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4章
66-2. 偽らざれども、秘密もあれば嘘も吐く。 ルピス
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頬にひやりとした感触がして目を覚ましたら、私の頬に手を当てている従者様と目が合った。
「あ、起こしてしまったか」
「従者様……私は、どういう……?」
「ルピス。きみは有瓜のお節介で、さっきやっと目が覚めたのに、また気を失ってしまっていたんだよ」
「あぁ……私はどれくらい寝ていたの?」
「有瓜にやられて気絶してから、三十分くらいだ。あ……時刻の数え方、三十分で通じるんだよな? 一日は二十四時間で、一時間は六十分――だよな?」
「ええ、それで合っているわ」
「よかった。そこは国が違っても同じなんだな」
「元を正せば、大陸はひとつの国だったのだもの。言葉も度量衡も、そのときから大して変わっていないのね。でも、そんなことを確認してくるなんて、なんだか可笑しい」
「笑うなよ。それより――ロイドだ」
「……ええ」
従者様――ロイドが頬を赤らめて言うものだから、頷く私も頬がほんのり火照ってしまった。
それからロイドは、私が眠っていた間のことを話してくれた。そこで初めて、私は自分が三日も寝込んでいたのだと知った。と言っても完全に昏睡していたわけではなく、私自身にその記憶は全くないのだけど、何度か目を覚ましては重湯を啜ったりしていたらしい。
私がそうして寝ているうちに、ふたつの葬儀が終わっていた。私の家臣団だった者たちと、彼らに斬殺されたゴブリン二名の葬儀だ。後者は当然として、前者については意外だった。自分たちの仲間を殺した相手まで弔ってくれるとは。
「死ねば皆、同じだからな……なんてのは建前で、要するに死体を放置していても良いことはないから、まとめて焼いたってだけだ」
「でも、あの者たちが迷わず昇天するよう、祈ってくれたのよね?」
「あいつらの大半を斬り殺したのは俺なんだが、そんな俺に冥福を祈られて、かえって迷い出てくるかもな」
ロイドは偽悪ぶった顔をしてみせたけれど、私には分かる。彼は憎しみで生者を斬れても、死者にまで憎しみを抱けるひとではない。だから間違いなく、皆が昇天できるように心から祈ってくれたのだろう。
「ありがとう、ロイド。本来なら私が執り行わなければならないことだったのに、敵対者だった貴方の手を煩わせてしまったわ。重ねてお礼と、そして謝罪を言わせて」
「こっちがきみの了解を取らずに、勝手にやったことだ。お礼は受けるけど、謝罪はいいよ。……けどほら、葬儀にも流儀とか色々あるんじゃないのか?」
「ないこともないけれど、どのみち戦地では略儀が基本よ。だから、野晒しでなければ問題ないわ」
「……わりと適当なんだな」
「最近まで内戦していたのよ。国中どこを見ても死体が転がっていたわ。生焼けのなら可愛いほうで、腐りかけのも掃いて捨てて欲しいくらいあった。……内戦なのだから死者は全員、同国民よ。なのに、誰も死体を弔おうとしないの……最初は憤慨したけれど、すぐに理解したわ。皆、最初は弔いを出していたのよ。でも、そのうちに切りがなくなって止めてしまったのね……悪いのは民ではない。死者を弔う気力も失せるほど民を追い詰めた私たちだったのよ」
きっと、柔らかな布団で横になるのが何ヶ月か振りだったせいだ。知らぬ間に気が緩んでいたようで、彼には関係のない弱音を聞かせてしまった。それを誤魔化すために、私は少し早口で続けた。
「……そういうことだから、弔ってくれただけで本当にありがたいの。旅立った皆に代わって、貴方方に感謝を」
「うん、感謝されました。さっきもされたけど」
ロイドは頷きながら苦笑して、これ以上の感謝は結構とばかりに話題を換えてきた。
「それより、身体の具合はどうだ? 有瓜が碌に加減もしないで、その……刺激を流し込んだそうだけど、身体が怠かったりしていないか?」
「あ……ええ、大丈夫よ。もう起き上がれるわ」
私は実際に上体を起こしてみせながら答えた。
確かにあの刺激は二重の意味で衝撃的なものだったけれど、いまはすっかり平気だ。だから、気にしないで欲しい――と言いたかったけれど、万が一にもこの話題を深掘りされたくなかったので、今度は私から話題を換えた。
「ねえ、ロイド。私も墓参したいのだけど、案内してくれるかしら」
「え……うん、構わないよ」
ロイドは起き上がろうとする私に肩を貸してくれた。一人で立てないほどでもなかったけれど、大人しく彼の好意に甘えた。
私が寝ていたのは洞窟の中だった。とても大きな入り口を入ってすぐのところに、私は寝かされていたのだった。
洞窟を出たら、そこは魔物の溜まり場だった。
暗い緑色の肌をした巨躯の人型魔物がそこらでごろんと横になって昼寝したり日向ぼっこしたり遊戯盤を囲んでいたり取っ組み合いしていたり――とにかく思い思いに寛いでいた。それは、私が想像していた魔物の在り方とは掠りもしていない、まるで肌の色や体格が違うだけの人間そのものが過ごしているかのような光景だった。
「あれ? こいつらを見たのは初めてだったか?」
ロイドが、面食らっている私に聞いてくる。
「……助けてもらったときに見たとは思うけれど、本当に見ただけだったわ」
「そうか。まあ、身体がでかくておっかないかもだけど、こいつらも忍者の仲間だから、そんなに怖がらないでやってくれ」
どうやらロイドは、私が彼らの姿に怯えたのだと思ったようだ。その勘違いに、私は頭を振った。
「平気よ、ロイド。怖くはないわ。むしろ、安心したくらいよ」
「え……?」
「だって、誰も私に関心を持っていないのだもの」
暗緑色の人型魔物たちは、洞窟から出てきた私を一瞥しただけですぐに視線を戻してしまっていた。それは、城にいたときも城を出てからもずっと声や姿を求められてきた私にとって、あるいは初めて経験する安らぎだった。
牢に閉じ込められたときでさえ、人々は私に関心を向けてきていた。私を竜の巫女と讃えていた肯定の関心を裏返しにした、よくも騙してくれたな、という否定の関心をだ。
――彼らにはそのどちらもが、ない。彼らの目に映る私は、そこらの木々と同じだ。ただの背景だ。
私は、私を特別視しない瞳に出会った。
私の罪はいまこのときをもって、ようやく許されたのだ。
――五歳だった私は、四つ違いの弟から父の愛を取り戻したかった。
弟を攻撃するわけにいかないことは子供心にも分かっていたし、そもそも弟の周りには大人も子供も大勢犇めいていて、私には近づくことも許されていなかった。弟とは母が違うから、ということの意味が五歳の私には分からなくて、ただ妬ましさと淋しさを募らせるばかりだった。
そしてある日、五歳の私は他に誰もいない部屋で風に揺らめくカーテンを無意味に眺めていたとき、ふと思いついたのだ。
――それをすれば、きっと心配してくれる。きっと慰めてくれる。弟ではなく、私を。私を。私を。
……だから実行した。そして、罰を受けた。
私から目を離したという罪を免れようとした者たちによって、私は「竜の巫女」という鉄仮面を被せられた。五歳の私は喜んで、その仮面を被った。それが鉄鋲で打ち留められた一生脱げない呪いの仮面なのだと想像もせず、注目されることを喜んだ。自分は正しかったのだと有頂天になった。
……間違いだったと気づいたときには、仮面は完全に私の顔と癒着していて剥がすことができなくなっていた。
私はこの仮面を被ったまま死ぬのだ。それが、五歳の私が犯した罪への罰なのだ。もうどうしようもないのだと、そう自分に言い聞かせて諦めてきた。
なのに――仮面なんてなかった。
私が仮面を被っていたのではない。私を見る者が、自身の瞳に刺青された仮面の絵を私に重ね見ていたのだ。
ここにいる暗緑色をした彼らの目に、そんな刺青はない。彼らの目に映った私は、見た通りの小娘だ。一瞥をくれる以上に興味を向ける価値もない、そう、ただの――
「あぁ……私はただの小娘だ」
声に出してみたら、ぶるりと震えが背筋を上った。
「……俺の敗因は、なまじお姫様扱いしたことか」
隣でロイドが溜め息混じりに呟いたのが聞こえる。
私は僅かに考えてから、頷きを返した。
……本当はそれだけが理由ではないのだけど、それを包み隠さず伝えるのは憚られた。
でも結局一番の理由は、先ほど感じた初めての絶頂を与えてくれたのが彼らだと直感したからよ――だなんて、ロイドは一生知らなくてもいいことなのだから。
●
この後、私を守って横死したゴブリン二名の墓と、ついでに彼らにとっては仇である家臣たちの墓を参ったのだけど、とくに語るほどのことは何もなかった。
強いて言うなら、家臣たちの墓が丸裸の土饅頭ではなくて、それなりに見栄えのする墓石を建ててもらっていたことに少し驚いたくらいだ。
「彼らは同族を殺した相手が憎くないのかしら?」
私がそう尋ねたら、ロイドに苦笑された。
「あいつらは、役割は持っても名前は持たない。だから、死人は気にしないんだ。死人という役割は用意されていないからな」
分かるようで分からない説明だったが、視線で不服を訴えた私に、ロイドは苦笑したまま言った。
「俺に説明させるより、これから自分で知っていくほうがいいんじゃないか?」
「……そうね。その通りだわ」
私が力一杯頷いたら、ロイドの苦笑が深まった。
長旅で切らなかった髪が肩口でばっさり切られていたのに気づいたのは、墓参りに向かう道中でのことだった。
ずっと背中にへばり付いていた竜模様の火傷痕が、フッカーの放った火魔術で負った火傷ごと治癒されて跡形もなく消え去っていたことに気づいたのは、墓参りから戻った後、本物の巫女様に誘われて水浴びに行ったとき、巫女様に「背中も綺麗に治りましたね」と言われてからのことだった。
三日寝て起きたら、私は王でも王族でもない、ただのルピスになっていた。
十年来の夢が叶ったというのに私は泣きじゃくってしまって、巫女様をとても心配させてしまうのだった。
「あ、起こしてしまったか」
「従者様……私は、どういう……?」
「ルピス。きみは有瓜のお節介で、さっきやっと目が覚めたのに、また気を失ってしまっていたんだよ」
「あぁ……私はどれくらい寝ていたの?」
「有瓜にやられて気絶してから、三十分くらいだ。あ……時刻の数え方、三十分で通じるんだよな? 一日は二十四時間で、一時間は六十分――だよな?」
「ええ、それで合っているわ」
「よかった。そこは国が違っても同じなんだな」
「元を正せば、大陸はひとつの国だったのだもの。言葉も度量衡も、そのときから大して変わっていないのね。でも、そんなことを確認してくるなんて、なんだか可笑しい」
「笑うなよ。それより――ロイドだ」
「……ええ」
従者様――ロイドが頬を赤らめて言うものだから、頷く私も頬がほんのり火照ってしまった。
それからロイドは、私が眠っていた間のことを話してくれた。そこで初めて、私は自分が三日も寝込んでいたのだと知った。と言っても完全に昏睡していたわけではなく、私自身にその記憶は全くないのだけど、何度か目を覚ましては重湯を啜ったりしていたらしい。
私がそうして寝ているうちに、ふたつの葬儀が終わっていた。私の家臣団だった者たちと、彼らに斬殺されたゴブリン二名の葬儀だ。後者は当然として、前者については意外だった。自分たちの仲間を殺した相手まで弔ってくれるとは。
「死ねば皆、同じだからな……なんてのは建前で、要するに死体を放置していても良いことはないから、まとめて焼いたってだけだ」
「でも、あの者たちが迷わず昇天するよう、祈ってくれたのよね?」
「あいつらの大半を斬り殺したのは俺なんだが、そんな俺に冥福を祈られて、かえって迷い出てくるかもな」
ロイドは偽悪ぶった顔をしてみせたけれど、私には分かる。彼は憎しみで生者を斬れても、死者にまで憎しみを抱けるひとではない。だから間違いなく、皆が昇天できるように心から祈ってくれたのだろう。
「ありがとう、ロイド。本来なら私が執り行わなければならないことだったのに、敵対者だった貴方の手を煩わせてしまったわ。重ねてお礼と、そして謝罪を言わせて」
「こっちがきみの了解を取らずに、勝手にやったことだ。お礼は受けるけど、謝罪はいいよ。……けどほら、葬儀にも流儀とか色々あるんじゃないのか?」
「ないこともないけれど、どのみち戦地では略儀が基本よ。だから、野晒しでなければ問題ないわ」
「……わりと適当なんだな」
「最近まで内戦していたのよ。国中どこを見ても死体が転がっていたわ。生焼けのなら可愛いほうで、腐りかけのも掃いて捨てて欲しいくらいあった。……内戦なのだから死者は全員、同国民よ。なのに、誰も死体を弔おうとしないの……最初は憤慨したけれど、すぐに理解したわ。皆、最初は弔いを出していたのよ。でも、そのうちに切りがなくなって止めてしまったのね……悪いのは民ではない。死者を弔う気力も失せるほど民を追い詰めた私たちだったのよ」
きっと、柔らかな布団で横になるのが何ヶ月か振りだったせいだ。知らぬ間に気が緩んでいたようで、彼には関係のない弱音を聞かせてしまった。それを誤魔化すために、私は少し早口で続けた。
「……そういうことだから、弔ってくれただけで本当にありがたいの。旅立った皆に代わって、貴方方に感謝を」
「うん、感謝されました。さっきもされたけど」
ロイドは頷きながら苦笑して、これ以上の感謝は結構とばかりに話題を換えてきた。
「それより、身体の具合はどうだ? 有瓜が碌に加減もしないで、その……刺激を流し込んだそうだけど、身体が怠かったりしていないか?」
「あ……ええ、大丈夫よ。もう起き上がれるわ」
私は実際に上体を起こしてみせながら答えた。
確かにあの刺激は二重の意味で衝撃的なものだったけれど、いまはすっかり平気だ。だから、気にしないで欲しい――と言いたかったけれど、万が一にもこの話題を深掘りされたくなかったので、今度は私から話題を換えた。
「ねえ、ロイド。私も墓参したいのだけど、案内してくれるかしら」
「え……うん、構わないよ」
ロイドは起き上がろうとする私に肩を貸してくれた。一人で立てないほどでもなかったけれど、大人しく彼の好意に甘えた。
私が寝ていたのは洞窟の中だった。とても大きな入り口を入ってすぐのところに、私は寝かされていたのだった。
洞窟を出たら、そこは魔物の溜まり場だった。
暗い緑色の肌をした巨躯の人型魔物がそこらでごろんと横になって昼寝したり日向ぼっこしたり遊戯盤を囲んでいたり取っ組み合いしていたり――とにかく思い思いに寛いでいた。それは、私が想像していた魔物の在り方とは掠りもしていない、まるで肌の色や体格が違うだけの人間そのものが過ごしているかのような光景だった。
「あれ? こいつらを見たのは初めてだったか?」
ロイドが、面食らっている私に聞いてくる。
「……助けてもらったときに見たとは思うけれど、本当に見ただけだったわ」
「そうか。まあ、身体がでかくておっかないかもだけど、こいつらも忍者の仲間だから、そんなに怖がらないでやってくれ」
どうやらロイドは、私が彼らの姿に怯えたのだと思ったようだ。その勘違いに、私は頭を振った。
「平気よ、ロイド。怖くはないわ。むしろ、安心したくらいよ」
「え……?」
「だって、誰も私に関心を持っていないのだもの」
暗緑色の人型魔物たちは、洞窟から出てきた私を一瞥しただけですぐに視線を戻してしまっていた。それは、城にいたときも城を出てからもずっと声や姿を求められてきた私にとって、あるいは初めて経験する安らぎだった。
牢に閉じ込められたときでさえ、人々は私に関心を向けてきていた。私を竜の巫女と讃えていた肯定の関心を裏返しにした、よくも騙してくれたな、という否定の関心をだ。
――彼らにはそのどちらもが、ない。彼らの目に映る私は、そこらの木々と同じだ。ただの背景だ。
私は、私を特別視しない瞳に出会った。
私の罪はいまこのときをもって、ようやく許されたのだ。
――五歳だった私は、四つ違いの弟から父の愛を取り戻したかった。
弟を攻撃するわけにいかないことは子供心にも分かっていたし、そもそも弟の周りには大人も子供も大勢犇めいていて、私には近づくことも許されていなかった。弟とは母が違うから、ということの意味が五歳の私には分からなくて、ただ妬ましさと淋しさを募らせるばかりだった。
そしてある日、五歳の私は他に誰もいない部屋で風に揺らめくカーテンを無意味に眺めていたとき、ふと思いついたのだ。
――それをすれば、きっと心配してくれる。きっと慰めてくれる。弟ではなく、私を。私を。私を。
……だから実行した。そして、罰を受けた。
私から目を離したという罪を免れようとした者たちによって、私は「竜の巫女」という鉄仮面を被せられた。五歳の私は喜んで、その仮面を被った。それが鉄鋲で打ち留められた一生脱げない呪いの仮面なのだと想像もせず、注目されることを喜んだ。自分は正しかったのだと有頂天になった。
……間違いだったと気づいたときには、仮面は完全に私の顔と癒着していて剥がすことができなくなっていた。
私はこの仮面を被ったまま死ぬのだ。それが、五歳の私が犯した罪への罰なのだ。もうどうしようもないのだと、そう自分に言い聞かせて諦めてきた。
なのに――仮面なんてなかった。
私が仮面を被っていたのではない。私を見る者が、自身の瞳に刺青された仮面の絵を私に重ね見ていたのだ。
ここにいる暗緑色をした彼らの目に、そんな刺青はない。彼らの目に映った私は、見た通りの小娘だ。一瞥をくれる以上に興味を向ける価値もない、そう、ただの――
「あぁ……私はただの小娘だ」
声に出してみたら、ぶるりと震えが背筋を上った。
「……俺の敗因は、なまじお姫様扱いしたことか」
隣でロイドが溜め息混じりに呟いたのが聞こえる。
私は僅かに考えてから、頷きを返した。
……本当はそれだけが理由ではないのだけど、それを包み隠さず伝えるのは憚られた。
でも結局一番の理由は、先ほど感じた初めての絶頂を与えてくれたのが彼らだと直感したからよ――だなんて、ロイドは一生知らなくてもいいことなのだから。
●
この後、私を守って横死したゴブリン二名の墓と、ついでに彼らにとっては仇である家臣たちの墓を参ったのだけど、とくに語るほどのことは何もなかった。
強いて言うなら、家臣たちの墓が丸裸の土饅頭ではなくて、それなりに見栄えのする墓石を建ててもらっていたことに少し驚いたくらいだ。
「彼らは同族を殺した相手が憎くないのかしら?」
私がそう尋ねたら、ロイドに苦笑された。
「あいつらは、役割は持っても名前は持たない。だから、死人は気にしないんだ。死人という役割は用意されていないからな」
分かるようで分からない説明だったが、視線で不服を訴えた私に、ロイドは苦笑したまま言った。
「俺に説明させるより、これから自分で知っていくほうがいいんじゃないか?」
「……そうね。その通りだわ」
私が力一杯頷いたら、ロイドの苦笑が深まった。
長旅で切らなかった髪が肩口でばっさり切られていたのに気づいたのは、墓参りに向かう道中でのことだった。
ずっと背中にへばり付いていた竜模様の火傷痕が、フッカーの放った火魔術で負った火傷ごと治癒されて跡形もなく消え去っていたことに気づいたのは、墓参りから戻った後、本物の巫女様に誘われて水浴びに行ったとき、巫女様に「背中も綺麗に治りましたね」と言われてからのことだった。
三日寝て起きたら、私は王でも王族でもない、ただのルピスになっていた。
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