突然結婚したわたしの話

あせき

文字の大きさ
1 / 15

梶塚家にご挨拶1

しおりを挟む
「祥子さん、緊張してるんですか?」
「とっ、当然でしょう!?」

 初めまして、金森祥子です。こんにちわ。
 そんなありきたりで無難な挨拶を何度も何度も口ずさんでいるのだけれど、ちゃんとうまく言える自信が湧いてこない。
 そもそも、金森祥子と自己紹介していいのかもわたしはちょっと不安に思っている。
 なぜかと言えばわたし、三日前までは金森祥子だったのだが、なんと驚くべきことに今わたしの隣にいる二十歳も年下の若い男の子、梶塚く……郁真くんと――正直今でも信じられないのだけど――結婚したのだ。
 あまりにも突然な、想定外のことで、この四日間何度も梶塚……郁真くんに確認しているくらい信じられないし夢なんじゃないかしらとも今でも思っている。
 いったい誰が信じられるというのか、理解できるというのか、教えて欲しい。
 約一年前、突然プロポーズを自分の生徒にされたと思ったら、その後全くなんの接触も会話も何事もなく、生徒は卒業。あれは夢か幻だったのかと深く思い悩んでいたのに、再び突然ひょっこり現れた生徒じゃなくなった彼に改めてプロポーズされてしまったのだ。
 もう色々と、色々な意味でパニックになっていたわたしは感情の赴くままにそのプロポーズを受けてしまった。
 そのことに後悔はないと言ったら嘘になる。
 本当は考えるべきことが沢山あったはずなのだ。
 わたしはもう四十路手前で、梶塚くんはまだまだ未来ある十代。
 どんな結論を出すにせよ、これからのことを考えれば慎重に、大人として、元先生としても導いてあげなければならなかったはずのわたしが、何も考えずただ感情のままに行動してしまった。
 とても情けないし、恥ずかしいし、本当にこれで良かったのかしら?とも思っている。
 しかしだ。
 しかし、そんなことをまともに考えられるようになったのは昨日だ。
 三日前の、プロポーズの後。
 その時のわたしはまだ、パニックの最中にいた。
 その間に婚姻届けを書かされ、わたしの実家に挨拶に行き、役所に行き、婚姻届けを提出。
 その後、なぜか梶塚くんに把握されてた午後からの職務を予定通りできたのかどうかもわからないまま夜になり、午前中の出来事は夢かなんだったのかとぼんやり帰宅すると梶塚くんがいて、再びパニック。
 とにかく落ち着くために梶塚くんと家に入り、そこでまたパニック。
 夫婦の仲となってしまった梶塚くんに宥められて、ようやく話せるようにはなったものの、完全に梶塚くんのペースに吞まれていて、気が付けば引っ越しの準備をすることに。
 翌日、知らない間に寝ていたわたしを起こしたのは梶塚くんで再びパニック。
 梶塚くんの作った美味しい朝食を食べさせられて、美味しいお弁当片手に梶塚くんに見送られながら学校へ行き、その日の職務を終えて帰宅するとやっぱりいる梶塚くん。
 初日、彼が家に泊まり込んだと思っていたら実は通ってたと知り、夜遅くに出歩かせるのも悪いとなんだかんだで泊まってもらうことになり自分で誘っておいてのプチパニック。
 そんな醜態を晒してばかりのわたしに、梶塚くんはにこにこと笑顔で「大丈夫ですよ」「落ち着いてください」「そんなところも好きです」「祥子さんの嫌がることはしません」と言い続け、二度目の梶塚くんと朝食付きの朝を迎えて見送られ、早くも夫婦になって三日が経とうとしていることに気が付いたのが昨日の夜。
 気が付いたよりも酷い話、気付かされたというか突き付けられたのだけれど、それはまあ置いておくとして……そこまで経って、そこまでされて、ようやくわたしは現実に結婚したのだと飲み込むことができたのだ。
 それで――……こほん。
 まあ、色々……ね。なかったと言えばなにもなかったんだけれど……色々とありまして……いや、本当に昨夜もその前も漫画や小説的な展開やら、ごにょごにょな展開なんてこともなんにもなかったのだけれど、昨夜からちゃんと梶塚くんと夫婦として暮らせるように、二人で色々話していた中で発覚した事実に行き当たり、こうして今、たかだか、されどの自己紹介に思い悩んでいるのだ。

「梶塚くんのご家族になんて言えばいいのっ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...