ファクト ～真実～

最終章 愛されていた鳥

第１９話

　男があるコメントを見て声を上げる。

「くそっ……。こうしちゃいられない……」

　男はそう言うと、急いで出掛ける準備をしてサングラスをかける。そして、部屋を出てある場所に向かった。



「……反応があったぞ」

「ホントか？！」

　槙の言葉に紅蓮が声を出す。

　次の日、奏たちが到着すると、槙がそう口を開いた。どうやら作戦は成功したらしく、早速、次の段階に取り掛かる。そして、賀川にも連絡をして、次の段階に進むように電話を掛ける。

『……分かった。でも……本当に大丈夫だよな……？』

　賀川が電話口で不安そうにそう言葉を綴る。

「大丈夫です。そこは安心してください」

　透が電話口でそう声を掛ける。

『……分かった』

　賀川がそう言って、電話が終わる。

「じゃあ本番と行きますか♪」

　紅蓮がどこか楽しそうにそう声を発する。

「奏、手筈通り頼むぞ」

「わ……分かりました」

　透の言葉に奏がそう返事をする。

「まぁ、どのみち時間はまだ早いわ。時間まではここで待機よ」

「「「はい！！！」」」

　冴子の言葉に奏たちがそう返事をする。


　そして、例の作戦が実行された。



「……さて、行くか……」

　透がそう声を発する。

「お祭りの始まりだ♪」

　紅蓮が愉快そうにそう声を上げる。

　そして、車に乗り込み、その場所に向かう。

　奏は別の車に乗り、冴子が連れていく。

　そして、ある場所に向かって車が走り出した。



「そろそろ時間だ……」

　賀川がそう言って、部屋を出る。

　その瞳は何かを決意したようなそんな雰囲気が見て取れる。場合によっては自分も危険かもしれない。でも、女神の為ならと自分に言い聞かせてある場所に向かった。



「……この辺りだな」

　男がそう言いながら辺りを見渡す。

　民家はあるもののどれも廃屋の状態で人通りは全くない。

（確かに絶好の場所だな……）

　男がそう心で呟く。

「……ここだな」

　男が一つの廃屋になった物置小屋のようなところを見上げながらそう呟く。そこに足を踏み入れて、近くの物陰に隠れると、ある人物が現れるのを待つ。


　――――チッ……チッ……チッ……。


　腕時計の秒針が耳に響く。


　――――カチャン……。


　そこへ誰かがやってきた音が響く。

　男がそっとその人物を確認する。

　そこにやって来たのは奏だった。奏はあたりをきょろきょろと見まわして、何かを探している様子だ。

（……やはりあのコメントは本当なのか……？）

　男がそう心で呟く。

（しかし、奏の秘密って一体……？）

　男がそこまで考えてあることを感じる。

（まさか……？！）

　男がもしかして例の事ではないかと考える。

（そんなことさせるか……）

　男が憎悪を露わにしながらそう心で呟く。

　その時だった。

「やぁ……、こんにちは……」

　賀川が不気味に笑いながらその場にやってくる。

「お話って何でしょうか？」

　奏が緊張気味でそう声を発する。

「……その前に例の件、引き受けてくれるんだよね？」

　賀川が不気味な笑顔を作りながらそう言葉を綴る。


　――――ゾッ……！！！


　その表情があまりにもリアル過ぎて、奏に悪寒が駆け巡る。

（本当に……演技……？）

　奏が冷や汗を流しながらそう心で呟く。

　そう感じてしまい、作戦通りの言葉を発することが出来ない。

「め……女神……」

　賀川がそう言って不気味な笑みを称えながらじわりじわりと奏に詰め寄ってくる。

「っ……！！」

　奏が金縛りにあったみたいにその場から動けなくなる。

「女神……俺と……」

　賀川がそう言って更に奏に詰め寄る。

　その時だった。


　――――バターンっ……！！！


　急に奏がその場に倒れる。

「え？！」

　突然のアクシデントに賀川が驚きの声を出す。奏の呼吸は荒く、意識も朦朧としている感じだ。

（ど……どうしたら？！）

　賀川がどうしていいかが分からずにおろおろとし出す。

　その時だった。

「……おい」

「っ……？！」

　賀川の背後から男の声が聞こえて、賀川が驚きのあまり声にならない声を出す。

「何をしている……？」

　男が低い声でそう唸るように言う。

「あ……あ……」

　賀川がガタガタと震えだす。

「ち……ちが……これ……は……」

　賀川が青ざめながら途切れ途切れにそう声を発する。

「奏は汚せない……」

　男がそう言って懐からナイフを取り出す。

「あ……あ……」

　賀川が恐怖のあまりその場にしゃがみ込む。

「死ね……」

　男がそう言ってナイフを大きく振り上げる。

　そして、賀川にめがけてナイフを振り下ろそうとする。

「あああぁぁぁぁぁぁ！！！」