キミと羊毛フェルト、そしてぬい活。

立坂雪花

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5*叶人視点 一番の。

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「可愛い!」

 僕は完成したうさぎのもっふんちゃまと目が合った瞬間、叫んだ。

 陽向くんが家に泊まってくれて、朝からも一緒に制作作業をしていた。昼が過ぎた頃、ついにうさぎのもっふんちゃまは完成した。「顔を可愛くできる自信がないから、やってほしい」と陽向くんがお願いをしてきた。鼻と口と頬、そしてつぶらな目の位置はうさぎのもっふんちゃまの顔を何回もネットで確認しながら、僕が作った。

「叶人は、可愛くするのも上手だな」
「顔は大事だからね、可愛くできてよかった! 陽葵ちゃん、喜んでくれるかな?」
「想像以上に上手く可愛くできたし、陽葵の反応が楽しみだ。叶人、ありがとな!」

 陽葵ちゃんが喜んでくれるのも嬉しいし、陽葵ちゃんが喜ぶと陽向くんも嬉しくなる。そしたら僕も嬉しくなって、幸せな気持ちになれるんだ――。

 どうか喜んでくれますように!

「ラッピングはうちで、こそっとやるわ」
「うん、分かった」

 うさぎのもっふんちゃまを陽向くんに渡す時、陽向くんの手と僕の手が触れて、僕の全身がビクッとなった。


「「あっ、ごめん――」」

 ふたり同時に謝った。

 またドキドキしてきてしまった。
 僕は昨日の夜から、陽向くんをとても意識してしまっている。

 陽向くんとハグをした時のドキドキは、本当に凄かった。陽向くんがお風呂に入ってからもしばらくずっと「これは恋なのかな?」って考えていた。けれど、もうすぐ完成するうさぎのもっふんちゃまが目に入って、僕は今、恋について考えている場合ではない。やらなければならない使命があるのだと思い出して、作業を再開させた。それからは表面では何事もなかったかのように今、この時まで過ごしてきた。

「か、叶人は、次、何を作るの?」
「小鳥かな? 陽向くんは?」

 顔を見るともっとドキドキしそうだけど、目をそらしすぎたら陽向くんが悲しい気持ちになってしまうかもしれない……僕は頑張って、陽向くんと目を合わせた。

「どうしよう……叶人と作るの楽しかったから、また何か作りたい気がするけれど」

――僕と一緒に作るの、楽しいって思ってくれたんだ。嬉しいな!

「陽向くんが一番好きなものを作るとか? そしたら完成させるのがもっと楽しみになって、楽しくなるよ」

 陽向くんは僕の顔をじっと見てきた。

「じゃあ、叶人を作ってみようかな――」
「ぼ、僕ですか?」
「うん、だって、ほら……いや、うん」
「じゃあ……僕も陽向くん作ってみようかな」

 今の話の流れって、一番好きなのは僕って意味だよね? だから僕も一番好きな陽向くんを作ってみようかな?って思った。

 その気持ちをそのまま陽向くんに伝えたいけど、なんか恥ずかしくて言えない。昨日までは素直に好きって気持ちを伝えられていたのに。

――恋の好きを意識しちゃうと、どうしてだろう。上手く伝えられなくなっちゃう。

***




 連休が過ぎて、さらに暖かい季節になった。

 お互いのキャラを羊毛で作ることになったから、学校か家で少しずつ作業を一緒に進めた。まずは二頭身ぐらいのキャラにした僕たちのイラストを描いた。陽向くんは実はあんまり絵を描くのが得意ではなく。陽向くんの数少ない弱点かな? 〝陽向くんが作る僕〟も、僕が描くことに。

 イラストが描けたら、それを参考にしながら各パーツを型紙に、羊毛を直接重ねて大きさが確認できるように、実物の大きさにして描く。

 作りたいイメージのイラストは毎回簡単に描いていたけれど、こんな感じかなと、いつもは感覚だけで羊毛フェルトをやっていた。こんな丁寧に型紙に描いたりするのは初めて。

 陽向くんを作るのだから、多分過去最高に丁寧に作る予感がする。今回は期限がないから、羊毛フェルトの陽向くんにスズメのショルダーバッグを持たせたいなとか、追加でアイディアが浮かんでくる。

 チクチクチク……。

 僕たちの羊毛フェルト制作作業は進んでいく。本当に一緒に作業をする時間が幸せ――。

 ちなみに陽向くんは無事にうさぎのもっふんちゃまを渡せたみたい。「予想以上に喜んでくれた」って言いながら、陽向くんはニコニコして嬉しそうで、僕も幸せな気持ちになれた。

 陽向くんは僕にたくさんの幸せをくれる。

 ずっとずっと、陽向くんと一緒にいたい。もしも恋人になったら、その願いは叶うのかな? 

 陽向くんには内緒だけど、僕はハグしてからずっと陽向くんを恋の人として意識をしているし、恋人になっても良いと思っている。前よりも陽向くんがキラキラしてみえるし、一緒にいてドキドキすることも増えた。それと、もしかしたらだけど、ハグをしたから僕の中で眠っていた陽向くんへの恋心が覚醒し、今の気持ちになったのかもしれなくて。実は昔から陽向くんのことを恋の人として好きだったのかもしれないとも考えた。

 だけど恥ずかしいから、陽向くんには何も伝えられなさそう――。
 


 ちょうど夏休みに入る前に、ふたりの羊毛フェルトキャラは完成した。

今回作っている羊毛フェルトの目は、漫画やアニメみたいな目で、顔の土台に直接細かく羊毛を植え付けるようにニードルを刺してしていく。鼻や口もそうやっていたけれど、特に目は簡単ではない。まつ毛やキラキラ目になるように白い部分もあるから、本当に細かく丁寧にチクチクした。もちろん陽向くんが作った僕の目も、僕がやった。

 陽向くんの目の色は黒髪だから、だいたいの色が似合うかな?って思って迷ったけれど、深緑にした。

 その理由は、陽向くんは森の香りの入浴剤が昔から好きだから。小さい頃は一緒にお風呂に入っていた。その時、森の香りがする入浴剤の匂いを気に入って、湯船に浸かりながらその香りを思いきり何回も陽向くんは吸い込んでいた。

今も陽向くんが泊まりに来る予感が少しでもある日には、脱衣所にある、数ある香りの中から森の香りを選び、お湯の中にあらかじめ投入している。

 そして陽向くんは太陽のようでもあるけれど、森のようでもあるし。

服装も明るい黄緑色のTシャツと青いデニムのズボン。そしてスズメのショルダーバッグと、いつも履いているような黒いスニーカーも履かせた。

 僕の目は、明るい茶色の地毛よりも明るい黄みがかった茶色。服装はパステルイエローのチュニックと、陽向くんとお揃いのデニムズボン。そして白いスニーカー。これは陽向くんが決めてくれた。僕のイメージだって――。それに追加して、シマエナガのショルダーバッグも。




「可愛い!」

 今回もふたりのキャラと目が合って、僕は叫んだ。

「これって、叶人が作った俺を、俺がもらう感じかな?」
「どうしようね? ふたり離ればなれになるのもちょっと寂しそうかも……」

 手を繋いでいるように見えるようにふたりのキャラを並べて、窓のところに置いてみた。

「とりあえず、手を繋がせてここに置いておくか?」
「そうだね、そして陽向くんの部屋に遊びに行ったりもして……この子たちはふたりでいつも一緒にいる感じだね!」

 まるで、僕と陽向くんみたい――。


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