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素直になれない
しおりを挟むきっかけはささいなことだった。周りから見たら、バカみたいに映るかもしれない。
だけどとにかく俺と賢一は今、絶賛喧嘩中だ。
「また喧嘩してんの?いい加減折れなよどっちか~」
幼なじみの直哉はいつも俺たち二人の喧嘩に首を突っ込んでは、やれやれ…という顔でバカにしてくる。別に仲裁したりはしてくれない。
「あっちが折れない限り俺だって折れられねーよ」
学食の人気メニュー、げんこつ唐揚げを頬張りながら俺は答える。
「今回はなんなの?ま、どーせ大した理由じゃないんだろうけど」
「俺が風呂入る時はまず身体洗うだろって言ったら、あいつはシャンプーすんのが先だって言い張って、そんで揉めた。」
「あっきれた!マジでどっちでもいいじゃん!早く仲直りしなよ!」
直哉は心底呆れたように鼻で笑うと、バシッと俺の背中を叩いてくる。
「どっちでもよくねーよ!絶対にシャンプーが先の方が効率がいいに決まってる」
いつから会話を聞いていたのだろうか、賢一はどこからともなく現れ、俺たちの向いの席に座ると若干キレ気味に言った。
「効率がいいってのはお前の主観だろ?根拠を出せよ、根拠を。俺からしたら体を先に洗った方が効率がいいと感じるんだが?」
ぐぬぬ…と言った様子で賢一は口をつぐむ。
昔からこいつには口喧嘩で負けたことはない。
「うるせーな!どう考えたってシャンプーが先だろ!根拠なんかなくても俺は間違ってない!直哉はどうなんだよ!?」
「えっ、僕?うーん…まぁ…その時のみんなの意見を聞くっていうか、感じるっていうか…」
急に話を振られた直哉は、要領を得ない意味不明なことを言い出したが、まぁいつものことだ。
俺、翔太と、賢一、直哉は、小学校からの幼なじみだ。小・中・高とずっと一緒で、まさか大学まで同じになるとは思っていなかったが、いわゆる腐れ縁というやつだろう。
昔から直哉は周りとは違う少し不思議な雰囲気を持っており、俺と賢一とのやり取りには一線を引いている印象だった。
「みんなって誰だよ!風呂入る時なんて大体一人だろうが!!」
賢一の短気は幼い頃からだ。
そろそろ過去の話を持ち出すぞ。こいつはいっつもそうだ。自分が劣勢になると関係ない昔の話を引き合いに出して論点をずらそうとするんだ。
こいつの思考パターンなんて手に取るようにわかる。
「大体なぁ…お前はいつも俺にばっかり当たりが強くねえか!?直哉にはそんな詰めるような言い方しないくせによぉ!」
またいつかの話を持ち出してわめき散らすに違いない、と思った俺の予想は裏切られた。
当たりが強い?別にこいつと直哉で極端に態度を変えているつもりはないが…
「俺はさぁ、お前と普通に話したいのに、お前が喧嘩ふっかけてくるんだろ毎回毎回!何でそうなるんだよ…」
いつもの威勢はどうしたのか、賢一はすっかり落ち込んだような声色で目にはうっすら涙さえ浮かべている。
まずい。よくわからんが賢一の様子がいつもと違う。
何だ?女にでも振られたか?
「どうしたんだよお前、女にでも振られたのか?」
思ったことが直接口から出てしまった。
直哉は「あ~あ」といった感じで天井を見上げる。
何だよ。何かまずいことでも言ったか??
「そういうところだよ!!ガキの頃からお前は変に自信たっぷりのくせに実は鈍感だよな!もう知らねーよ!」
とうとう賢一は泣き出した。
かと思うとまだ飯が残っているというのに、走ってどこかに行ってしまった。
呆気にとられながら走り去る賢一を見つめる俺に、直哉は諭すように話し出す。
「翔太、あのね?前から言おうと思ってたけど、実は賢一は…」
それから一週間、俺は賢一のことで頭がいっぱいだった。
自分でさえ自覚していなかった感情に、気がついてしまったからだ。
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