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花乞
花乞・4
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ゆらゆらとした意識の中、あまりの心地よさに目を開けると、槐様が盥に張った湯を使ってぼくの身体を清めてくれているところだった。
「!!」
「ああ、気がついた?」
慌てて飛び起きるが、「危ないよ」と槐様の腕に押さえられる。
「槐様…!も、しわけ、ございません、お手間を…」
喘ぎすぎたせいでみっともないほど嗄れた声だった。側仕えのぼくが主人の手を煩わせているなどと、目を白黒させて謝る。
「いいよ。それよりこっちでうつ伏せになって」
そう言って濡れた身体を清潔な布で拭われる。そのまま背中を押されて、後ろを向くように促された。
ぼくは槐様の指示になんだろうと首を傾げながら従う。だるい身体でのろのろと身を伏せると、ぐっと腰を掴まれた。
「槐様?」
「ほら、清白がもらってきたあの薬」
槐様は小瓶を傾けてとろりと手に広げると、それを真っ赤になった穴にくちゅりと塗り込めてきた。
「んん!」
香油のようにひんやりとした感触と槐様の指の感覚に、びくりと跳ねて逃げを打つ。
「んっ、自分で、できますから…!」
「できるの?中も擦れてるよ、ほら」
「あっ!」
ぐちゅん、と奥まで進入する長い指に高い声が上がる。
先程まで攻められていた身体は容易に快楽を拾う。
槐様は薬を塗ってくれているだけなのに、なんだか変な気分になりそうだ。あまりにもはしたない己に羞恥が込み上げて唇を噛む。
「ん、ん…っ!」
「はい終わり」
ちゅぷ、と音を立てて槐様の指が引き抜かれた。体温で溶けた油薬が中を濡らして、物欲しげにひくひくと疼いているのがわかる。
どうしよう。こんな浅ましい自分を槐様に悟られるわけにはいかない。
ぼくは震える膝を叱咤して布団の側まで行くと、脱ぎ捨てられていた着物に袖を通した。
不意に、さらけ出していた肩に伸びてきた指が触れる。
槐様の指だ。
きれいな指先がぼくの左肩を彷徨い、着物を押し下げて肘のあたりまで辿る。
困惑するようなその動きに、ぼくはさあっと一気に頭が冷えていった。
燻っていた甘い欲も嘘のように消える。
「お見苦しいものをすみません。どうか、槐様はお気になさらず」
その手を避けるようにして着物を羽織ると、「もう寝ましょう」と布団の上に座る。
「…………」
槐様はなにも言わなかった。
無言のまま行灯の火を落とし、隣の布団に横になる。
ぼくは上掛けを頭からかぶって槐様に背を向けて丸くなった。
夜毎熱く抱かれ、ああやって槐様の優しさに触れる度に勘違いしそうになる。ぼくが槐様を愛しいと思うように、彼もそうなのではないかと。
でも、どれだけ槐様の情を与えられても、所詮ぼくはただの側仕え。
責任を感じた槐様が引き取ってくれたにすぎないただのお荷物だ。抱こうと思ってもらえるだけましである。
―――腕に残る醜い火傷の痕が、まさしくそれを証明している。
***
心がどれだけ疼いたとしても、自分は槐様に仕える身。誠心誠意彼に尽くすし、求められれば身体も差し出す。
「精が出るね、どうしたの?」
「たくさん採れたので、菘に分けてあげようかと思いまして」
「……あの若い子か」
庭で育てていた芋がたくさん収穫できたので、菘にも渡そうと泥を落としていると、槐様がやってきた。
「お屋敷は人も多いので行き渡らないですけど、菘ひとり分にはちょうどいいでしょう?」
成長期の菘のおやつにしてもらうんだと笑いかけると槐様はなんだか難しい顔。…なんだろう。
「たまには槐様も一緒に行きませんか?」
「いや、遠慮しておく。あっちに用もあるし」
「!!」
「ああ、気がついた?」
慌てて飛び起きるが、「危ないよ」と槐様の腕に押さえられる。
「槐様…!も、しわけ、ございません、お手間を…」
喘ぎすぎたせいでみっともないほど嗄れた声だった。側仕えのぼくが主人の手を煩わせているなどと、目を白黒させて謝る。
「いいよ。それよりこっちでうつ伏せになって」
そう言って濡れた身体を清潔な布で拭われる。そのまま背中を押されて、後ろを向くように促された。
ぼくは槐様の指示になんだろうと首を傾げながら従う。だるい身体でのろのろと身を伏せると、ぐっと腰を掴まれた。
「槐様?」
「ほら、清白がもらってきたあの薬」
槐様は小瓶を傾けてとろりと手に広げると、それを真っ赤になった穴にくちゅりと塗り込めてきた。
「んん!」
香油のようにひんやりとした感触と槐様の指の感覚に、びくりと跳ねて逃げを打つ。
「んっ、自分で、できますから…!」
「できるの?中も擦れてるよ、ほら」
「あっ!」
ぐちゅん、と奥まで進入する長い指に高い声が上がる。
先程まで攻められていた身体は容易に快楽を拾う。
槐様は薬を塗ってくれているだけなのに、なんだか変な気分になりそうだ。あまりにもはしたない己に羞恥が込み上げて唇を噛む。
「ん、ん…っ!」
「はい終わり」
ちゅぷ、と音を立てて槐様の指が引き抜かれた。体温で溶けた油薬が中を濡らして、物欲しげにひくひくと疼いているのがわかる。
どうしよう。こんな浅ましい自分を槐様に悟られるわけにはいかない。
ぼくは震える膝を叱咤して布団の側まで行くと、脱ぎ捨てられていた着物に袖を通した。
不意に、さらけ出していた肩に伸びてきた指が触れる。
槐様の指だ。
きれいな指先がぼくの左肩を彷徨い、着物を押し下げて肘のあたりまで辿る。
困惑するようなその動きに、ぼくはさあっと一気に頭が冷えていった。
燻っていた甘い欲も嘘のように消える。
「お見苦しいものをすみません。どうか、槐様はお気になさらず」
その手を避けるようにして着物を羽織ると、「もう寝ましょう」と布団の上に座る。
「…………」
槐様はなにも言わなかった。
無言のまま行灯の火を落とし、隣の布団に横になる。
ぼくは上掛けを頭からかぶって槐様に背を向けて丸くなった。
夜毎熱く抱かれ、ああやって槐様の優しさに触れる度に勘違いしそうになる。ぼくが槐様を愛しいと思うように、彼もそうなのではないかと。
でも、どれだけ槐様の情を与えられても、所詮ぼくはただの側仕え。
責任を感じた槐様が引き取ってくれたにすぎないただのお荷物だ。抱こうと思ってもらえるだけましである。
―――腕に残る醜い火傷の痕が、まさしくそれを証明している。
***
心がどれだけ疼いたとしても、自分は槐様に仕える身。誠心誠意彼に尽くすし、求められれば身体も差し出す。
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「いや、遠慮しておく。あっちに用もあるし」
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