ファクト ~真実~

華ノ月

文字の大きさ
37 / 252
第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る

第13話

しおりを挟む
「君は……確か……」

 突然声を掛けてきた奏に徳二は驚きの顔をした。

「突然申し訳ありません。あの……何かあったのですか?」

 奏がどこか焦っている徳二を見てそう言葉を掛ける。

「あ……あの写真の女性を見なかったか?!」

 徳二が奏の肩を掴みながらどこか切羽詰まった様子で言う。

「……やはり、絵梨佳さんの事を知っているのですね?」

「っ……」

 奏の言葉に徳二が言葉を詰まらす。

「実は――――」

 徳二はそう言うと、絵梨佳を匿っていたことを話しだした。

「――――というわけなんだ。それに……」

 徳二は話し終えるともう一つの話を始める。その話に奏と透は驚きを隠せない。

「絵梨佳さんを探しましょう!!」

 奏がそう言い、徳二と共に絵梨佳を捜索することにした。



「少し出掛けてきます……」

 新形がそう言葉を綴る。

「なんだ?急用か?まぁ、いいだろう……」

 新形の言葉に神明がそう問いかける。

「ちょっと、野暮用が出来たので……」

 新形はそう言うと、部屋を出て行った。そして、手下数人に声を掛けて、その人たちと共にあるところに向かった。



「……後、絵梨佳が行きそうなところと言えば……」

 政明が呟く。絵梨佳が行きそうな場所は殆ど探したが、絵梨佳は見つからない。後どこか絵梨佳が行きそうな場所を必死で考える。

「もしかして……」

 政明はある一つの場所を思い浮かべ、その場所に急いで駆け出していった。



「……ここがその場所か……」

 紅蓮と槙が女性から聞いた場所に足を踏み入れる。そこは噴水のある一つの広場のような場所だった。

「ここにいるかどうかは分からないがな」

 槙が淡々と言葉を綴る。

「とりあえず、捜索してみようぜ」

 紅蓮の言葉に槙が頷く。

 それなり敷地がある広場にはベンチが点在しているが、時間が夕刻のためか人通りはほとんどない。

 その時だった。

 一人の女性が広場に入ってくるのが見えて、そちらに顔を向ける。その女性は広場に入ると、あるベンチに一直線に進み、そこに腰を下ろした。

「近場の人間か?何も持っていないし……」

 槙が女性の手に何も持っていないことにそう呟く。

「……まさかとは思うが……」

 紅蓮が女性を見ながらそう言葉を呟く。

「絵梨佳……じゃないか?」

「え?」

 紅蓮の言葉に槙が声を出す。

「格好はそんなことをしていそうだが、顔が違うじゃないか」

 槙が呆れたようにそう言葉を綴る。

「確信はないが、あれ……すっぴんなんじゃないか?」

 紅蓮が遠目でその女性を見ながらそう答える。

「ほら、奏ちゃんが言ってただろ?買い物の中にクレンジングシートがあったって……。もし、それを買ってくるように頼んだのが絵梨佳だとしたら、あれはメイクを落とした状態じゃないのか?」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「……それであんなにも顔が変わるものなのか?」

 槙が半ば驚いた様子でそう言葉を綴り、「メイクって怖いな」と呟く。

「とりあえず、ちょっと様子を伺おうぜ?」

 紅蓮がそう言って槙と共に隠れるように絵梨佳の様子を見ていた。



 辺りが薄暗くなっていく中、政明はある場所を目指して駆けていく。その姿を見失わないように本山と杉原が後を追う。

(……頼む……そこにいてくれ……絵梨佳……)

 政明が懇願するように心で祈る。


「……何処に向っているのでしょうかね?」

「わからん……。見失わないようにするぞ」

「はい」

 杉原の言葉に本山がそう答える。そして、政明の後姿を追っていった。



「あの場所から動かないな……」

 紅蓮がポツリと呟く。

 メイクを落としている状態なので絵梨佳かどうかの核心はないが、可能性は高いとしてその女性を見張る。

「……誰かを待っているのか?」

 槙がその場所から動かない女性を見てそう言葉を綴った。



「……一体どこに行ったのでしょうか?」

 奏たちが絵梨佳を探しているが、絵梨佳は何処にも見当たらない。何処に行ったのか見当もつかない。

「佐崎さん、他に絵梨佳が行きそうな場所はあるか?」

 透が徳治にそう問う。

「いや……、分からん……。絵梨佳のことは殆ど知らないんだ……」


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 そこへ、透の携帯が鳴り響いた。

「はい、もしもし……。……何?!」

 透が電話の相手から伝えられたことを聞いて声を上げる。そして、奏たちにそれを伝え、その場所に急いで足を運んだ。



(……私、何のために生きてるんだろ……)

 噴水の前のベンチに座りながら絵梨佳が心でそう呟く。

(このまま、ここで死ぬのも悪くないかな……。体が冷えて……意識が遠くなって……死んでいく方がいいかも……)

 そんなことをぼんやりと考えながら、体を丸めて顔を埋める。

 その時だった。


「見つけた!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...