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わたしが目を覚ましたことで医者や神官などがバタバタと出入りをして、命に別条がないと判断されたあと、部屋には再びわたしとモチくんだけが残された。
そしてようやく気づく。ベッド横のサイドチェストの上に、クロスグリのジャム瓶が置かれていることを。
「あ、これがモチくんのオススメ?」
「……はい。僕が一番美味しいと思ったクロスグリのジャムです。聖乙女様のお口に合うかはわかりませんが……」
「そっか。楽しみにしよっと」
「聖乙女様……どうして――」
わたしはモチくんの口の前へ手のひらを突き出した。
「それは、言わないで欲しい」
「けれど」
「わたしだって本当はモチくんに『なんで天使ちゃんをかばったの』って聞きたかった」
「それは、それが、僕の仕事ですから」
「うん。それはわかってる。……でも、思わず聞きたくなっちゃったんだ。嫉妬に駆られて、ね」
「――え?」
モチくんがびっくりした顔をしているのがわかった。
「どうしても、モチくんが死んじゃうのはイヤだったんだ。どうしても、どうしてもね」
「それは、うれしいです。でも」
「そうしなくていいって、言いたいのはわかるよ。でも、言わせて欲しい。わたし、モチくんのことが好きだから。死んで欲しくないくらい、わたしの命と交換してもいいくらい、好きだから」
「だ、駄目です」
わたしは「あ、断られちゃったか」と思った。モチくんの反応は半ば予想していたものであったから、おどろきはなかった。
けれど――
「聖乙女様が死んでしまうのは、駄目です。そんなことになったら僕は……後を追ってしまう」
泣きそうな声でモチくんが口にした言葉は、わたしにとってはひどく意外なものだった。
「なんだ、わたしたち相思相愛じゃん」
照れ隠しにそんなことを言えば、モチくんの頬にさっと朱が差したのがわかった。
とはいえ、相思相愛だなんてモチくんが容易に認めないことはわかっていた。
でも、思ったのだ。思ってしまったのだ。わたしたちが相思相愛だってことを、モチくんに認めさせたいと。
そのためには手始めに――
「ねえモチくん、美味しい塩漬けタラコの情報なんだけど――」
そしてようやく気づく。ベッド横のサイドチェストの上に、クロスグリのジャム瓶が置かれていることを。
「あ、これがモチくんのオススメ?」
「……はい。僕が一番美味しいと思ったクロスグリのジャムです。聖乙女様のお口に合うかはわかりませんが……」
「そっか。楽しみにしよっと」
「聖乙女様……どうして――」
わたしはモチくんの口の前へ手のひらを突き出した。
「それは、言わないで欲しい」
「けれど」
「わたしだって本当はモチくんに『なんで天使ちゃんをかばったの』って聞きたかった」
「それは、それが、僕の仕事ですから」
「うん。それはわかってる。……でも、思わず聞きたくなっちゃったんだ。嫉妬に駆られて、ね」
「――え?」
モチくんがびっくりした顔をしているのがわかった。
「どうしても、モチくんが死んじゃうのはイヤだったんだ。どうしても、どうしてもね」
「それは、うれしいです。でも」
「そうしなくていいって、言いたいのはわかるよ。でも、言わせて欲しい。わたし、モチくんのことが好きだから。死んで欲しくないくらい、わたしの命と交換してもいいくらい、好きだから」
「だ、駄目です」
わたしは「あ、断られちゃったか」と思った。モチくんの反応は半ば予想していたものであったから、おどろきはなかった。
けれど――
「聖乙女様が死んでしまうのは、駄目です。そんなことになったら僕は……後を追ってしまう」
泣きそうな声でモチくんが口にした言葉は、わたしにとってはひどく意外なものだった。
「なんだ、わたしたち相思相愛じゃん」
照れ隠しにそんなことを言えば、モチくんの頬にさっと朱が差したのがわかった。
とはいえ、相思相愛だなんてモチくんが容易に認めないことはわかっていた。
でも、思ったのだ。思ってしまったのだ。わたしたちが相思相愛だってことを、モチくんに認めさせたいと。
そのためには手始めに――
「ねえモチくん、美味しい塩漬けタラコの情報なんだけど――」
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