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中編
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男の縄張りである空き教室から、さらに男の自宅に場所を移して、いつになくしつこく貪られた翌日。
男の部屋から逃げるようにふらふらの身体を引摺り、いつもの溜まり場である屋上に向かう。
まだ早い時間のせいかまだ誰もいなかった。
ごろりと硬いコンクリートの上に横になって、強い陽射しから逃げるように腕で目を覆う。
…なんでこんなところ溜まり場にしたんだか。床は硬いし冷たいし、風が吹けば寒いし夏は暑い。
男のところは空き教室を改造して居心地がいいのに。ああ腰が痛い。
すぐさま重たい睡魔がやってきた。
「あれ、今日ははやいんですね!一番乗りですか?」
「あぁ…?子犬くん…?」
賑やかな声に意識が浮上し、薄目を開けるとちょうどあいつや他の者たちがやって来たところだった。
ていうか、もう昼?どんだけ寝てんだオレ。
「朝からいなかったがずっとここにいたのか」
「あー寝てた…」
ごろりと寝返りを打つが、身体中が痛くてなかなか動けない。こんなところで爆睡したらそうなるか。
近くにあいつと子犬くんが腰を下ろしたのがわかり、ゆっくりと横を向くと真っ赤な顔をした子犬くんと目が合った。
「うわ、エロ……!」
「は?」
「や、なんでもないです…っ」
なんだかチラチラとあいつを気にしながら首を横に振る子犬くん。
わけわかんねぇな、とゆっくり身体を起こしてフェンスに背中を預けた。
「具合でも悪いのか」
「あ?」
影がかかって視線を上げると、あいつがじっと見下ろしていた。なんだかずいぶん距離が近いなと思ったが、オレを気遣うような言葉がじんわりと胸に沁みる。
「大丈…」
「なんだこれ」
大丈夫、と言い切る前に、肩を掴まれ首元を覗きこまれる。晒されたそこには昨日の名残が刻まれているんだろう。
「は、昨日は女とお楽しみだったのか」
「いや男」
「「は!!?」」
急に不機嫌になったあいつにそう返せば、なぜか周囲からぎょっとしたような声が上がる。
あいつどころか子犬くんも、モブだった他の者も目を見開いてオレを凝視していて、ぽやぽやしていた気分が吹っ飛んだ。
「おい、まさか、付き合ってるとか言わねえよな?」
「ええ?いや、付き合ってなんかいないけど…」
ち、近い。
鼻先で睨み付けられて動揺する。元々近かったのにますます顔を寄せられて、これではまるで。
「てめぇ、なにしてやがる」
ドスの効いた低い声にびくっと肩が跳ねた。
慌ててあいつの影から顔を出せば、昨晩ずっといっしょだった男が不機嫌も露に立っていた。
「なんであんたがここにいるんだ」
「オレの質問が先だな。そいつになにしてやがった?」
威圧感たっぷりの男の迫力に、かわいそうに、周囲は顔を真っ青にして震えている。
「まったく、朝起きたら隣にいねぇんだから」
「あんたまさか…」
薄く笑いながら近づいてくる男と、ゆらりと対峙するあいつ。半端ない緊張感に誰かがごくりと喉を鳴らして――。
「ちかくん、その手に持ってるやつもしかして!」
ゆっるゆるなオレの声が屋上に響いた。
男――ちかくんはため息ひとつついて頷く。
「そうだよ。おまえ朝も食ってねえし、仕方ないからな」
「おお!駅前のパン屋の数量限定クリームパンじゃん!さすがちかくん、わかってるー!」
ごそごそとパン屋の紙袋を漁るオレの隣にどっかりと腰を下ろすちかくん。
正親(まさちか)で、ちかくん。
オレは昔からずっとこう呼んでる。
「は…?」
呆然としてるあいつや仲間たち。
「おまえ、そいつとどういう知り合いだ…!」
「ええ?それは昔馴染みっていうか…?」
「てめえこいつになにもしてないだろうな!?」
「あ?そんなのもう、去年てめえが嫌がって来なかった挨拶回りのときには、全部食っちまったよ」
こいつが来てくれて嬉しかったぜ、なんてにやにや笑うちかくんと、「そんな…!」と青くなるあいつ。
なんだかよくわからないがどうせまたオレの話だろうと、むしゃむしゃクリームパンを口に詰め込みながらちかくんに肩パンすると、「ひい…!」と子犬くんが小さく悲鳴を上げた。
「あ、あの最恐の先輩になんてことを…!」
「?」
ちかくんはオレのパンチを気にした素振りもなく、パックのカフェオレにストローを差してオレの口許に差し出す。
それを見て子犬くんはますます「ひいい…!」と青くなった。わけわからん。
「本当はこいつが入学したら、すぐに一年のトップにしてそれでオレの下につかせようと思ってたんだよ。それがこいつに惚れたとかぬかしてケンカふっかけて返り討ちだろ?オレは腹が煮えくり返ってな」
ああ、それであの頃のちかくんマジギレしてたんだ。オレの前評判がいやに高かったことにも納得。
「オレ、八つ当たりでちかくんに処女うばわれたのかと思ってた」
「それはないな」
一瞬で否定されてなんだか納得いかない。
ふと顔を上げると、いつも無表情のあいつが頬をピンクに染めていた。
「ほ、惚れ…、おまえが?オレに?」
「あ、やべ」
ちかくんが余計なこと言うからオレの気持ちがバレてしまったじゃないか。子犬くんもいるのに。
文句を言おうとしたが、そのまま大きな手に肩を抱き寄せられてしまった。
「てめえにこいつはもったいねーよ」
なんだか仲が悪い二人。ちかくんはあいつを認めていないようだ。
あれ?それならなんで
「なんで学園トップ譲ったの?」
男の部屋から逃げるようにふらふらの身体を引摺り、いつもの溜まり場である屋上に向かう。
まだ早い時間のせいかまだ誰もいなかった。
ごろりと硬いコンクリートの上に横になって、強い陽射しから逃げるように腕で目を覆う。
…なんでこんなところ溜まり場にしたんだか。床は硬いし冷たいし、風が吹けば寒いし夏は暑い。
男のところは空き教室を改造して居心地がいいのに。ああ腰が痛い。
すぐさま重たい睡魔がやってきた。
「あれ、今日ははやいんですね!一番乗りですか?」
「あぁ…?子犬くん…?」
賑やかな声に意識が浮上し、薄目を開けるとちょうどあいつや他の者たちがやって来たところだった。
ていうか、もう昼?どんだけ寝てんだオレ。
「朝からいなかったがずっとここにいたのか」
「あー寝てた…」
ごろりと寝返りを打つが、身体中が痛くてなかなか動けない。こんなところで爆睡したらそうなるか。
近くにあいつと子犬くんが腰を下ろしたのがわかり、ゆっくりと横を向くと真っ赤な顔をした子犬くんと目が合った。
「うわ、エロ……!」
「は?」
「や、なんでもないです…っ」
なんだかチラチラとあいつを気にしながら首を横に振る子犬くん。
わけわかんねぇな、とゆっくり身体を起こしてフェンスに背中を預けた。
「具合でも悪いのか」
「あ?」
影がかかって視線を上げると、あいつがじっと見下ろしていた。なんだかずいぶん距離が近いなと思ったが、オレを気遣うような言葉がじんわりと胸に沁みる。
「大丈…」
「なんだこれ」
大丈夫、と言い切る前に、肩を掴まれ首元を覗きこまれる。晒されたそこには昨日の名残が刻まれているんだろう。
「は、昨日は女とお楽しみだったのか」
「いや男」
「「は!!?」」
急に不機嫌になったあいつにそう返せば、なぜか周囲からぎょっとしたような声が上がる。
あいつどころか子犬くんも、モブだった他の者も目を見開いてオレを凝視していて、ぽやぽやしていた気分が吹っ飛んだ。
「おい、まさか、付き合ってるとか言わねえよな?」
「ええ?いや、付き合ってなんかいないけど…」
ち、近い。
鼻先で睨み付けられて動揺する。元々近かったのにますます顔を寄せられて、これではまるで。
「てめぇ、なにしてやがる」
ドスの効いた低い声にびくっと肩が跳ねた。
慌ててあいつの影から顔を出せば、昨晩ずっといっしょだった男が不機嫌も露に立っていた。
「なんであんたがここにいるんだ」
「オレの質問が先だな。そいつになにしてやがった?」
威圧感たっぷりの男の迫力に、かわいそうに、周囲は顔を真っ青にして震えている。
「まったく、朝起きたら隣にいねぇんだから」
「あんたまさか…」
薄く笑いながら近づいてくる男と、ゆらりと対峙するあいつ。半端ない緊張感に誰かがごくりと喉を鳴らして――。
「ちかくん、その手に持ってるやつもしかして!」
ゆっるゆるなオレの声が屋上に響いた。
男――ちかくんはため息ひとつついて頷く。
「そうだよ。おまえ朝も食ってねえし、仕方ないからな」
「おお!駅前のパン屋の数量限定クリームパンじゃん!さすがちかくん、わかってるー!」
ごそごそとパン屋の紙袋を漁るオレの隣にどっかりと腰を下ろすちかくん。
正親(まさちか)で、ちかくん。
オレは昔からずっとこう呼んでる。
「は…?」
呆然としてるあいつや仲間たち。
「おまえ、そいつとどういう知り合いだ…!」
「ええ?それは昔馴染みっていうか…?」
「てめえこいつになにもしてないだろうな!?」
「あ?そんなのもう、去年てめえが嫌がって来なかった挨拶回りのときには、全部食っちまったよ」
こいつが来てくれて嬉しかったぜ、なんてにやにや笑うちかくんと、「そんな…!」と青くなるあいつ。
なんだかよくわからないがどうせまたオレの話だろうと、むしゃむしゃクリームパンを口に詰め込みながらちかくんに肩パンすると、「ひい…!」と子犬くんが小さく悲鳴を上げた。
「あ、あの最恐の先輩になんてことを…!」
「?」
ちかくんはオレのパンチを気にした素振りもなく、パックのカフェオレにストローを差してオレの口許に差し出す。
それを見て子犬くんはますます「ひいい…!」と青くなった。わけわからん。
「本当はこいつが入学したら、すぐに一年のトップにしてそれでオレの下につかせようと思ってたんだよ。それがこいつに惚れたとかぬかしてケンカふっかけて返り討ちだろ?オレは腹が煮えくり返ってな」
ああ、それであの頃のちかくんマジギレしてたんだ。オレの前評判がいやに高かったことにも納得。
「オレ、八つ当たりでちかくんに処女うばわれたのかと思ってた」
「それはないな」
一瞬で否定されてなんだか納得いかない。
ふと顔を上げると、いつも無表情のあいつが頬をピンクに染めていた。
「ほ、惚れ…、おまえが?オレに?」
「あ、やべ」
ちかくんが余計なこと言うからオレの気持ちがバレてしまったじゃないか。子犬くんもいるのに。
文句を言おうとしたが、そのまま大きな手に肩を抱き寄せられてしまった。
「てめえにこいつはもったいねーよ」
なんだか仲が悪い二人。ちかくんはあいつを認めていないようだ。
あれ?それならなんで
「なんで学園トップ譲ったの?」
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