていた。
俺のやり方だとどうも快感が強すぎるようで、いつまでも涙を流し続ける美鳥さんは最高に可愛かったけど、少しくらい優しくしてあげないと嫌われてしまうかもしれない。そう思った俺がこれまでのセックスではどうしていたのか問いかけてみれば、いつもは騎乗位だったと泣きながら語る美鳥さんを背面座位で好きなように動くように促す。すると力の入らない足腰でへこへこと腰を振る、もっともっと可愛い美鳥さんを拝むことができた。
「ん……っふぅ、あ♡ あ、あぁんっ、あんっ♡」
「自分の気持ちいところばっかり擦っちゃって。俺はもっと奥まで突っ込みたいなぁ」
「やぁ♡ だめっ♡ ここ……、ここが気持ちいいのっ♡」
「うん。でも奥はもっと気持ちいですよ?」
――― ズッ……ぷんっ
「ひぁぁあぅっ♡」
そこからはもう、お察しの通りで。
前に後ろに美鳥さんを転がしながら、好き勝手に柔らかく蕩けた後孔を犯しつくす。「もうイきたくないぃ♡」って言いながら何度も空イキして、最終的には潮を吹いて気絶した美鳥さんを見守って、やっとこの人が自分の手の中に落ちてきたのだと実感した。
くたりと力なくベッドに沈み込んだ美鳥さんの髪をそっと撫でながら、俺は今まで生きてきた中で一番優しい顔をしていたと思う。
「……もう、離さないですよ。覚悟しててくださいね。美鳥さん……」
もし美鳥さんが起きていたら、その言葉を聞いてまた泣いたのだろうか。でも、もう遅い。どんなに泣いても嫌がっても、今の俺は美鳥さんを諦めることなんて出来ないから。
まずは身体を俺なしではいられないくらい、ぐずぐずに溶かして。そこから心も手に入れてみせる。
次に美鳥さんが目を覚ましたら、俺たちの関係は一体どんな風になっているのだろうか。楽しくなりそうな明日からの生活に胸を弾ませながら、俺は愛しい人の隣で横になり、目を瞑るのだった。
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