公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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王家の舞踏会・披露目編

52.天使と披露目の舞踏会と入場

 ただでさえ、煌びやかな〈王家の舞踏会〉。

 純白の衣装で揃えられた清廉で無垢な乙女達。彼女達を温かな眼差しで見守る多くの貴族達……と思いきや、彼等の視線は或る一点に集中。

 それもそのはず。見ない方がどうかしている。

 王侯貴族にも引けを取らない華やかなグラント公爵ダリウスとキャロライン夫妻に、公爵令嬢アンジェラとエスコート役の辺境伯。その一団が正面の大扉ではなく、別の小扉からこっそりと入場したのだ。

 余計な注目を浴びたくはないアンジェラへの配慮が成された形。だが、次の瞬間には無駄骨と化す。

 アンジェラをめざとく見つける1人の令嬢。

「アンジェラお姉様っー……!!」

 大声で名前まで叫び突進するヘイスティング侯爵令嬢バーバラ。大好きなアンジェラを見つけたのなら、なり振りなどは構っていられない。

 おかげで様で「なんだ、なんだ……」と騒つく大広間。皆の視線はアンジェラ達に釘付け。大注目を浴びるハメに。

 姉とも慕う大好きなアンジェラと揃いの衣装で合わせたヘイスティング侯爵令嬢バーバラは、アンジェラの隣りへと並び立つことに胸をときめかせている。

 アンジェラを待ちに待っていた侯爵令嬢バーバラは、ずーっと待ち焦がれていた……と言った方が正しい。

 まるで恋人を待つかの如く「今か今か……」と気もそぞろな様子で、そわそわと落ち着かない侯爵令嬢バーバラがいる。

 父であるヘイスティング侯爵は、浮き足だっている愛娘バーバラを優しく諭す。

「バーバラ、少しは落ち着こうか?」

「無理ですわ、お父様! バーバラはアンジェラお姉様の美しい晴れ姿を見るまでは死ねません」

 四方八方へとアンテナを張り巡らせては、アンジェラ探知に勤しむ侯爵令嬢バーバラ。その甲斐あってか、舞踏会場へと密かに入場するアンジェラを誰よりも早く見付け出す。

「アンジェラお姉様! バーバラはずーっとお待ちしておりました! アンジェラお姉様……今日は一段とお綺麗でバーバラは卒倒ものです!」

 ようやく見つけたアンジェラへと抱き付いてみせる侯爵令嬢バーバラ。これには苦笑するヘイスティング侯爵。だが、アンジェラは違う。

「バーバラちゃんも……とっても綺麗だよ!」

 可愛い……と自分を慕ってくれる侯爵令嬢バーバラを自ら抱き締める。

 常に本心をひた隠し、表面上だけを取り繕う世渡り上手な貴族よりは、侯爵令嬢バーバラのような素直な感情の持ち主の方が、断然好ましいと思うアンジェラ。

「貴族の損得勘定は抜きにして、仲良しなお友達とぐらいは本心を明かして付き合いたいかなぁ。バーバラちゃんは妹みたいで可愛いし……」

「うんうん……そうよね。ママもそう思うわ」

 公爵夫人キャロラインも賛同。

 やんややんやと身内の如く慣れ親しむ一団。

 華やかなグラント公爵一家に、明朗なヘイスティング侯爵父娘まで加われば、尚更に注目の的。

 一層、華やぐ〈黄金の大広間〉。


 ◇


 イーデン国王夫妻の来訪を告げるラッパの音が鳴り響く。

 続いて〈黄金の大広場〉へと登場したのは、煌々しいイーデン国王フレデリックと王妃フレイヤ夫妻が玉座へと登壇する。もちろん、王太子フェリクスも登壇。

 すぐさまお目当てのアンジェラを見付ける王太子フェリクス。

「私のアンジェラが美しい。いつも以上に綺麗だ。一層のこと食べてしまいたい……」

 堪らない……と惚気る王太子フェリクス。

 彼も一人の健全な男子。目の前に美味しそうな花が咲いていれば、その甘い蜜を吸いたいと思うもの。

 据え膳食わぬは男の恥……とな。

 王太子フェリクス細められた蒼い瞳は、うっとりとアンジェラを見つめ、ひたすらに視線を送り続ける。だが、一向に気付いてもらえない。

 それもそのはず。

 敢えて見ないようにしているアンジェラがいる。

 遂に、アンジェラの心境にも変化が……。











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