公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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公爵家・現在編

61.グラント公爵家の双子星と至福

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 幸せに満ち溢れるグラント公爵家。

 季節が巡れば、グラント公爵夫妻に嫡子となる待望の双子の男の赤ちゃんが誕生。

 美しい一卵性の双子星。

 先代グラント公爵夫人ハリエッタにより真名を授けられた双子は、幸福を意味する「アシェル」と「アッシャー」と命名される。

 2人の赤子は、グラント公爵家にもたらされた幸福の象徴とも云える存在。

 双子星ともに美しい顔立ちは母キャロライン似だが、漆黒の髪と新緑のような翡翠の瞳は父ダリウスと同じ。

 紛れもなくグラント公爵家の血統を色濃く受け継いでいる。

 グラント公爵ダリウスの深過ぎる愛情の賜物とも云える双子星。思い起こせば、愛妻キャロラインが寝台から起き上がれないほどに愛でに愛でた夫君ダリウス。彼の努力と根性と溺愛が確実に実を結んだ結果。

「どんだけ溺愛が過ぎるんだよ」

 当家に仕える人達を驚嘆させたことは言うまでもない。


 ◇


 グラント公爵夫人キャロラインの懐妊時へと話が戻る。

 生来より華奢な質の公爵夫人キャロライン。安定期を過ぎた頃から徐々に膨らみ始める彼女の懐妊胎だが、目に見えて大きい。これには憂慮するイーデン王妃フレイヤ。すぐに王宮医師長をグラント公爵家へと遣わす。

 老齢に差し掛かりながらも名医と謳われる王宮医長は、身重な公爵夫人キャロラインを診察。次には相好を崩し、穏やかな声音で告げる。

「公爵夫人を診察致しましたところ、実に喜ばしいことが判明致しました。2つの胎動が確認できます。通常よりもお腹の膨らみがあるのは、授かった赤子が1人ではないからでしょう」

「それは、つまり……」

 寝台に横たわる公爵夫人キャロラインに寄り添う夫君ダリウス。慎重な面持ちで聞き返す。

 ホッホッホッ……と笑い声を立てる王宮医長。

「これはこれは頑張りましたね、公爵閣下」

 好々爺のごとく告げる王宮医長の労いの言葉。

 一方のグラント公爵ダリウスは少々恥ずかしげに顔を背ける。おそらくは愛妻キャロラインとの濃密な蜜夜を思い出しては、今更ながらに照れている様子。

 此処で「こほんっ」と咳払いをする王宮医長は先を続ける。

「公爵夫人が宿されたお子様はお2人で間違いありません。鼓動も脈動も強いので母子共に問題もないでしょう。今後もしっかりと滋養のつく物を食し、心と体を労わり、後の御産に備えて下さい」

 柔らかな声音で告げる。その途端。

「まぁ! なんという慶事でしょう……!」

 グラント公爵夫妻が歓びの雄叫びを上げる前に、真っ先に驚嘆に叫んだのは、実は先代グラント公爵夫人ハリエッタ。

「我が公爵家に新たな家族が2人も増えるとは! キャロライン、貴女は本当に素晴らしい義娘だわ! まさに至福をもたらす女神ね。貴女には感謝しかないわ、キャロライン……本当にありがとう。貴女には……心から礼を言うわ。ありがとう……」

 最後は感極まり、歓びに咽び泣く先代グラント公爵夫人ハリエッタ。

「きゃあっ! やったー……!」

 歓びの声を上げるアンジェラ。しまいには侍女マイリーと手を重ね合わせては飛び上がる。共に歓びを分かち合う2人。

「マイリー、私ね。グラント公爵家の娘で本当に幸せだわ!」

 大はしゃぎのアンジェラ。


 ◇


 素晴らしい1日を終えた其の日の夜。

 興奮のあまり眠れないアンジェラがいる。

 そっと寝台から起き上がり、窓辺から美しい月を見上げては、この先のグラント公爵家の多幸を心から祈る。ついで何事かに想いを馳せては、愛らしい顔を赤らめるアンジェラの姿がある。




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