ヴァンパイア狂想曲

水無月

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第3話 幕間

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私は眠っていた。
いつこの世界に産まれたのかよく分からない。

ただ分かるのは、自分がヴァンパイアと人間のハーフだって言うことともうすぐ死ぬという事だけ。
死因は・・・餓死なのかしら?

私の心は人間だから、その血を吸うっていうのは忌避感が強かった。
だからもう覚えているだけで19年は吸血していない。


最後の時は母親が手に入れてきた輸血パックから少し飲んだだけ。
それですら気持ち悪くなって耐えられなかった。

だから、この屋敷を手に入れたあとは人間と同じ食事をしてここに引き篭もっていた。
最初は苦労しなかった。
ハーフだからか、母親と違って流水も、日光もにんにくも平気だった。
でもやっぱり限界はあったらしい。
すぐに起きているのが辛くなり、覚醒していられる時間も短くなった。
飢餓感でおかしくなりそうな自分に怯えながら、朦朧とした意識とは言えないほどに薄い意識を揺蕩わせながら眠りにつくしかなくなった。
そんな状態だったから、一人の男の子が私の棺桶ベッドを開けたときもロクに反応できなかった。

触られても抵抗できなかった。
壊れ物を触るみたいに頬を、髪を、唇を撫でる手。

唇に滑り込んできた指先が舌に触れる。
少し汗の味がして、それよりも身体が蕩けそうな程に甘美な血の味がして・・・。

気がつけば私はその指に牙を突き立てていた。
とは言っても、少しだけ。
それでも口に広がる濃厚で芳醇な味が理性を溶かしていく。
両手でそっと指先を捧げ持ち吸って舐めてしゃぶって・・・。
ハッキリし始めた意識の中で彼を見た。
子供ー小学生の高学年くらいの男の子が熱っぽい目で私を見つめている。

私も身体の奥底から這い上がってくるような疼きを感じなからその瞳を見つめ、見せつけるように指先に舌を這わせる。

吸血行為には性的な興奮と快感をどちらにももたらす。
私は完全に発情していたし、彼もそうなっているはずだ。
だって彼のアソコは大きくなっているし。
私だって伊達に30年以上も生きていない。
そういう知識だってある。
・・・おの知識が役に立った経験は一度もないけど。

これ以上は私の理性が持たいない。
そう感じたところで彼が意識を失った。

快感に蕩けきった理性と身体に鞭打って、彼に近寄った。
あどけない寝顔に知らず、微笑みが浮かぶ。
甘酸っぱくていい気分。
こんな感情が自分に芽生えた事に少しの驚きを感じながら、膝枕してあげた。

その時思った。
さっきのでしっとりと汗ばんでいる。
未だに快感が走る身体、女の部分は自覚できるほどに濡れている。

・・・変な匂いとかしてたら嫌だな。
そんな事を考えて、苦笑する。
まるで初恋を自覚したばかりの少女のようだ。
彼に悪く思われたくないと思っている自分に今度こそ驚愕した。

ああ、ヴァンパイアの私でも恋をするんだ。
目を覚ました彼を見てもう言い逃れが出来なかった。
我慢できずにキスまでしてしまったから。

母に言われた言葉を思い出す。

「良い?キスは異性に手っ取り早く好意を伝える方法なの。だからソレは本当に好きな相手にだけしてあげなさい」

私はきっと彼に本気で恋したのだろう。
きっとそうだ。
だってただ唇を合わせただけでこんなにも気持ちいいんだもの。

そうと決まれば準備をしないと。
彼の通う学園ならすぐに分かる。
匂いには敏感なのだ。
さあ、忙しくなる。
コネをフルに使って一緒にいられる環境を作らないと。

絶対に逃がさないから。
この恋を成就させれば私は・・・。

だからお願い、私を受け入れて。
乙女な思考で身悶えしつつ、編入手続きを終えて。
無意識に唇に手を這わせる。
思い出されるのはあの指。

待っててね・・・絶対に落としてみせるわ。

恋愛脳に目覚めた少女がその後何をしたのか。
月が見ていた。
淫靡な水音が響く中、夜は更けていった。 
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