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後宮・改革編①
51.一の妃の願いと陰気の恐怖
後宮妃・“一の妃”との本音トークを終えた宝玉。
“一の妃”からの願いを聞いた後宮妃・宝玉は、それを叶える為、早速自らが行動に移す。
“一の妃”の願いは、皇帝の寵愛を得られることもない後宮妃たちをいたずらに後宮に留め置かず、自由の身にすること。
女たちの悲哀や嫉妬に憂い、そのようなものばかりが蔓延る〈後宮〉そのものを無くすことを切に願い出たのだ。
そして〈後宮〉が廃宮となれば、後宮妃として入宮していることになっている“一の妃”の姉・沐瑶が、堂々と生家に戻ることもできる。
それこそ、姉・沐瑶のふりを続けている弟・沐辰(※現、“一の妃”)の一番の願いでもあるのだ。
「私は姉の子に家督を継いで欲しいと思っているのです。幼い頃に大病を患った私には、本来備わる男としての機能は失せております。それに私は男として生きるよりも、女として生きる方が性に合っております」
「……? それは一体どういう意味でしょう?」
「私の心と体は違うということです。私は男として生まれてはきましたが、中身は淑女だということです。私が好む方はいつも貴公子ばかりです。それは私の心が女性であるからだと思っております」
「えっ? ええーーーっ!!」
びっくり仰天の宝玉。
とんでもない告白を聞いたよ……と宝玉の黒曜石の瞳は驚嘆でまん丸に見開く。
「……驚かれましたか?」
「まさか……そのようなことはありません。私の瞳は元々大きいのです。人には色々と事情があるものだと改めて教えられました」
ーー父さん、母さん……王都は不思議がいっぱいです。炫様といい、綺麗な人が多いので宝玉は驚かされてばかりです。“一の妃”様は淑女以上に淑女を極めたお方でした。
最後に“一の妃”はこうも告げた。
「姉の沐瑶は……そのような私にもかかわらず、心から受け入れ、寄り添ってくれました。だからこそ、他国へと嫁した姉の沐瑶には、生まれ育った生家へと自由に帰れる身であって欲しいと思うのです」
「“一の妃”様の切実な思いは伝わりました。後宮妃の身分でなくなれば、皆がもっと自由に生きることもできると私も思います」
ーー皇帝である炫様が「後宮妃そのものの身分」を名簿から抹消してくだされば、誰が誰と婚姻を結ぼうとも自由だし、生きたいように生きることもできるかもしれない。
宝玉は考える。
ーー美玉ちゃんや“二の妃”様のように、自由に自分らしく……。
皇帝・王炫自身が〈後宮〉を「負の遺産」と言い放つほどだ。
ーーお願いしてみる価値はある。
宝玉は、三度目の「一生のお願い」をすることになる。
◇
少し遡る。
宝玉へと意外なことまで語って聞かせた後宮妃・“一の妃”がいる。
「宝玉様……私は目に見えないモノを感じることもあるのです。常々より、この場所にはかつての後宮妃たちをも含め、陰気な感情ばかりが渦巻いております。感受性の強い者であれば余計にその気に当たられ、悪しき感情さえ芽生えさせてしまうこともありましょう」
ーーああっ、なるほど。だから、“二の妃”様や美玉ちゃんも……。
納得の宝玉。
「かつては自ら命を断つ後宮妃もおりました。特に〈冷宮〉送りになる者たちには未来は望めません。あそこは元々陰気に満ちた場所でした。無念の死を迎えた者たちの怨念も彷徨い……それに釣られるようにして、後宮妃が一人、また一人と……」
「ちょーっと! お待ちください、“一の妃”様!」
「いかがなされました、宝玉様?」
ケロッとしている“一の妃”とは違い、ブルブルと震える宝玉は怪異と呼ばれることは苦手。
「実は私は、そう言ったモノが苦手でございます。これ以上は……」
「まぁっ、おほほっ……皇帝陛下をも畏れない宝玉様にも怖いものがあるとは驚きました。ふふっ……それすらも愛嬌があってお可愛らしい宝玉様のことです。余計に皇帝陛下の庇護欲をそそるのでしょうね」
美しい笑みを浮かべる“一の妃”。
「宝玉様……ご安心ください。太陽のような陽の気をお持ちになる貴女様のおかげで、〈後宮〉も〈冷宮〉と呼ばれた〈温宮〉も……今では陽の気に満ち溢れております。だから、そう怖がられる必要はありません」
そうは言われても宝玉。
だが、思い出すと怖さが甦る。
恐怖とは、そういうものだ。
◇
今宵は〈帝宮〉で過ごす日。
“一の妃”の言葉に、恐怖から身震いする宝玉は思わず叫ぶ。
「炫様っ! 宝玉を抱きしめてください! 絶対に離さないでください! お願いします!」
「無論だ」
一気に相好を輝かせる皇帝・王炫。
「……可愛いやつだ」
言うそばから宝玉を強く抱きしめ、さらには口付け以上のことまでしたとか、していないとか。
自分から皇帝・王炫の胸の中へと飛び込んだ宝玉だが、朝目覚めれば、はだけた夜着からは桃饅頭のような胸が全開に……。
「あれれっ……お胸が大きくなった?」
素知らぬ顔の皇帝・王炫。
「宝玉……成長期のおまえなら胸も成長する。昨日よりは今日と日々成長し、立派な桃饅頭の出来上がりだ。まぁ、余の努力の賜物でもあるが……実にうまそうだ」
「……?? 炫様、何の話しですか?」
「気にするな、宝玉。もう少し眠るぞ」
そして、起き抜けの愛らしい宝玉を己の胸の中へと引き寄せる皇帝・王炫。
何食わぬ顔で、本日二度寝に走る。
◇
翌日。
宮女・美玉を供につけ、宝玉が意気揚々と向かったのは〈後宮〉に住まう他の後宮妃たちのもと。
事前に侍女の一人を遣わしている宝玉。
「麗しの後宮妃の皆様方へとご機嫌伺いに参ります。なお、歓待などは必要ありません。お気を楽にお待ちください……云々」
そう文に書き記している。
そして後宮妃一人一人と対面する宝玉がいる。
“一の妃”からの願いを聞いた後宮妃・宝玉は、それを叶える為、早速自らが行動に移す。
“一の妃”の願いは、皇帝の寵愛を得られることもない後宮妃たちをいたずらに後宮に留め置かず、自由の身にすること。
女たちの悲哀や嫉妬に憂い、そのようなものばかりが蔓延る〈後宮〉そのものを無くすことを切に願い出たのだ。
そして〈後宮〉が廃宮となれば、後宮妃として入宮していることになっている“一の妃”の姉・沐瑶が、堂々と生家に戻ることもできる。
それこそ、姉・沐瑶のふりを続けている弟・沐辰(※現、“一の妃”)の一番の願いでもあるのだ。
「私は姉の子に家督を継いで欲しいと思っているのです。幼い頃に大病を患った私には、本来備わる男としての機能は失せております。それに私は男として生きるよりも、女として生きる方が性に合っております」
「……? それは一体どういう意味でしょう?」
「私の心と体は違うということです。私は男として生まれてはきましたが、中身は淑女だということです。私が好む方はいつも貴公子ばかりです。それは私の心が女性であるからだと思っております」
「えっ? ええーーーっ!!」
びっくり仰天の宝玉。
とんでもない告白を聞いたよ……と宝玉の黒曜石の瞳は驚嘆でまん丸に見開く。
「……驚かれましたか?」
「まさか……そのようなことはありません。私の瞳は元々大きいのです。人には色々と事情があるものだと改めて教えられました」
ーー父さん、母さん……王都は不思議がいっぱいです。炫様といい、綺麗な人が多いので宝玉は驚かされてばかりです。“一の妃”様は淑女以上に淑女を極めたお方でした。
最後に“一の妃”はこうも告げた。
「姉の沐瑶は……そのような私にもかかわらず、心から受け入れ、寄り添ってくれました。だからこそ、他国へと嫁した姉の沐瑶には、生まれ育った生家へと自由に帰れる身であって欲しいと思うのです」
「“一の妃”様の切実な思いは伝わりました。後宮妃の身分でなくなれば、皆がもっと自由に生きることもできると私も思います」
ーー皇帝である炫様が「後宮妃そのものの身分」を名簿から抹消してくだされば、誰が誰と婚姻を結ぼうとも自由だし、生きたいように生きることもできるかもしれない。
宝玉は考える。
ーー美玉ちゃんや“二の妃”様のように、自由に自分らしく……。
皇帝・王炫自身が〈後宮〉を「負の遺産」と言い放つほどだ。
ーーお願いしてみる価値はある。
宝玉は、三度目の「一生のお願い」をすることになる。
◇
少し遡る。
宝玉へと意外なことまで語って聞かせた後宮妃・“一の妃”がいる。
「宝玉様……私は目に見えないモノを感じることもあるのです。常々より、この場所にはかつての後宮妃たちをも含め、陰気な感情ばかりが渦巻いております。感受性の強い者であれば余計にその気に当たられ、悪しき感情さえ芽生えさせてしまうこともありましょう」
ーーああっ、なるほど。だから、“二の妃”様や美玉ちゃんも……。
納得の宝玉。
「かつては自ら命を断つ後宮妃もおりました。特に〈冷宮〉送りになる者たちには未来は望めません。あそこは元々陰気に満ちた場所でした。無念の死を迎えた者たちの怨念も彷徨い……それに釣られるようにして、後宮妃が一人、また一人と……」
「ちょーっと! お待ちください、“一の妃”様!」
「いかがなされました、宝玉様?」
ケロッとしている“一の妃”とは違い、ブルブルと震える宝玉は怪異と呼ばれることは苦手。
「実は私は、そう言ったモノが苦手でございます。これ以上は……」
「まぁっ、おほほっ……皇帝陛下をも畏れない宝玉様にも怖いものがあるとは驚きました。ふふっ……それすらも愛嬌があってお可愛らしい宝玉様のことです。余計に皇帝陛下の庇護欲をそそるのでしょうね」
美しい笑みを浮かべる“一の妃”。
「宝玉様……ご安心ください。太陽のような陽の気をお持ちになる貴女様のおかげで、〈後宮〉も〈冷宮〉と呼ばれた〈温宮〉も……今では陽の気に満ち溢れております。だから、そう怖がられる必要はありません」
そうは言われても宝玉。
だが、思い出すと怖さが甦る。
恐怖とは、そういうものだ。
◇
今宵は〈帝宮〉で過ごす日。
“一の妃”の言葉に、恐怖から身震いする宝玉は思わず叫ぶ。
「炫様っ! 宝玉を抱きしめてください! 絶対に離さないでください! お願いします!」
「無論だ」
一気に相好を輝かせる皇帝・王炫。
「……可愛いやつだ」
言うそばから宝玉を強く抱きしめ、さらには口付け以上のことまでしたとか、していないとか。
自分から皇帝・王炫の胸の中へと飛び込んだ宝玉だが、朝目覚めれば、はだけた夜着からは桃饅頭のような胸が全開に……。
「あれれっ……お胸が大きくなった?」
素知らぬ顔の皇帝・王炫。
「宝玉……成長期のおまえなら胸も成長する。昨日よりは今日と日々成長し、立派な桃饅頭の出来上がりだ。まぁ、余の努力の賜物でもあるが……実にうまそうだ」
「……?? 炫様、何の話しですか?」
「気にするな、宝玉。もう少し眠るぞ」
そして、起き抜けの愛らしい宝玉を己の胸の中へと引き寄せる皇帝・王炫。
何食わぬ顔で、本日二度寝に走る。
◇
翌日。
宮女・美玉を供につけ、宝玉が意気揚々と向かったのは〈後宮〉に住まう他の後宮妃たちのもと。
事前に侍女の一人を遣わしている宝玉。
「麗しの後宮妃の皆様方へとご機嫌伺いに参ります。なお、歓待などは必要ありません。お気を楽にお待ちください……云々」
そう文に書き記している。
そして後宮妃一人一人と対面する宝玉がいる。
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