ドグマの城

やなぎ怜

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東風解凍(はるかぜこおりをとく)

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 目が覚めたら記憶がなかった。

 そんな、奇妙奇天烈な体験に遭遇したチカだったが、意外にも冷静さを失わず、まず己の手を確認した。

 ごく普通の、まだ若い、黄色人種の女の手であった。

 そこから推測できるのは、己の名前以外、どこのだれなのか思い出せなくとも、知識――黄色人種だと判じれる記憶など――は失われていないということであった。

 季節は冬のただ中だろうか。布団の中、あしもとを探ればタオルに包まれた湯たんぽの存在を確認できた。

 吐いた息は白くはならないものの、上半身を布団から出せば肌寒さに震える。

 部屋の中央部に置かれたストーブは煌々と橙色の光を放っている。それでもこの部屋はそれなりに寒かった。

 ベッドのそばに備えつけられているナイトテーブルの上には、ご丁寧に水差しとガラスのコップが置かれている。

 チカは恐る恐るコップを手に取って、しげしげと眺めた。どこからどう見ても、ガラスのコップで、なんの変哲もない。

 喉が渇いていることに気づいたが、果たしてこれは手をつけても大丈夫なものなのだろうか。

 そう思案しているとチカのいる部屋――目立つ家具はベッドだけなので恐らく寝室だろう――の扉が開いた。

「あっ、起きてる!」

 元気よく叫んだのは真っ白な髪の、少年なのか少女なのか判断に迷う子供だった。

 子供はドタドタと大股でチカのいるベッドに近づくと、ぐっと顔を近づけてその目を覗き込んだ。

 突拍子のない子供の行動にチカはおどろき、目を見開く。子供の瞳は血のように赤かった。

 いや、違う。実際に血の色が透けて見えているのだ。恐らく、子供はアルビノというやつなのだろう。

「チカ、オレのこと覚えてる?」

 子供の一人称を聞いて、チカは男なのかなと思ったが、まだ判ずるには早いだろう。

 声は高く少女のように聞こえるが、見た目は一三~四歳に見えるので、声変りがまだという可能性もあった。

 チカは子供を観察する。髪はショートカットでネコのような釣り目。目鼻立ちはハッキリとしていて整っている。

 そして真っ白な髪と同じ、白いワンピースタイプの服を身にまとっていた。

「……残念ながら」

 どういった感情を込めればいいのかわからず、戸惑いを前面に押し出しつつチカは簡潔な返事をする。

 アルビノの子供は「そっかあ。やっぱりね」と意味深な言葉を口にするが、あまり落胆してはいない様子だった。

 雨雲が立ち込めたので雨が降ってきた。当たり前のことが当たり前に起きた。……子供の口調はそういうものと同じに思えた。

「オレはマシロ。この“城”にはチカとオレ以外に五人いる。つまり、全部で七人いる」
「“城”?」

 ストーブの光に照らされて見える壁は、石造りであることがありありとわかる。床にはカーペットが敷いてあるのか、そこまで石で出来ているのかまではわからない。

 窓は鎧戸が閉じられているのだろうか。とにかく暗い。それでも隙間から光が漏れ入ってきているから、今が夜でないことだけはわかった。

「えーっと……ここのこと、みんな“城”って呼んでる」
「大きいんだ」
「それはかなり」

 会話がぎこちないのは、己が記憶喪失であるせいなのかとチカは考えたが、どうもマシロと名乗った子供が、他人にアレコレと説明するのが苦手なだけのようだ。

 マシロは顔をわずかに強張らせて、かすかにその真っ赤な目を泳がせる。

「えーっと……と、とりあえず他のやつら呼んでくる! チカはそのままベッドにいて!」

 そう言い置いてつむじ風のように去って行ったマシロは、言葉通りに五人の子供たちを引き連れてすぐに戻ってきた。いずれも、白い服を着ている。

 ほとんどが黄色人種の一〇代ごろの子供だったが、五人のうち唯一ハッキリと少女とわかるひとりは、明らかに白人めいた容姿であった。

「起きたんだ」

 マシロを含めて六人の中で一番年嵩に見える少年が、ぶっきらぼうにそう言い放つ。

 なぜそれほどまでに苦々しそうな顔をしているのか、チカにはわからなかった。

「あ、ホントだ。起きてる。死ななくてよかったな」

 続いてそう言ったのは人懐こそうな顔をした、六人の中で一番背の高い少年だ。しかしすぐにマシロの肘が少年の脇に刺さった。

「――ってえ!」
「言い方!」

 マシロは少年をたしなめたあと、「ごめんね」とでも言いたげにチカを見る。

 チカはと言えば、気分を害するよりも先になにがなにやらという気持ちでいっぱいだったので、特に少年の言動にはなにも感じなかった。

「チカ、記憶ないんだって? それじゃあ自己紹介からすっか。おれはコーイチ。改めてヨロシク」

 混沌とした場を仕切り直したのはコーイチと名乗った少年だ。

「俺はアオ。まあ、これからもよろしく」

 続けて先ほどマシロに小突かれた少年が、やはり人懐こそうな微笑を浮かべて名乗る。

 しかしそのセリフはどこか冷めた響きを伴っていた。

 これまでのマシロの少ない言葉から察するに、チカたち七人は“城”とやらで共同生活を送っているのだろう。

 だからひとまず「よろしく」しておく――。そんな無機質さをチカはアオのセリフから感じ取ったが、単なる被害妄想でもないだろう。

 事実、マシロは顔をしかめてアオを見上げた。見たところ、マシロは六人の中でもっとも背が低いので、自然とそうなるのだ。

 しかしマシロからのどこか呆れた視線をちょうだいしても、アオは微笑を崩さない。それどころか、今にも鼻歌をうたいだしそうな雰囲気すらあった。

 どうにも、一筋縄ではいかない相手のようだ。

「じゃあ次は俺たちか? ……俺はユースケ。こっちはササ。まあまあよろしくしてやってくれ」
「……よろしく」

 一番後方に固まっていたユースケとササが名乗る。正確にはユースケしか名乗っていないが、今はそれを気にしているほどの余裕はチカにはなかった。

 ひときわ目を引くのはササの容姿だった。陶器人形のような精緻な美しさを持った顔立ちは、白人然としているので、六人の中でも目立つ。

 そしてなにより――胸が大きい。マシロと同じ白いワンピースタイプの服の胸元が、明らかに押しあがっている。

 チカの胸のサイズはごくごく普通で、マシロなどはまったくの絶壁であったから、そういう意味でもササの容姿は目を引く。

 思わずササの胸元を凝視しそうになったチカは、どうにかその好奇心を押しとどめて彼女の顔だけを見た。

 ササの表情はまったくの「無」だった。なにを考えているのやらさっぱりわからない。チカに対する好悪の感情も、もちろんわからない。

「おい、お前も名乗れよ」

 コーイチが視線で促すのは、仏頂面を隠そうともせず、腕を組んで突っ立っている年嵩の少年だ。

 マシロが呼んできた五人の中で、一番はじめに口を開いた彼は、意外にもそれからずっと黙りっぱなしだったのである。

 年嵩の少年はコーイチをちらりと横目で見やったあと、深いため息のような声を出す。

「……アマネ」
「もっとなんか言うことあるんじゃねえのか?」
「なにを言うって? こいつには記憶がないのに」
「……お前なあ……」

 コーイチは呆れた目をアマネに向ける。アマネはそれを意に介した様子はなく、ふん、と鼻を鳴らした。

 どうにも、アオとは違った意味で一筋縄ではいかない人間のようだ。じっとチカを見る視線がどこか手厳しく感じるのは、決してこちらの思い込みなどではないはずだ。

 しかし理由はわからない。なぜならばチカにはそれまでの、彼ら彼女らと過ごしていたであろう記憶がなんにも残っていないのだ。どういったリアクションを取るのが適切なのかすらわからず、霧の中で立ち往生しているも同然であった。

「ところで、なんで私が記憶喪失なのか聞いてもいい感じですか?」

 チカは迷った末にそういう切り口で始めることにした。

 六人六対の視線が、ベッドで上半身を起こした状態のチカへと集まる。思わず「うっ」とひるんでしまいそうになる。

「詳しくは知らない」

 意外にも答えてくれたのは仏頂面をしたアマネであったが、その回答はチカが望んだものとはちょっと違っていた。

「え? 気がついたら記憶喪失になっていたんですか? 私」
「まーそんなとこ」

 今度はアオが、面白げなオモチャでも見るような目をして答える。

「それよりも丁寧語やめたら?」
「初対面だったので……でもやめたほうがいい感じですかね?」
「うん。鳥肌立つ」

 アオは気安げな調子で話す割に、辛辣だった。

 そんなアオの脇に再びマシロの肘が刺さる。

「言い方ってもんがあるでしょ! ごめんチカ。アオっていつもこんな感じでさ……悪いやつでは……うん。そんなに悪いやつじゃないから!」
「……お前が『言い方』とか言う~?」

 しかしアオにはまったくダメージはないらしく、彼はヘラヘラと笑っている。しかし笑んで見えるのは口元だけで、目だけはじっとチカを観察するような鋭さを帯びていた。

「チカは記憶失くしちゃって不安かもしれないじゃん。あんまり変なこと言わないでよ」

 どうにも六人の中でもっとも常識的な態度が取れるのはマシロのようだ。それ以外の五人はチカにあまり興味がないのかもしれない。少なくともチカはそう感じた。

 実際にユースケとササのふたりは暇を持て余しているような態度だし、アマネは相変わらず「この世で楽しいことなどなにもございません」とでも言いたげな仏頂面だ。

 マシロの次に常識や他者を慮る気持ちがありそうなのはコーイチだろうか。「こんなところでモメるなよ」とマシロとアオの仲裁に入る。

「夜がくる前にチカにひと通り説明しとかねえと危ねえ」
「アマネが説明すればいいじゃん。同じ部屋なんだからさ」

 コーイチの言葉の半分は、チカには理解できなかった。しかしそれよりも聞き捨てならないことをアオが言ったので、チカは思わずアマネのほうを見た。

 アマネは、眉間にしわこそ寄っていないものの、相変わらず難しい顔をしている。

「……ルームメイト制?」
「ってわけじゃないんだけど。夜にひとりだと心細いから、自然とそういう感じになってるんだよね。ちなみにオレとコーイチとアオが同室で、あとは残りふたり……ユースケとササが同室」

 ササは無表情ながら眠たそうな顔をしているし、ユースケにいたっては小さくあくびをしている。

 チカは視線をふたりからマシロに戻す。その途中でアマネを見たが、彼は明後日の方向に視線を飛ばしていた。

「ええっと。夜は『危なくて心細い』んだ? ……それは、どういう……?」

 チカは己と仲良くする気がなさそうなアマネのことはひとまず脇に置いておくことにした。

 代わりにコーイチとマシロの言葉から気になった部分を問う。

「えーっと……なんかね。なんかいるんだよね」

 まったく説明になっていないマシロの言葉に、隣に立つアオがニヤニヤと笑う。マシロはどう説明するか考えるのに必死らしく、アオの様子には気づいていないようだ。

「幽霊的な……? 幽霊じゃないと思うんだけど。まあ、レイ時ごろから朝方までは、寝室からは出ない決まりなんだ。破っても罰則があるとかじゃないんだけど」
「トイレとかはどうするの?」
「この部屋にもあるよ。暗くてわかりづらいかもしれないけど、ほら、あそこ」

 マシロが指さす方向へと視線を向ければ、年季の入った木製の扉があることに気づく。

「水洗だよ!」

 どこか自慢げなマシロに対し、チカはどういう反応をすればいいのかわからず、あいまいにうなずくにとどめた。

「……ところでこの……“城”? には大人っていないの?」
「いない。外にはいるけどね」
「じゃあ……なんで私たちは“城”? にいるの?」
「えーっと……理由はいろいろ。でもたぶんだれもチカがここにいるハッキリとした理由は知らないんじゃないかな。少なくともオレは聞いてないし」
「あとは……」
「うん」
「マシロの性別気にならない?」

 にやりと笑ってアオが聞く。その脇に三度みたびマシロの肘が刺さる。

 それを見たチカはあわてる。実際のところマシロの性別などどうであろうといいのだが、気になっていたことは事実だ。そんな思考を見透かされたのかと焦ってしまう。

「いや、別に。特には」
「えー? じゃあマシロどっちだと思う? 男? 女?」
「ええっと……」

 言い淀むチカを見て、アオは笑いながら「教えてやれよ」とマシロに言う。マシロはそんなアオへ鋭い視線を寄越した。

「いや、男でも女でもいいんだけど……うん」
「……マシロは女だ」
「わっかんねえよなー。胸ないしショートカットだし『オレ』って言うし!」

 性別を教えてくれたのはコーイチで、アオはむくれているマシロの頭を大きな手で押さえている。

「ちなみにマシロが『オレ』って言ってるのはコーイチと俺のマネっこな」
「コーイチのマネであってアオのマネではない」

 マシロはムッとした顔のまま訂正する。アオはそれに対してニヤニヤとした笑みを口元に浮かべる形で答える。

「なんか話がそれちまったな。チカ、他に聞きたいことあるか? あと他のやつらは言っときたいこととか」

 コーイチがそう言ってぐるりと周囲を見渡す。

 アマネは先ほどから変わらずで、それはユースケとササも同じだった。ユースケなどは露骨に「早く終われ」と顔に書いてあるのがわかる。ササは無表情なのでどう思っているかはわからない。

 チカと同室者だと言うアマネなど、色々とこちらに言っておくべきことがありそうだが、口を開く様子はなかった。これから上手くやっていけるのか、かなり心配になる。

 それが顔に出ていたのか、アオにむくれた顔を向けていたマシロが、今度は鋭い視線をアマネに向ける。

「アマネ、もっと素直になんなよ。チカにいろいろ、言っておきたいこととかあるでしょ」
「言っておきたいこと?」
「ほら……同室者なんだしさ。なんか……あるでしょ」
「えっと、私も聞いておきたいかな。みんなに関する記憶、丸ごとないからやらかす前に色々と教えてくれたら助かる」

 アマネの目とかち合った。色素の薄い、薄茶色の目だ。やはりどこか、苦々しげな感情を帯びている。

「じゃあ今後一切おれの命令には逆らうな」
「……え?」
「返事は『はい』だ」
「え?」
「『はい』って言え」
「はい……?」

 チカはそれまでアマネは寡黙で大人しめな人間だと推測していた。しかしそれはどうも違うようだ。

「妙なことしやがったら夜だろうと部屋から叩き出すからな」

 前途多難。そんな言葉がチカの脳内で反復横跳びをし始めた。
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