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17.魔力が
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魔王の手から、ほどよい風量の風が出続けた。気持ちよさそうに目を閉じているイエローの毛が乾いてモフモフになってくる。可愛いくせ毛も綺麗にくるりんとした。
「どうだ?」
魔王はイエローの肩に両手を乗せ、鏡の前まで誘導した。イエローは自分の毛を触る。
「いつもよりもフワフワ、すごくいい!」
結局魔王は男の子チームの毛を全員乾かした。
「俺は魔王に聞きたいことが山ほどある。だが、まずは子供優先だ。浴衣を着せよう」
子らは大人たちに浴衣を着せてもらい、それぞれ鏡を見て「かっこいいな浴衣」「毛がフワフワ~」などと言い、盛り上がっている。戦士ゼロスもその中に紛れていた。
「魔王、俺には何が起きたかさっぱり分からない。どうなってるんだ?」
「我にも分からぬ」
「リ、リュオン様、今のは魔法でございます」
「それは我にも分かっている……」
魔王は再び自分の両手を見つめた。
「魔王は分からない割には、余裕な雰囲気を醸し出しながら子らの毛をフワフワ乾かしていたよな?」
「別に余裕ではない。魔法が出せる予感がして、もしかしたらと思い魔法を使ってみたら使えて、気がつけば夢中になっていた。今使った魔法は、日々育児をしていて、もしも魔法が再び使えるようになったら、こんなふうに使ってみたいと考えていたことだ」
「だから夢中になっていたんだな。魔法の風で子らの毛をフワフワ乾かしたいと考えていたのか」
「……あぁ。ちなみに今の風にはフワフワになる特別なエッセンスも混ぜた」
だからいつもよりもフワフワ感が増しているのか!
「ところで魔王は、いつ身体の中にある魔力を感じた?」
「湯に浸かっている途中から、力が湧いてきたんだ……」
「浴室の中でか?」
「あぁ、詳しくは露天風呂の中に入った時だ」
「どう考えても今のは魔法だよな。魔王の魔力は奪われ、しかも封印されたのではなかったのか?」
「そうだ。たしかに封印され、今まで何度も試してはみたが、一切魔法は使えなかった」
なのに、何故ここに来て、魔王の魔法が突然使えるように?
「もしかして、温泉の効能のひとつか? でもたしか、肩こり、疲労回復、精神安定、美肌……。魔力の回復とは一切書いていなかったような? そもそも魔力封印ってどんな仕組みなんだ?」
俺は分かりやすく説明してくれそうな執事の目を見た。
「簡単に申し上げますと、本来誰もが身体の中に見えない瓶のようなものがあります。その中に魔力が水のように入っているのです。瓶の大きさ、魔力の量、使いこなせるかどうかも様々で。リュオン様は、生まれながら大きな瓶を持っていました。そして血のにじむような努力により、世も恐れる強大な魔法が使えるようになったのです」
魔王の魔法は世界最強と言われるほどに強く、人間の間でも有名な話だった。その強さは努力の集大成だったのだな。影の努力を知り、魔王への好感度は更に上がる。
執事は話を続けた。
「そしてわたくしたちが敗北した時に、リュオン様の瓶の中にあった魔力は吸い取られ、封印……例えるなら分厚く丈夫な蓋を瓶にされたのです」
「蓋をされてしまえばもう魔力が中に入ることはないし、使うこともできない」
「……そうです」
「だけど今、その蓋が外れ、魔力が完全に戻ったと?」
「その可能性もゼロではありません」
「いや……我の魔力は完全に戻ったわけではない。少しだけだ」
原因はさっぱり分からなかった。唯一はっきりしているのは、このまま魔王の魔力が完全に復活してほしいと願う自分の気持ちだけ。だが、俺がその気持ちを表に出してしまえば反乱分子とみなされ、追放される可能性も出てくるだろう。
「そろそろ部屋に戻るか? 子供が眠たいと言っている」
「分かった。部屋に戻るぞ!」
戦士ゼロスがスカイとイエローを両脇に抱え、レッドをおぶっていた。
「ゼロスは、三人も抱えてすごいな」
「三人くらい、余裕だ! ここにいる子供全員担げるぜ! 担いでやろうか?」
ゼロスはブラックに問う。だが「いや、いい」とブラックは首を振って冷静に断っていた。
力持ちのチートもなかなか良いな。もしも俺も力持ちのチートを手に入れていたら、ゼロスみたいに子らを抱えられる。そして具合が悪くなった魔王も軽々と姫抱っこできたりするのか――
人は自分にないものを羨ましいと思ってしまう。だが俺は現在、子育てチートのお陰で今があるのだから、このチートを手に入れることができて良かったと心から満足していた。
部屋に戻ると畳の上に人数分の布団が並んでいた。部屋の隅には女の子チームのメンバーが集まっている。バイオレットを中心にスケッチブックのひとつのページにお絵描きをしていて、魔法使いエウリュと僧侶ウェスタはその絵を眺めていた。
「何を描いているんだ?」と、俺はスケッチブックを覗く。
描かれていたのは、さっき上空から見えていた景色だった。パステルカラーでふんわり優しい雰囲気で描かれていた。
「これが大好きな魔王城で~、これが雲で……」
ひとつひとつオレンジが説明をしてくれた。
「魔王城か。上手だな!」
「えへへ。でしょ?」
後ろでこっそり話を聞いていた魔王は絵を見つめながら微笑んでいる。魔王の微笑みから目が離せなくなりずっと眺めていると、別の視線を感じた。視線の主は魔法使いエウリュだった。エウリュは何故かハッとした表情でこっちを見ていた。そして目をそらすと「男の子たち、さっきよりフワフワしてますね!」と、何事もなかったかのように子らと話し始めた。
エウリュの表情も気にはなったが、もう子らを寝かしつける時間だ。
「今日みんなで寝れるのうれし~」
「楽しい~」
「ずっと起きてたい~」
さっき脱衣所でウトウトしていたスカイも完全に復活した。子らは布団の上で跳ねたり、ゴロゴロ端から端まで転がったりしたりして動き回っていた。
「毎日大変そうね。全員寝かしつけるまで、わたくしはここにいるわ」と僧侶ウェスタに声をかけられる。
「あぁ、色々ありがとな」
「困った時はお互い様よ! これからも旅以外でも助け合いましょ?」
部屋全体を眺める。予想はしていたが、魔王城で過ごす日よりも寝かしつけは困難だろう。だが、俺には子育てチートがある!
「はい、全員話を聞いて! 今から何秒で布団の中に潜れるか? 準備はいいか?」
「ちょっと待って? 僕の布団違うところにあるから戻す! 誰だよ僕の布団動かしたの」と、ブルーが慌てて自分の布団を元の位置に戻していた。
「じゃあ、いくぞ。い~ち、に~い……」
全員が素早く動く。
「七で全員寝たな! 早いぞ!」
子らが布団に潜ると、大人らも協力してくれて眠らなさそうな子の横で眠るまでトントンしたりして見守ってくれた。そしていつもよりも時間がとてもかかったものの、やがて部屋の中は静まった。
「じゃあ、おやすみなさ~い」
僧侶ウェスタと魔法使いエウリュ、戦士ゼロスは静かに扉を開けて出ていった。
「魔王と執事はもう寝るのか?」
部屋の明かりを消すと俺はふたりに質問する。
「わたくしはもう眠ります」
「我は、まだ起きている」
魔王はまだ起きているのか? もしかして、魔王にもう一度ゆっくりと湯に浸かってもらえるチャンスかもしれない。
「ま、魔王、俺はもう一度温泉に行こうと思うのだが、魔王は行かないか?」
「いや、我は……」
断られる雰囲気だ。でも怯まない――。
「ひとりで温泉に入るのはつまらなくてな。一緒に来てくれないか?」
「……分かった」
――魔王とふたりきりで温泉か。急に緊張してきたな。だけど、魔王の疲れを癒すため。
そう、魔王を誘ったのは全て魔王が安らぐためだ。本当に、それだけなのか?
魔王と俺は静かに廊下へ。廊下を歩いていると、魔法使いエウリュとすれ違う。そしてエウリュは再びハッとした顔をした。
「エウリュ、俺の顔見るたびに驚いてる様子だけど、何故だ?」
「いや、あの……」
エウリュは魔王をチラッと見ると、視線を泳がせた。様子がおかしい。魔王には聞かせられない話なのかと思い、俺はエウリュの腕を掴むと魔王から少し離れた場所に引っ張った。
「魔王には話せないことか?」
魔王に背を向けコソッと尋ねると、エウリュは静かに頷いた。
「なんだ、教えてみろ」
「……実はさっき、ふたりの心の中を覗くつもりはなかったのだけど、覗いてしまって……」
そうだった、エウリュは人の心が読める能力を手に入れていた。その力を活かして今は占い師として活躍している。俺の心の何を読んだ? 何故あんな表情を見せてきた? 俺はやましいことは何も考えていないはずだが、何故かとても不安になる。いや、というか――
「あんまり勝手に覗くのは良くないぞ」
「わたくしも普段は勝手に覗かないように調整しているのだけど、温泉入った後から魔力の調子がよくない気がして……」
「じゃあ、わざと覗いたわけではないんだな?」
「もちろんです!」
「ちなみに、何が見えた?」
俺は息を呑む。
「お、おふたりは、惹かれ合っています」
「……それだけか?」
「は、はい。そうですが」
「毎日一緒に切磋琢磨子育てしていたからな。敵同士の時と比べたら、ふたりの仲はマシになっている気はする。まぁ、一方的にそう思っていたのだと思っていたのだが、魔王もってことか……」
魔王も同じような気持ちなのか。ほっとするような、なんだか胸の辺りが温かくなった。
「惹かれ合うの意味が別の意味で……」
「別の意味とは……」
エウリュは目を伏せながら呟いた。
「ラブです」
「……はっ?」
魔王には聞かれてないよなと焦りながら振り向くと、魔王は目の前にいた。どこまで聞いていたんだ?
「先に温泉に行ってるぞ」
「あっ、待てよ! エウリュ、また明日」
早歩きで進んでいく魔王を追いかけた。
エウリュは何を言ってるんだ? 俺と魔王がラブだと――?
「どうだ?」
魔王はイエローの肩に両手を乗せ、鏡の前まで誘導した。イエローは自分の毛を触る。
「いつもよりもフワフワ、すごくいい!」
結局魔王は男の子チームの毛を全員乾かした。
「俺は魔王に聞きたいことが山ほどある。だが、まずは子供優先だ。浴衣を着せよう」
子らは大人たちに浴衣を着せてもらい、それぞれ鏡を見て「かっこいいな浴衣」「毛がフワフワ~」などと言い、盛り上がっている。戦士ゼロスもその中に紛れていた。
「魔王、俺には何が起きたかさっぱり分からない。どうなってるんだ?」
「我にも分からぬ」
「リ、リュオン様、今のは魔法でございます」
「それは我にも分かっている……」
魔王は再び自分の両手を見つめた。
「魔王は分からない割には、余裕な雰囲気を醸し出しながら子らの毛をフワフワ乾かしていたよな?」
「別に余裕ではない。魔法が出せる予感がして、もしかしたらと思い魔法を使ってみたら使えて、気がつけば夢中になっていた。今使った魔法は、日々育児をしていて、もしも魔法が再び使えるようになったら、こんなふうに使ってみたいと考えていたことだ」
「だから夢中になっていたんだな。魔法の風で子らの毛をフワフワ乾かしたいと考えていたのか」
「……あぁ。ちなみに今の風にはフワフワになる特別なエッセンスも混ぜた」
だからいつもよりもフワフワ感が増しているのか!
「ところで魔王は、いつ身体の中にある魔力を感じた?」
「湯に浸かっている途中から、力が湧いてきたんだ……」
「浴室の中でか?」
「あぁ、詳しくは露天風呂の中に入った時だ」
「どう考えても今のは魔法だよな。魔王の魔力は奪われ、しかも封印されたのではなかったのか?」
「そうだ。たしかに封印され、今まで何度も試してはみたが、一切魔法は使えなかった」
なのに、何故ここに来て、魔王の魔法が突然使えるように?
「もしかして、温泉の効能のひとつか? でもたしか、肩こり、疲労回復、精神安定、美肌……。魔力の回復とは一切書いていなかったような? そもそも魔力封印ってどんな仕組みなんだ?」
俺は分かりやすく説明してくれそうな執事の目を見た。
「簡単に申し上げますと、本来誰もが身体の中に見えない瓶のようなものがあります。その中に魔力が水のように入っているのです。瓶の大きさ、魔力の量、使いこなせるかどうかも様々で。リュオン様は、生まれながら大きな瓶を持っていました。そして血のにじむような努力により、世も恐れる強大な魔法が使えるようになったのです」
魔王の魔法は世界最強と言われるほどに強く、人間の間でも有名な話だった。その強さは努力の集大成だったのだな。影の努力を知り、魔王への好感度は更に上がる。
執事は話を続けた。
「そしてわたくしたちが敗北した時に、リュオン様の瓶の中にあった魔力は吸い取られ、封印……例えるなら分厚く丈夫な蓋を瓶にされたのです」
「蓋をされてしまえばもう魔力が中に入ることはないし、使うこともできない」
「……そうです」
「だけど今、その蓋が外れ、魔力が完全に戻ったと?」
「その可能性もゼロではありません」
「いや……我の魔力は完全に戻ったわけではない。少しだけだ」
原因はさっぱり分からなかった。唯一はっきりしているのは、このまま魔王の魔力が完全に復活してほしいと願う自分の気持ちだけ。だが、俺がその気持ちを表に出してしまえば反乱分子とみなされ、追放される可能性も出てくるだろう。
「そろそろ部屋に戻るか? 子供が眠たいと言っている」
「分かった。部屋に戻るぞ!」
戦士ゼロスがスカイとイエローを両脇に抱え、レッドをおぶっていた。
「ゼロスは、三人も抱えてすごいな」
「三人くらい、余裕だ! ここにいる子供全員担げるぜ! 担いでやろうか?」
ゼロスはブラックに問う。だが「いや、いい」とブラックは首を振って冷静に断っていた。
力持ちのチートもなかなか良いな。もしも俺も力持ちのチートを手に入れていたら、ゼロスみたいに子らを抱えられる。そして具合が悪くなった魔王も軽々と姫抱っこできたりするのか――
人は自分にないものを羨ましいと思ってしまう。だが俺は現在、子育てチートのお陰で今があるのだから、このチートを手に入れることができて良かったと心から満足していた。
部屋に戻ると畳の上に人数分の布団が並んでいた。部屋の隅には女の子チームのメンバーが集まっている。バイオレットを中心にスケッチブックのひとつのページにお絵描きをしていて、魔法使いエウリュと僧侶ウェスタはその絵を眺めていた。
「何を描いているんだ?」と、俺はスケッチブックを覗く。
描かれていたのは、さっき上空から見えていた景色だった。パステルカラーでふんわり優しい雰囲気で描かれていた。
「これが大好きな魔王城で~、これが雲で……」
ひとつひとつオレンジが説明をしてくれた。
「魔王城か。上手だな!」
「えへへ。でしょ?」
後ろでこっそり話を聞いていた魔王は絵を見つめながら微笑んでいる。魔王の微笑みから目が離せなくなりずっと眺めていると、別の視線を感じた。視線の主は魔法使いエウリュだった。エウリュは何故かハッとした表情でこっちを見ていた。そして目をそらすと「男の子たち、さっきよりフワフワしてますね!」と、何事もなかったかのように子らと話し始めた。
エウリュの表情も気にはなったが、もう子らを寝かしつける時間だ。
「今日みんなで寝れるのうれし~」
「楽しい~」
「ずっと起きてたい~」
さっき脱衣所でウトウトしていたスカイも完全に復活した。子らは布団の上で跳ねたり、ゴロゴロ端から端まで転がったりしたりして動き回っていた。
「毎日大変そうね。全員寝かしつけるまで、わたくしはここにいるわ」と僧侶ウェスタに声をかけられる。
「あぁ、色々ありがとな」
「困った時はお互い様よ! これからも旅以外でも助け合いましょ?」
部屋全体を眺める。予想はしていたが、魔王城で過ごす日よりも寝かしつけは困難だろう。だが、俺には子育てチートがある!
「はい、全員話を聞いて! 今から何秒で布団の中に潜れるか? 準備はいいか?」
「ちょっと待って? 僕の布団違うところにあるから戻す! 誰だよ僕の布団動かしたの」と、ブルーが慌てて自分の布団を元の位置に戻していた。
「じゃあ、いくぞ。い~ち、に~い……」
全員が素早く動く。
「七で全員寝たな! 早いぞ!」
子らが布団に潜ると、大人らも協力してくれて眠らなさそうな子の横で眠るまでトントンしたりして見守ってくれた。そしていつもよりも時間がとてもかかったものの、やがて部屋の中は静まった。
「じゃあ、おやすみなさ~い」
僧侶ウェスタと魔法使いエウリュ、戦士ゼロスは静かに扉を開けて出ていった。
「魔王と執事はもう寝るのか?」
部屋の明かりを消すと俺はふたりに質問する。
「わたくしはもう眠ります」
「我は、まだ起きている」
魔王はまだ起きているのか? もしかして、魔王にもう一度ゆっくりと湯に浸かってもらえるチャンスかもしれない。
「ま、魔王、俺はもう一度温泉に行こうと思うのだが、魔王は行かないか?」
「いや、我は……」
断られる雰囲気だ。でも怯まない――。
「ひとりで温泉に入るのはつまらなくてな。一緒に来てくれないか?」
「……分かった」
――魔王とふたりきりで温泉か。急に緊張してきたな。だけど、魔王の疲れを癒すため。
そう、魔王を誘ったのは全て魔王が安らぐためだ。本当に、それだけなのか?
魔王と俺は静かに廊下へ。廊下を歩いていると、魔法使いエウリュとすれ違う。そしてエウリュは再びハッとした顔をした。
「エウリュ、俺の顔見るたびに驚いてる様子だけど、何故だ?」
「いや、あの……」
エウリュは魔王をチラッと見ると、視線を泳がせた。様子がおかしい。魔王には聞かせられない話なのかと思い、俺はエウリュの腕を掴むと魔王から少し離れた場所に引っ張った。
「魔王には話せないことか?」
魔王に背を向けコソッと尋ねると、エウリュは静かに頷いた。
「なんだ、教えてみろ」
「……実はさっき、ふたりの心の中を覗くつもりはなかったのだけど、覗いてしまって……」
そうだった、エウリュは人の心が読める能力を手に入れていた。その力を活かして今は占い師として活躍している。俺の心の何を読んだ? 何故あんな表情を見せてきた? 俺はやましいことは何も考えていないはずだが、何故かとても不安になる。いや、というか――
「あんまり勝手に覗くのは良くないぞ」
「わたくしも普段は勝手に覗かないように調整しているのだけど、温泉入った後から魔力の調子がよくない気がして……」
「じゃあ、わざと覗いたわけではないんだな?」
「もちろんです!」
「ちなみに、何が見えた?」
俺は息を呑む。
「お、おふたりは、惹かれ合っています」
「……それだけか?」
「は、はい。そうですが」
「毎日一緒に切磋琢磨子育てしていたからな。敵同士の時と比べたら、ふたりの仲はマシになっている気はする。まぁ、一方的にそう思っていたのだと思っていたのだが、魔王もってことか……」
魔王も同じような気持ちなのか。ほっとするような、なんだか胸の辺りが温かくなった。
「惹かれ合うの意味が別の意味で……」
「別の意味とは……」
エウリュは目を伏せながら呟いた。
「ラブです」
「……はっ?」
魔王には聞かれてないよなと焦りながら振り向くと、魔王は目の前にいた。どこまで聞いていたんだ?
「先に温泉に行ってるぞ」
「あっ、待てよ! エウリュ、また明日」
早歩きで進んでいく魔王を追いかけた。
エウリュは何を言ってるんだ? 俺と魔王がラブだと――?
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