ファクト ~真実~

華ノ月

文字の大きさ
82 / 252
第五章 羽を失った鳥は猛獣をエサにする

第3話

しおりを挟む
「……そんなに沢山の女性から?!」

 奏が署の中にある取調室でそう声を上げる。

「あぁ……、被害に遭った女性が店に怒鳴り込んできたこともあるぐらいだよ……」

 奏がお願いした事とは、外に聞き込みに行く前に義人と話をさせて欲しいという事だった。義人が普段から零士を気に入らなかったのは何か理由があるはずだと思い、義人の面会をお願いする。すると、許可が出てこうして義人と対面することになったのだった。

「物でもかなり高価なものをいろんな人に貢いでもらっていたし、金も貢いでもらっていたみたいだよ。中にはそれで破産になった人もいるっていう話だし……」

 義人の言葉に奏が愕然とする。女性がホストに本気で惚れこんで入れ込むという話は聞いたことはあるが、それによって破産するまでいくということは奏には信じられなかった。

「……でも、それはある意味ホストのステータスでもあるんじゃないのか?それだけ人気があるって事だろう?」

 傍で話を聞いていた透がそう声を挟む。

「まぁ……、そう言ってしまえばそうなんだけど……」

 義人がその言葉に言葉を詰まらすように言う。

「……何か別の理由があるのですか?」

 奏がそう問いかける。

「……いや、別に……」

 義人がそう言って黙り込む。

 これ以上話を聞くのは無理だと思い、奏と透は取調室を出る。


 そして、聞き込みを開始するために奏たちは街に繰り出した。



「……ふぅ、これでよし……」

 麗美が部屋の中で溜まったゴミ袋の束をマンション共同の集積所に捨てると、一息吐いた。


 ――――ブー、ブー、ブー……。


 そこへ、ポケットに入れてあるスマートフォンが震えたので、メッセージを確認する。

「……うわっ……」

 麗美がスマートフォンを見て声を出す。

 そこには、西田からの大量のメッセージが送られていた。

『良かったら店じゃなくて外で会ってよ』

『ボトル入れているんだからサービスしてくれてもいいんじゃない?』

『麗美ちゃんのためにとびっきりのホテルを見つけたよ!』

 メッセージにはそう書かれていて、いかにも下心が丸出しなのが分かる。

「……キモッ……」

 麗美がメッセージを見てそう呟く。


 ――――ブー、ブー、ブー……。


 そこへ更にメッセージが届き、麗美は「また西田が何かを送ってきた」と思い、メッセージを開ける。

『次は夜景が綺麗に見えるホテルでデートしよう。スィートを予約したよ』

 そのメッセージを見て麗美がホッと一息つく。そして、そのメッセージに「いいよ」と言う内容の返信をする。

『最近、店には来ないね。どうして?』

 麗美がそのメッセージを送った相手に返事をした後でそうメッセージを送る。

『だって、その店に行かなくても麗美は今自分の手の中にあるわけだからね』

 すぐに相手からメッセージがそう来る。

『私の売り上げに協力して欲しいのだけど……』

 麗美がそうメッセージを送る。

『気が向いたらね』

 相手からそう返事が来て、麗美が心の中でため息を吐くと部屋に戻っていった。



「……それ、本当ですか?!」

 奏が一人のホストからある話を聞いてそう声を上げる。

 奏たちは零士の事を探るために、零士が働いていた同じクラブのホストに会っていた。勿論、みんなでぞろぞろと会うわけにいかないので、奏と透がそのホストにカフェで会うことになり、紅蓮と槙は近くのテーブルで聞き耳を立てていた。そして、そのホストからある事を聞いて奏たちが唖然とする。

「まぁ、本当かどうかは分かりませんが、そういう事があったとは零士から聞いたことがあります」

 殺された零士と仲が良かったという咲夜さくやと名乗るホストから話を聞けることになり、他にも何かなかったかを聞いてみる。

「そうですね……。まぁ、店に『零士に騙された!』とか言って店に怒鳴り込んできた人がいるのは確かですよ。でも、ホストをしている自分に言わせれば、零士はそれだけ言葉の使い方が上手いっていう事でしょ?それって、ホストとしては客を獲得するのに必要な事だし、零士は見た目からしても抜群だったし、女に甘い言葉を掛けるのもこのクラブの中ではピカイチだったんじゃないですかね?もう少しでナンバーワンになれるって言われていたし……」

 咲夜の言葉に何処か頷けるものがあるものの、先程の話はそれを逸脱しているんじゃないかとも思える。

「……あ、そういえば……」

 咲夜が何かを思い出したのか、そう言葉を発する。

「何かあるのですか?」

 奏がそう尋ねる。

「うーん……、何かというわけじゃないんですけど……。零士が言っていたことがあるんですよね。「あの女は身体つきは良いけど求められてばかりだ」って……。多分、そっち系の事だと思うんですけど、その女に零士は参っていたみたいですよ?縁を切りたいって言っていたくらいだし……」

「その女性の名前は分かりますか?」

 奏が咲夜にそう尋ねる。

「名前まではちょっと分からないけど、確か「フェリチタ」っていうところで働くホステスだったと思うけど……」

 咲夜の言葉に透がその店の名前のメモを取る。そして、お礼を言うと咲夜と別れた。

 奏たちが店を出ると、その「フェリチタ」と言う店に話を聞きに行こうという話になるが、そこで一つの問題が浮上する。

「……今の段階でそこに聞き込みに行くというのは得策じゃないかもな。この事件はとりあえず久我義人が犯人という事になっている……。それなのに、その事件で聞き込みに行くとなると……」

「真犯人は他にいてその犯人の目星としてその店のホステスを疑っていると思われる……と思われるかもしれない……」

 透の言葉に槙がそう言葉を付け足す。

「じゃあ、いっそのこと客として入り込んで聞いてみようぜ!」

「「「は?」」」

 紅蓮の意気揚々とした言葉に奏たちが同時に声を上げた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...