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7*新井くんの告白

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 次の日の朝、宮野くんに質問してみた。

「ねぇ、宮野くんは元の世界に帰りたい?」
「そうだなー。この世界も楽しいけど、家族に会いたいし、友達にも。帰りたいな」
「そうだよね? 帰りたいよね……」
「小松は?」
「私は……」

 その時、家のチャイムが鳴った。

「えっ? 何?」
「小松、そこにいて? 見てくる」

 宮野くんは玄関へ。

 私はじっとソファーに座って待っていた。
 けれど心配になり、後ろからそっと覗いてみる。
 
 なんと、そこにいたのは、葵ちゃんと新井くんだった。

 私の存在に気がつく葵ちゃん。

「結芽、話しを聞いてほしいの!」
「聞くも何も、あそこでふたりでいたのが答えじゃない?」
「違う! 絶対勘違いしてる」
「じゃあ、なんでいたの?」

「小松さんに言いたいことがあるんだ。ちょっと、こっちに来て?」

 葵ちゃんと話をしている途中、新井くんがそう言った。
 
 新井くん、ちょっと眉間にシワを寄せて、ちょっと難しい顔をしている。

 ――どうしたんだろう。



 新井くんが強めに私の手を引っ張ってきた。
 ふたりで外に出る。

「隣の可愛い家、小松さんが出した家でしょ?」
「うん……そうだけど」
「やっぱりね。中に入るね」

 中に入ると新井くんがドアのカギを内側からかける。

「おじゃまします」

 リビングに向かう新井くん。
 私は彼についていく。

 一緒にソファーに座ると新井くんがメガネを外して私を見る。

 新井くんはインテリ系なイケメン。
 近くで見つめられて、ちょっとだけドキッとした。

「小松さん、聞いて? 僕、小松さんのことが……」

 新井くんが何か言おうとした瞬間、玄関のドアを叩く音がした。

「新井くん、カギ開けて!」

 葵ちゃんが叫んでる。
 新井くんは真剣な表情でじっと私を見つめてる。

「新井くん?」 
「小松さん、僕は小松さんが好きなんだ。だから小松さんも、僕に好きって言って?」




 突然何?
 もしかして――。

 新井くん、ここから出る方法を知ってるっぽい?
 お互いに好きって言い合う方法を?

「待って! 私が好きなのは……」

「知ってる。宮野が好きなんでしょ?」

「なんで知ってるの?」

「だって、ずっと前から小松さんの態度で気がついていたから。僕はずっと、ずっと小松さんのこと、見ていたんだ」

「えっ?」

「よく宮野を目で追ってるのとか、宮野に話しかけられると小松さんの顔が赤くなるのとか、知ってる……知ってるけど、僕は小松さんが好きで。付き合いたいんだ」

 初めて告白された。

 すごく一生懸命に気持ちを伝えてくれて。  
 だけど私の気持ちは――。

「私は、宮野くんが好きなの。だから気持ちを受け取れない、ごめんね」

 すっと自然に今、言葉が出てきた。
 言葉にしてあらためて確認する。

 私は、宮野くんのこと、こんなにも好きなんだなって。

 本人の前でこうやって素直に言えたらいいのに。

「そうだよね、なんか強引に手を引っ張っちゃったり、こんなこと言ったり、色々ごめんね」

「こっちこそ、ごめんなさい」

「小松!」

 その時、後ろから宮野くんの声がした。

「ドアのカギかかってたのに、どうやって入ってきたの?」

「裏の窓のカギが開いてた」

 今、葵ちゃんと宮野くんは並んで立っている。

 美男美女で、すごくお似合いだな。
 葵ちゃんに勝てる要素なんて、ひとつもない。

「結芽、ちょっと来て?」

 今度は葵ちゃんに手を引っ張られる。
 そして葵ちゃんが言った。

「ふたりで話すから、誰も来ないでね!」って。

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