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梶塚家にご挨拶1
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「祥子さん、緊張してるんですか?」
「とっ、当然でしょう!?」
初めまして、金森祥子です。こんにちわ。
そんなありきたりで無難な挨拶を何度も何度も口ずさんでいるのだけれど、ちゃんとうまく言える自信が湧いてこない。
そもそも、金森祥子と自己紹介していいのかもわたしはちょっと不安に思っている。
なぜかと言えばわたし、三日前までは金森祥子だったのだが、なんと驚くべきことに今わたしの隣にいる二十歳も年下の若い男の子、梶塚く……郁真くんと――正直今でも信じられないのだけど――結婚したのだ。
あまりにも突然な、想定外のことで、この四日間何度も梶塚……郁真くんに確認しているくらい信じられないし夢なんじゃないかしらとも今でも思っている。
いったい誰が信じられるというのか、理解できるというのか、教えて欲しい。
約一年前、突然プロポーズを自分の生徒にされたと思ったら、その後全くなんの接触も会話も何事もなく、生徒は卒業。あれは夢か幻だったのかと深く思い悩んでいたのに、再び突然ひょっこり現れた生徒じゃなくなった彼に改めてプロポーズされてしまったのだ。
もう色々と、色々な意味でパニックになっていたわたしは感情の赴くままにそのプロポーズを受けてしまった。
そのことに後悔はないと言ったら嘘になる。
本当は考えるべきことが沢山あったはずなのだ。
わたしはもう四十路手前で、梶塚くんはまだまだ未来ある十代。
どんな結論を出すにせよ、これからのことを考えれば慎重に、大人として、元先生としても導いてあげなければならなかったはずのわたしが、何も考えずただ感情のままに行動してしまった。
とても情けないし、恥ずかしいし、本当にこれで良かったのかしら?とも思っている。
しかしだ。
しかし、そんなことをまともに考えられるようになったのは昨日だ。
三日前の、プロポーズの後。
その時のわたしはまだ、パニックの最中にいた。
その間に婚姻届けを書かされ、わたしの実家に挨拶に行き、役所に行き、婚姻届けを提出。
その後、なぜか梶塚くんに把握されてた午後からの職務を予定通りできたのかどうかもわからないまま夜になり、午前中の出来事は夢かなんだったのかとぼんやり帰宅すると梶塚くんがいて、再びパニック。
とにかく落ち着くために梶塚くんと家に入り、そこでまたパニック。
夫婦の仲となってしまった梶塚くんに宥められて、ようやく話せるようにはなったものの、完全に梶塚くんのペースに吞まれていて、気が付けば引っ越しの準備をすることに。
翌日、知らない間に寝ていたわたしを起こしたのは梶塚くんで再びパニック。
梶塚くんの作った美味しい朝食を食べさせられて、美味しいお弁当片手に梶塚くんに見送られながら学校へ行き、その日の職務を終えて帰宅するとやっぱりいる梶塚くん。
初日、彼が家に泊まり込んだと思っていたら実は通ってたと知り、夜遅くに出歩かせるのも悪いとなんだかんだで泊まってもらうことになり自分で誘っておいてのプチパニック。
そんな醜態を晒してばかりのわたしに、梶塚くんはにこにこと笑顔で「大丈夫ですよ」「落ち着いてください」「そんなところも好きです」「祥子さんの嫌がることはしません」と言い続け、二度目の梶塚くんと朝食付きの朝を迎えて見送られ、早くも夫婦になって三日が経とうとしていることに気が付いたのが昨日の夜。
気が付いたよりも酷い話、気付かされたというか突き付けられたのだけれど、それはまあ置いておくとして……そこまで経って、そこまでされて、ようやくわたしは現実に結婚したのだと飲み込むことができたのだ。
それで――……こほん。
まあ、色々……ね。なかったと言えばなにもなかったんだけれど……色々とありまして……いや、本当に昨夜もその前も漫画や小説的な展開やら、ごにょごにょな展開なんてこともなんにもなかったのだけれど、昨夜からちゃんと梶塚くんと夫婦として暮らせるように、二人で色々話していた中で発覚した事実に行き当たり、こうして今、たかだか、されどの自己紹介に思い悩んでいるのだ。
「梶塚くんのご家族になんて言えばいいのっ!?」
「とっ、当然でしょう!?」
初めまして、金森祥子です。こんにちわ。
そんなありきたりで無難な挨拶を何度も何度も口ずさんでいるのだけれど、ちゃんとうまく言える自信が湧いてこない。
そもそも、金森祥子と自己紹介していいのかもわたしはちょっと不安に思っている。
なぜかと言えばわたし、三日前までは金森祥子だったのだが、なんと驚くべきことに今わたしの隣にいる二十歳も年下の若い男の子、梶塚く……郁真くんと――正直今でも信じられないのだけど――結婚したのだ。
あまりにも突然な、想定外のことで、この四日間何度も梶塚……郁真くんに確認しているくらい信じられないし夢なんじゃないかしらとも今でも思っている。
いったい誰が信じられるというのか、理解できるというのか、教えて欲しい。
約一年前、突然プロポーズを自分の生徒にされたと思ったら、その後全くなんの接触も会話も何事もなく、生徒は卒業。あれは夢か幻だったのかと深く思い悩んでいたのに、再び突然ひょっこり現れた生徒じゃなくなった彼に改めてプロポーズされてしまったのだ。
もう色々と、色々な意味でパニックになっていたわたしは感情の赴くままにそのプロポーズを受けてしまった。
そのことに後悔はないと言ったら嘘になる。
本当は考えるべきことが沢山あったはずなのだ。
わたしはもう四十路手前で、梶塚くんはまだまだ未来ある十代。
どんな結論を出すにせよ、これからのことを考えれば慎重に、大人として、元先生としても導いてあげなければならなかったはずのわたしが、何も考えずただ感情のままに行動してしまった。
とても情けないし、恥ずかしいし、本当にこれで良かったのかしら?とも思っている。
しかしだ。
しかし、そんなことをまともに考えられるようになったのは昨日だ。
三日前の、プロポーズの後。
その時のわたしはまだ、パニックの最中にいた。
その間に婚姻届けを書かされ、わたしの実家に挨拶に行き、役所に行き、婚姻届けを提出。
その後、なぜか梶塚くんに把握されてた午後からの職務を予定通りできたのかどうかもわからないまま夜になり、午前中の出来事は夢かなんだったのかとぼんやり帰宅すると梶塚くんがいて、再びパニック。
とにかく落ち着くために梶塚くんと家に入り、そこでまたパニック。
夫婦の仲となってしまった梶塚くんに宥められて、ようやく話せるようにはなったものの、完全に梶塚くんのペースに吞まれていて、気が付けば引っ越しの準備をすることに。
翌日、知らない間に寝ていたわたしを起こしたのは梶塚くんで再びパニック。
梶塚くんの作った美味しい朝食を食べさせられて、美味しいお弁当片手に梶塚くんに見送られながら学校へ行き、その日の職務を終えて帰宅するとやっぱりいる梶塚くん。
初日、彼が家に泊まり込んだと思っていたら実は通ってたと知り、夜遅くに出歩かせるのも悪いとなんだかんだで泊まってもらうことになり自分で誘っておいてのプチパニック。
そんな醜態を晒してばかりのわたしに、梶塚くんはにこにこと笑顔で「大丈夫ですよ」「落ち着いてください」「そんなところも好きです」「祥子さんの嫌がることはしません」と言い続け、二度目の梶塚くんと朝食付きの朝を迎えて見送られ、早くも夫婦になって三日が経とうとしていることに気が付いたのが昨日の夜。
気が付いたよりも酷い話、気付かされたというか突き付けられたのだけれど、それはまあ置いておくとして……そこまで経って、そこまでされて、ようやくわたしは現実に結婚したのだと飲み込むことができたのだ。
それで――……こほん。
まあ、色々……ね。なかったと言えばなにもなかったんだけれど……色々とありまして……いや、本当に昨夜もその前も漫画や小説的な展開やら、ごにょごにょな展開なんてこともなんにもなかったのだけれど、昨夜からちゃんと梶塚くんと夫婦として暮らせるように、二人で色々話していた中で発覚した事実に行き当たり、こうして今、たかだか、されどの自己紹介に思い悩んでいるのだ。
「梶塚くんのご家族になんて言えばいいのっ!?」
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