ファクト ~真実~

華ノ月

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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る

第1話

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~プロローグ~

「……これは……まさか……」

「あぁ………麻薬だよ……」

 ある一室で一人の男が渡されたものを見て驚きの声を上げる。目の前にいる男は薄気味笑いを浮かべながら答える。そして、薄気味笑いを浮かべながら更に言葉を綴る。

「これを使って一人女を攫ってこい。断ったら……分かっているな?」

「……っ!!」

 薄気味笑いを浮かべる男の言葉に男は何も言えない。


 そして、麻薬を受け取るとその部屋を後にした……。



1.

「……はぁ~……」

 特殊捜査室でデスクに片腕を乗せながら槙がため息を吐く。

「どうしたんだよ?ため息なんか吐いて」

 その様子に紅蓮が声を掛ける。

「……新しい彼女がとても素直にいう事を聞いてくれるんだ……」

 槙が恍惚とした表情でそう言葉を綴る。

「は?!彼女?!お前、彼女いたのか?!」

 槙の言葉に紅蓮が驚いたように叫ぶ。

「あぁ………、最近変わったんだ……。前の花子も良かったが今度の藤子は最高だ……」

 どこか夢見るような目で槙が語る。

「彼女がいるなんて聞いてねぇぞ?!」

 紅蓮が槙の襟首を掴みながらそう言葉を吐く。

「なぜお前にいちいち報告しなきゃならんのだ?」
「相棒の俺を差し置いて彼女作ってるんじゃねぇよ!!」
「どんな彼女を作ろうが俺の自由だ」
「どんな彼女か言え!!」
「最高の彼女だ。僕の言うことは何でも聞いてくれるし、困ったときはフォローしてくれたり、いたせりつくせりだな。前の彼女も最高だったが、今の彼女は更に最高だ……」

 槙がいつもの淡々とした口調のようで目を輝かせながら嬉しそうに語る。

「し……槙のくせに生意気だぞ!!」

 紅蓮が更に言葉を吐く。

 その様子に奏はハラハラしながら見ており、透は何かを考えていた。

「あ、分かった。パソコンを新しくしたんだな」

「「パソコン??」」

 透の言葉に奏と紅蓮が声を上げる。

「恐らく、今まで使っていた花丸電機のパソコンから藤島電機のパソコンに変えたってことじゃないか?」

 透が得意の考察でそう言葉を綴る。

「あぁ。前の花子はかなり長い間愛用していたからな。変えようかどうか悩み、店に見に行ったらそこで新発売の藤子に出会ったんだ。ディスプレイしてある藤子を試しに使ってみたら、とても良くてな。悩んだ末、藤子に買い替えたというわけだ」

 槙がそう言葉を綴る。

「じゃあ……、彼女って人じゃなくてパソコンの事か……?」

「誰も人だとは言っていない」

 紅蓮の言葉に槙が淡々と言葉を綴る。

「紛らわしい言い方するんじゃねぇよ!」
「俺にとって、パソコンは彼女だ」
「普通に人だと思うだろうが!!」
「女に興味はない」

 そんな二人の言い合いが続く。

「あ、そう言えば冴子さんは?」

 奏が冴子がいないことに気付き、声を発する。

「例の詐欺事件の事であの翼って人がどうなったか聞きに行っているよ」

「そうなんですね……」

 透の言葉に奏が不安そうに答える。

 出来れば翼を罪に問わないで欲しいと願う。掛け子をしていたのは事実だとしても、翼は嘘で脅されてやっていただけだ。報酬も一切受け取っていないと本人も言っていた。そして、掛け子をしていた時も騙しはせずに相手を気遣う言葉を掛けていたことが次々と分かった。

(できることなら罪に問わないで欲しいな……)

 奏が心の中で祈るように言葉を綴る。


 ――――ガチャ。


「ただいま~♪みんな揃ってる?」

 そこへ、冴子が戻ってきた。

「さて、例の事件の報告よ♪あの子……翼君は無実となったわ♪」

「ほ……本当ですか?」

 冴子の言葉に奏が声を発する。

「えぇ♪事情が事情だったとことや、掛け子をしていたとはいえ、騙していなかったことが審議の焦点になってね。罪には問わないでおこうという事になったのよ」

 冴子がそう説明する。

「よ……良かったです……」

 その言葉に奏が安心して胸を撫で下ろす。透たちも何処かホッとした表情だ。

「じゃあ……はい、これ♪」

 冴子がそう言って、書類の束を机の上に置く。

「今日はみんなでこの資料の整理をするわよ♪」


 特殊捜査班は声がかかったとき以外はいわゆる雑用の仕事をこなすことになっている。みんなで手分けしてその書類を整理していく。書類の整理とは誤字脱字がないかとか、記入すべき所にちゃんと記入されているか、といった要は確認だった。



「はぁ~……、気が重いな……」

 麻薬を渡された男、佐崎さざき 徳二とくじはため息を吐きながら夜の街をぶらついていた。

(……足を洗うのは難しいのかな……?)

 そう心で呟きながら、誰かいい獲物がいないかを探しながら道を歩く。

「おじさん♪良かったら遊ばない?」

 そこへ、一人の女性が声を掛けてきた。年齢は二十代前半ぐらいだろう。胸を強調させるような恰好をしており、スカートもかなり短い。恐らく、肉体関係を持ち、お金を貰えないかという事だろう。

「どう?おじさんならこれでいいよ?」

 女性が掌をパーに広げながら言う。五万円でどうかという事だろう。

「そうだな……」

 徳二がその言葉にどうしようか悩んでいた。



「……さて、今日もとっとと掃除するよ!」

「はーい」

 二人の女性がホテルの部屋の掃除のためにその部屋のドアを開ける。そして、部屋に入り、掃除を開始しようとした時だった。

「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」

 部屋に入った女性たちがあるものを目にして叫び声をあげる。


 そこにはナイフで胸を刺されている一人の女性の遺体が転がっていた……。


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