【R18】Under Control〜公安刑事がドSインテリヤクザに調教されるBL〜

MINAMI@白鳥湖

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第6章 Reclaim【モブレ注意】

②因縁の再会

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 全身の鈍い痛みで、榊原は目を覚ました。ゆっくりと身体を起こせば、鈍器で殴られているかのような痛みが頭部を襲う。
 瞼の裏にまだ黒い膜が張りついているような、半分夢の底に沈んでいる感覚。耳鳴りが遠くで鳴り、鼓動が頭蓋の内側で鈍く響いている。
────ここは、どこだ。
 自分はクイーンサイズのベッドに寝かされていたらしい。あたりをみれば、ラブホテルの一室のような部屋であることがわかった。
 だが、妙に空気が重い。空調は動いているはずなのに、肌にまとわりつく湿気が抜けない。壁の上部に取り付けられた排気ダクト、窓が一つもないこと、その他諸々の様子は、ここが暗く閉ざされた地下室であることを示している。
 壁紙は新品のように見えるのに、目地の隙間からは微かにカビの匂いがした。新しく飾り立てられた仮面の下に、古びた牢の骨格が覗いているようだった。
 つまり、ラブホテルのような内装をしているだけで、ここは普通のホテルなどではない。
 どういう理由でこんな部屋を用意したのか、そもそも自分をなぜこんなところに放り込んで監禁したのか。
 回らない頭で考えても、しっくりくる結論は出なかった。
 ふと、首に違和感を感じ、下を向いて確認する。
 汗で少し冷たくなった革の感触。喉仏のすぐ下を、硬い帯がきつく巻いている。
 自分の首には黒色の首輪がはめられていた。それは犬につける首輪そのもので、ただ、小さな四角い謎の装置のようなものが、内側に取り付けられていた。
 その装置を指でなぞって確かめていたそのとき、扉が開いた。
「────お目覚めかな。榊原警視正」
「────雨宮くん、か」
 雨宮時哉。黒崎と敵対関係にある指定暴力団隼会の幹部。三十五歳。
「久しぶりだね。うん、元気そうで何よりだ」
 いつもどおりの微笑みを向けてやると、雨宮は侮蔑するような笑みを浮かべ、鼻を鳴らした。
「それはどうも」
「ところで、ここはどこかな? 僕を監禁するための部屋、ってことはわかるけど、まぁ、そこそこまともな部屋で有難いよ」
「相変わらず、よく口が回る男だな。暴行されて拉致され、監禁されている人間だとは思えない」
 カツカツ、と革靴の音を立てて、雨宮が近づいてくる。
「ふ、顔だけは綺麗なんだな。────中身は〝正義の味方〟とは思えないほど、ごみ溜めより汚れてるっていうのに」
 雨宮の細くて長い指が、顎に触れる。その指は驚くほど冷たかった。そのまま、くい、と顎先を持ち上げられる。
「よく聞け。お前はここで死ぬまで働いてもらう。うちが経営してる違法風俗店の売春婦としてな。お前が泣こうが、喚こうが、一日何件もの客をとらせて、こき使ってやるから覚悟しておけよ」
「なるほど。ここは風俗店か。だからホテルみたいな内装で、立派なベッドとトイレ、浴室まで揃ってるってわけだ」
 合点がいった。
 それにしてもまぁ、悪趣味だ。
 むろん、そんな仕事をする気はない。相手の様子を見つつ、機会がくれば反撃すればよい。
 隼会は数年前に〝用済み〟になったから、公安としては、拘束したところで特に大きな利益はない。しかし、警視庁の組織犯罪対策課にでも手土産として渡してやれば、たいそう喜ばれるはずだ。なにせ、組対の刑事たちは、雨宮の行方を血眼になって追っているという話だ。恩を売るのにはちょうど良い。
「でもごめんね。僕は公務員だから、副業は禁止されてるんだ。────だから今回の話は、辞退させてもらうよ」
 ベッドから飛び降り、雨宮との間合いをいっきに詰める。そして頸椎に向けて脚を振るった。
「あ゛…………ッ!」
 気絶させられたときに打たれた薬物のせいか、力の入り具合はイマイチだった。しかし、雨宮の体勢を崩すのには十分だったようで、その隙を狙い、投げ飛ばすために右肩を掴もうとした。
 しかし、その時。
「が、は────ッッ⁉︎」
 全身に雷が落ちたような衝撃が走る。スタンガンの何倍もの強烈な痛みと衝撃。
 思わず倒れ込み、背中から床に叩きつけられた。
「な、に…………を?」
 床に爪を立ててもがいている自分を、雨宮は嬉しそうに上から眺めている。
「そのよく似合ってる首輪だよ。リモコン一つでこんなふうに電流が走る仕掛けがされていてね。この部屋から逃げようとしたって無駄だ。カメラで監視してるから、不審な動きをしたら今みたいに電流を流してやる」
「は、は…………さすが隼会の幹部。用意周到だね」
 なんとか呼吸を整えようとするが、全身の痺れは治らない。床に這いつくばったまま、身動きがとれない。
「だから榊原孝之。お前はここから逃げられない。────死ぬまでな」
 雨宮の瞳はぞくりと震えるほど冷たかった。まるで固く凍りついた氷そのものだった。
「へぇ。僕は随分君に恨まれてるみたいだね。心当たりがあるとすれば…………麻里亜さんのことかな」
 雨宮の目が、ぐわっと見開かれる。とある女の名を口にした途端、その目に明らかな怒りと憎悪が浮かんだ。
「……はは、麻里亜の名前を出せば、おれがボロを出すとでも思ったか?」
 雨宮の顔に浮かんだはずの憎悪の跡が、すっと引いた。
 佐々木麻里亜。
 雨宮が所属する組と友好な関係にあった佐々木組の組長の娘。そして雨宮の恋人だった女。
 自分は、数年前、佐々木組と取引を行い、情報を仕入れていた。しかし用済みになった途端、佐々木組を切り捨て、解体に追い込んだ。
 その結果、後ろ盾を失った麻里亜は、敵対する別の組の男たちに捉えられた。そして、違法風俗店で強制的に売春をさせられ、それを苦に自殺したと聞いている。
 雨宮はその件で自分のことを恨んでいるのだろう。
 だから普通に拷問したりせずに、ここで売春を強要させるつもりなのだ。麻里亜と同じ目に遭わせたいのだろう。
────くだらないな。
 榊原は鼻を鳴らした。
 たしかに自分は佐々木組を散々利用した後、切り捨てた。しかし、別に冤罪をでっち上げたわけではない。単に、用済みになったタイミングで、犯罪行為の証拠を警察の組織犯罪対策課に流しただけだ。
 これが何の罪になるというのだ。
「残念だが、俺はお前の見え透いた挑発には乗ってやらない」
 雨宮が目の前にしゃがみ込む。そして榊原の前髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。
「お前がこれから相手をする客は、まともな人間じゃあない。ここは裏社会の人間しか出入りしない裏の風俗店だ。ああ、そうだ喜べ。お前のことをメニューに書いたら、予約が殺到したぞ。現役の公安刑事なんて、マニアには堪らんからな」
「はは、それは……どうも。あんまり褒められている気はしないけど」
「まぁいい。お前はあと半月もすれば、どうせそんな減らず口も叩けなくなるだろう」
 そのとき、コンコンと、ドアがノックされる音がした。そして雨宮は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ほら、一番客だ。丁重にもてなせよ。榊原孝之」
 そう言うと扉を開け、出ていった。
────さて、ここからどうする?
 ぐるぐると思考をめぐらせながら、扉をじっと見つめた。
 
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