3 / 3
後編
しおりを挟む
「――アルジャノン」
「は、はい」
真実薬を飲んだ証である、妙にきらきらとした目をオフィーリアから向けられて、アルジャノンは思わず居住まいをただす。次にどんな言葉が出てくるのか、アルジャノンにはわからなかった。いや、このときのアルジャノンは、わかりたくなかったのかもしれない。もし拒絶の言葉が出てきたら、耐えられないからだ。
しかし、だれよりも愛するオフィーリアから出てきた言葉は……。
「愛してる」
「――え」
「だれよりも、どんなひとよりも、世界で一番……ううん、この宇宙で一番、わたしがアルジャノンを愛してる」
きらきらとしたオフィーリアの瞳は、少しだけ潤んでいるように見えて、アルジャノンは思わず生唾を呑み込んだ。しかし劣情に駆られている場合ではないと、ハッと我に返る。
「オフィーリア……」
「アルジャノンがわたしのことを愛していなくても、愛さなくなっても、たぶんわたしはアルジャノンに恋し続けるんだと思う」
「オフィーリア……ま、待ってくれ……!」
顔が熱い。熱烈なオフィーリアの言葉に釣られるように、アルジャノンは耳から首まで顔が朱色に染まる。たまらなくなって、気恥ずかしい気持ちもいっぱいで、オフィーリアから目をそらしそうになるが、ぐっと我慢した。
「これが、わたしの本心。……わかってくれた?」
「う、うん。はい。ワカリマシタ……」
今にも暴れ出さんばかりに心臓は高鳴り、くねくねと踊り出したいくらいうれしい気持ちに満たされて、アルジャノンの語尾は固くなった。
「怒ってないのは本当。悲しかったけどね」
「う……ごめん……」
「許す許さないの話じゃないってのは、惚れた弱味だから。心底惚れちゃってるんだ、アルジャノンに。だから怒れないし、許す許さないの話にもならない」
「オフィーリア……!」
アルジャノンは限界を迎えた。そのままオフィーリアに飛びかからんばかりに迫って、その華奢な肩を抱き寄せ、己の両腕の中に閉じ込める。
「私も貴女のことを愛している! だれよりも、なによりも、貴女を愛している……世界が滅んだって愛し続ける」
「……大げさ」
「本気で言っているよ。それくらい……言葉では言い表せないくらい、貴女が好きなんだ。恋してるし、愛してる。……だから、本当にすまないと思っている……不誠実だったし、不甲斐ないせいで貴女を悲しませてしまった」
「……わたしも、いろいろ聞いたんだ、アルジャノンのこと。いろいろ苦労してたってことも。だから、スパイの件とか怒ってないし。そもそも、わたしも帝国からしたら裏切り者だし」
「それは貴女が気にすることじゃない……」
「アルジャノンって過保護だよね。そういうところ、ちょっとウザいときもあるけど」
「『ウザ』……?!」
「でも、だいたいうれしいから、そのままでいいよ」
アルジャノンがきつく抱擁しているオフィーリアの口元が緩んだのが、気配でわかった。
「そのまま……わたしに愛をささやいて」
「もちろん。いくらでも」
「それから、さっき言ってたカフェテリアに行きたい」
「もちろん、連れて行くよ」
「それから……」
オフィーリアがみじろぎすると同時にその小さな頭が動き、アルジャノンの耳にオフィーリアの唇が近づく。
「悲しかった気持ちが忘れられるくらい、今夜は……激しくして?」
アルジャノンはオフィーリアには絶対にかなわないと悟る。同時に、そのおねだりに対する答えは、言うまでもなく決まっていた。
「は、はい」
真実薬を飲んだ証である、妙にきらきらとした目をオフィーリアから向けられて、アルジャノンは思わず居住まいをただす。次にどんな言葉が出てくるのか、アルジャノンにはわからなかった。いや、このときのアルジャノンは、わかりたくなかったのかもしれない。もし拒絶の言葉が出てきたら、耐えられないからだ。
しかし、だれよりも愛するオフィーリアから出てきた言葉は……。
「愛してる」
「――え」
「だれよりも、どんなひとよりも、世界で一番……ううん、この宇宙で一番、わたしがアルジャノンを愛してる」
きらきらとしたオフィーリアの瞳は、少しだけ潤んでいるように見えて、アルジャノンは思わず生唾を呑み込んだ。しかし劣情に駆られている場合ではないと、ハッと我に返る。
「オフィーリア……」
「アルジャノンがわたしのことを愛していなくても、愛さなくなっても、たぶんわたしはアルジャノンに恋し続けるんだと思う」
「オフィーリア……ま、待ってくれ……!」
顔が熱い。熱烈なオフィーリアの言葉に釣られるように、アルジャノンは耳から首まで顔が朱色に染まる。たまらなくなって、気恥ずかしい気持ちもいっぱいで、オフィーリアから目をそらしそうになるが、ぐっと我慢した。
「これが、わたしの本心。……わかってくれた?」
「う、うん。はい。ワカリマシタ……」
今にも暴れ出さんばかりに心臓は高鳴り、くねくねと踊り出したいくらいうれしい気持ちに満たされて、アルジャノンの語尾は固くなった。
「怒ってないのは本当。悲しかったけどね」
「う……ごめん……」
「許す許さないの話じゃないってのは、惚れた弱味だから。心底惚れちゃってるんだ、アルジャノンに。だから怒れないし、許す許さないの話にもならない」
「オフィーリア……!」
アルジャノンは限界を迎えた。そのままオフィーリアに飛びかからんばかりに迫って、その華奢な肩を抱き寄せ、己の両腕の中に閉じ込める。
「私も貴女のことを愛している! だれよりも、なによりも、貴女を愛している……世界が滅んだって愛し続ける」
「……大げさ」
「本気で言っているよ。それくらい……言葉では言い表せないくらい、貴女が好きなんだ。恋してるし、愛してる。……だから、本当にすまないと思っている……不誠実だったし、不甲斐ないせいで貴女を悲しませてしまった」
「……わたしも、いろいろ聞いたんだ、アルジャノンのこと。いろいろ苦労してたってことも。だから、スパイの件とか怒ってないし。そもそも、わたしも帝国からしたら裏切り者だし」
「それは貴女が気にすることじゃない……」
「アルジャノンって過保護だよね。そういうところ、ちょっとウザいときもあるけど」
「『ウザ』……?!」
「でも、だいたいうれしいから、そのままでいいよ」
アルジャノンがきつく抱擁しているオフィーリアの口元が緩んだのが、気配でわかった。
「そのまま……わたしに愛をささやいて」
「もちろん。いくらでも」
「それから、さっき言ってたカフェテリアに行きたい」
「もちろん、連れて行くよ」
「それから……」
オフィーリアがみじろぎすると同時にその小さな頭が動き、アルジャノンの耳にオフィーリアの唇が近づく。
「悲しかった気持ちが忘れられるくらい、今夜は……激しくして?」
アルジャノンはオフィーリアには絶対にかなわないと悟る。同時に、そのおねだりに対する答えは、言うまでもなく決まっていた。
応援ありがとうございます!
55
お気に入りに追加
14
この作品は感想を受け付けておりません。
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる