1 / 12
1. 嵐の前
しおりを挟む
「はぁ…だるい。今日はさっさと帰って寝たい…」
はあ~ぁあ。寝っ転がりながら、つい大きな欠伸が出てしまう。所々にシミが付いたこのソファにも、すっかり慣れてしまった。
「とか言いつつ、ばっくれずにちゃんと仕事してるんだから偉いよなぁ」
そう返すのは、先輩の上野さん。俺はよっこいしょと重い身体を起こし、「そりゃまぁね。さっさと金返して、とっととこんなとこやめてやる」と言って、にかーっと笑い返した。
俺の仕事は男に股を開くことだ。別にどうってことない、もう随分と慣れたものだから。
「無理し過ぎないでね、由貴くん。まだ学生なんだよ?」
「わかってますって。ははっ、母ちゃんですか」
上野さんとは歳が近い。俺がこの風俗店に勤めたての頃から、何かと気にかけてくれる……こんな店らしからぬ人。
この人には、俺の身の上話を色々としていた。気づいたら親はいない、ばあちゃんと一緒に暮らしていたけど、俺が大学に入学するなりぽっくりと逝ってしまった…なんて話から始まる。
ばあちゃんは優しい人だった。いつもそばにいて、俺のことを守ってくれた。大好きだった。
大学生活は充実しているけど、いつも孤独を感じる。一人でいると、どうにかなってしまいそうだ。
友人が家族の話を楽しそうにしていると、俺の腹の内を何かが這っていった。ドロドロとどす黒い、何かだ。
親ってのはそんなにいいもんかね……一生わかんねぇわ。
それを決定的にさせたのは、多額の借金だった。ばあちゃんが亡くなってから転がり出てきた。蒸発した両親が、俺に残してくれたのはそんなものらしい。
なるほど、獅子は我が子を千尋の谷に落とすというが…まったく、糞食らえだ。
だから手を出した。法外に稼げるのはこれしかない。
借金取りが周りをうろついているのだ。全て金の為だと思えば、罪悪感や後ろめたさ、恥ずかしさ、それに祖母の顔なんかは…消えてなくなっていった。
「そういえば、君の今日の相手って…またあの人?」
上野さんの言葉に、あぁ…悠介さんのことか、と頷き返す。
悠介さんってのは、俺の一番の太客。おじさん…そう、普通におじさん。ちょっとぷよってて、要求してくるプレイは変態的。正直きもい。超きもい。
でもこの人、顔は良かった。じゃなきゃ蹴り飛ばしてると思う。
涼しげな目元に、スッと通った鼻筋は見事なもの。うっすら無精髭なんかを生やしてる。横幅はあるが、縦幅もあるわけで…大迫力。ちょっと憧れたりして。
とにかく怒らない、優しい。そして何より、俺のことが好きで好きで堪んないっ……てのが少しだけ、心地が良かった。
はあ~ぁあ。寝っ転がりながら、つい大きな欠伸が出てしまう。所々にシミが付いたこのソファにも、すっかり慣れてしまった。
「とか言いつつ、ばっくれずにちゃんと仕事してるんだから偉いよなぁ」
そう返すのは、先輩の上野さん。俺はよっこいしょと重い身体を起こし、「そりゃまぁね。さっさと金返して、とっととこんなとこやめてやる」と言って、にかーっと笑い返した。
俺の仕事は男に股を開くことだ。別にどうってことない、もう随分と慣れたものだから。
「無理し過ぎないでね、由貴くん。まだ学生なんだよ?」
「わかってますって。ははっ、母ちゃんですか」
上野さんとは歳が近い。俺がこの風俗店に勤めたての頃から、何かと気にかけてくれる……こんな店らしからぬ人。
この人には、俺の身の上話を色々としていた。気づいたら親はいない、ばあちゃんと一緒に暮らしていたけど、俺が大学に入学するなりぽっくりと逝ってしまった…なんて話から始まる。
ばあちゃんは優しい人だった。いつもそばにいて、俺のことを守ってくれた。大好きだった。
大学生活は充実しているけど、いつも孤独を感じる。一人でいると、どうにかなってしまいそうだ。
友人が家族の話を楽しそうにしていると、俺の腹の内を何かが這っていった。ドロドロとどす黒い、何かだ。
親ってのはそんなにいいもんかね……一生わかんねぇわ。
それを決定的にさせたのは、多額の借金だった。ばあちゃんが亡くなってから転がり出てきた。蒸発した両親が、俺に残してくれたのはそんなものらしい。
なるほど、獅子は我が子を千尋の谷に落とすというが…まったく、糞食らえだ。
だから手を出した。法外に稼げるのはこれしかない。
借金取りが周りをうろついているのだ。全て金の為だと思えば、罪悪感や後ろめたさ、恥ずかしさ、それに祖母の顔なんかは…消えてなくなっていった。
「そういえば、君の今日の相手って…またあの人?」
上野さんの言葉に、あぁ…悠介さんのことか、と頷き返す。
悠介さんってのは、俺の一番の太客。おじさん…そう、普通におじさん。ちょっとぷよってて、要求してくるプレイは変態的。正直きもい。超きもい。
でもこの人、顔は良かった。じゃなきゃ蹴り飛ばしてると思う。
涼しげな目元に、スッと通った鼻筋は見事なもの。うっすら無精髭なんかを生やしてる。横幅はあるが、縦幅もあるわけで…大迫力。ちょっと憧れたりして。
とにかく怒らない、優しい。そして何より、俺のことが好きで好きで堪んないっ……てのが少しだけ、心地が良かった。
1
あなたにおすすめの小説
陥落 ー おじさま達に病愛されて ー
ななな
BL
眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。
国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。
羽衣伝説 ー おじさま達に病愛されて ー
ななな
BL
麗しい少年が、おじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全12話。
仙人の弟子であるボムギュは、お師匠様のことを深くお慕いしておりました。ところがある夜を境に、二人の関係は歪なものとなってしまいます。
逃げるように俗界へと降りたボムギュでしたが、村の子供達に読み書きを教えているという男に心を奪われてしまい…。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
娘さん、お父さんを僕にください。
槇村焔
BL
親父短編オムニバス。
色んな家族がいます
主に親父受け。
※海月家※
花蓮の父は、昔、後輩である男に襲われた
以来、人恐怖症になった父は会社を辞めて、小説家に転身する。
ようやく人恐怖症が治りかけたところで…
腹黒爽やか×気弱パパ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる