11 / 54
Trigger Night
⑥事後・黒崎視点
しおりを挟む
夜明け前の午前四時。六本木。
自室のベッドルームは、静かだった。潮が引いたあとの海みたいに、ベッドの上には、熱と、湿度と、静けさだけが残っている。
榊原さんの身体はぐったりとベッドシーツに沈んでいる。
眠っている、というより気絶している、という表現が正しいだろう。
何度も果てて、喘いで、叫んで。最後は、言葉も出ないまま、僕の腕の中で崩れ落ちた。
肢体はすっかり力を失い、それでも肌だけは、まだほんのりと火照っている。
指先で頬を撫でる。反応はない。
けれど、その頬は、最初に会った時よりずっと温かく、柔らかだった。
「……綺麗ですよ、榊原さん」
口に出して、初めて自覚する。
そうだ。
僕はこの人を、“綺麗に仕上げた”。
理性の鎧を剥いで、身体を性感帯に作り変えて。
叫ばせて、泣かせて、絶頂に溺れさせた。
もう、逃げられない。
逃がさない。絶対に。
気絶したその姿さえも──美しい。
シーツの上でぐったりと横たわる裸の背中。爪痕の残る肩と、白濁に濡れた腹部。張りつめた声も、震える脚も、すべてが今夜の“完成品”だ。
そっと、ぬるま湯で絞ったタオルで、全身を拭ってあげる。どろりと垂れたローションも、丁寧に拭き取った。
乱れた髪を整えて、下着を履かせ、ワイシャツを着せる。
「────あなたはもう、僕のものだ」
耳元で囁く。
自分のことを支配し、手中に納めるためにやってきた獣。
そんな獣を、逆に己の蜘蛛の糸で絡め取ってやりたい。
そして骨の髄まで────
────準備は、整った。
あとは少しずつ、榊原孝之という男の歯車を狂わせていけばいい。
「榊原さん。……これは、“マーキング”ですよ」
榊原さんの首筋に吸い付く。そして赤黒い跡をつけた。
その証を抱いて、あなたはまた、公安のオフィスに戻る。
どれだけ仕事で優秀でも、何人を欺いても、その首の裏には、僕のキスの跡が、ほんのりと残っている。
それだけで十分。
だって、榊原孝之さん。
あなたは────
もう“僕のもの”なんですから。
自室のベッドルームは、静かだった。潮が引いたあとの海みたいに、ベッドの上には、熱と、湿度と、静けさだけが残っている。
榊原さんの身体はぐったりとベッドシーツに沈んでいる。
眠っている、というより気絶している、という表現が正しいだろう。
何度も果てて、喘いで、叫んで。最後は、言葉も出ないまま、僕の腕の中で崩れ落ちた。
肢体はすっかり力を失い、それでも肌だけは、まだほんのりと火照っている。
指先で頬を撫でる。反応はない。
けれど、その頬は、最初に会った時よりずっと温かく、柔らかだった。
「……綺麗ですよ、榊原さん」
口に出して、初めて自覚する。
そうだ。
僕はこの人を、“綺麗に仕上げた”。
理性の鎧を剥いで、身体を性感帯に作り変えて。
叫ばせて、泣かせて、絶頂に溺れさせた。
もう、逃げられない。
逃がさない。絶対に。
気絶したその姿さえも──美しい。
シーツの上でぐったりと横たわる裸の背中。爪痕の残る肩と、白濁に濡れた腹部。張りつめた声も、震える脚も、すべてが今夜の“完成品”だ。
そっと、ぬるま湯で絞ったタオルで、全身を拭ってあげる。どろりと垂れたローションも、丁寧に拭き取った。
乱れた髪を整えて、下着を履かせ、ワイシャツを着せる。
「────あなたはもう、僕のものだ」
耳元で囁く。
自分のことを支配し、手中に納めるためにやってきた獣。
そんな獣を、逆に己の蜘蛛の糸で絡め取ってやりたい。
そして骨の髄まで────
────準備は、整った。
あとは少しずつ、榊原孝之という男の歯車を狂わせていけばいい。
「榊原さん。……これは、“マーキング”ですよ」
榊原さんの首筋に吸い付く。そして赤黒い跡をつけた。
その証を抱いて、あなたはまた、公安のオフィスに戻る。
どれだけ仕事で優秀でも、何人を欺いても、その首の裏には、僕のキスの跡が、ほんのりと残っている。
それだけで十分。
だって、榊原孝之さん。
あなたは────
もう“僕のもの”なんですから。
70
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる