ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第21話

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 奏が犯人の男の顔を見てそう声を出す。

「う……そ……、そん……な……」

 奏が手で口元を抑えながら震えるように言葉を綴る。

「……とりあえず、署に戻りましょう」

 冴子がそう言って車は署に戻っていった。



「……じゃあ、お前が小川を殺したことも認めるんだな?」

 取調室で本山が男と向き合いながらそう言葉を綴る。

「はい……」

 男の所持していたナイフが小川を殺した時と同じものだったことが分かり、観念したのか、男はそう素直に返事をする。

「どうしてこんなことをしたんだ?」

「……」

 本山の言葉に男は答えない。

「もう、犯行は明確なんだ。全部話したらどうだ?」

 本山がそう声を発するが、男は何も話さない。

「このままだと、無期懲役の可能性もあるぞ?」

 本山がそう言葉を綴る。

「……別に構いませんよ」

 その言葉に男がそう答える。

「どうしますか?」

 本山の隣にいた杉原が小声で本山にそう声を掛ける。

「ちょっと、一旦中止だ」

 本山がそう言って取調室を出て行った。



「大丈夫?ほら、これ飲んで落ち着くといいわ」

 冴子がそう言って奏にホットコーヒーを渡す。

「ありがとうございます……。あの……冴子さん……」

 奏がお礼を述べて、どこか悲痛の表情でそう声を出す。

「犯人と、話させてください」

 奏が真剣な表情でそう声を発する。

「で……でも……」

 その言葉に冴子が戸惑う。

「……冴子さんは私と彼がどういう関係か知っているんですね?」

 冴子の表情で奏がそう言葉を綴る。

 その言葉に冴子はどう言っていいか分からずに何も言わない。

「お願いします。冴子さん」

 奏がそう言って深く頭を下げる。

「どうしても……どうしても……ある真実を伝えたいんです……」

 奏が懇願するように頭を下げながらそう言葉を綴る。

「……ちょっと、待っていてくれるかしら?」

 冴子がそう言って特殊捜査室を出て行く。

 しばらく待っていると、冴子が戻ってくる。

「本山さんの了承を取ったわ。付いて来てくれる?」

 冴子がそう言って奏たちと取調室に向かう途中だった。

「……その前に電話をさせてください」

 奏がそう言って、ある人物に連絡を取る。

「……お待たせしました」

 電話が終わり、奏がそう声を発する。

「……行きましょう」

 冴子がそう言って、奏たちの前を歩きだした。



「……来たか」

 やってきた奏たちに本山が取り調べ室の前でそう声を出す。

「水無月……知っているんだな……」

「はい……」

 本山の言葉に奏がそう返事をする。

「俺と杉原も同伴する。いいな?」

「はい……」

 そして、奏と本山達が取調室のドアを開けた。



「冴子さん、一体どういう事なんですか?」

 奏と本山達が取調室に入ったのを見届けると、透がそう声を出す。

「あの男と奏ちゃんは何かあるんですか?」

 紅蓮がそう声を発する。

「……あの男の名前は神島 音也かみじま おとや。ミステリー作家の『黒錬こくれん』よ……」

「黒錬……?」

 その言葉に透が反応する。

「思い出した……!!あの顔……どっかで見たことあると思ったら、あのミステリー界の異端者って言われていたあの『黒錬』だ!!」

 透がそう声を上げる。

「えぇ……。彼の作品はどの作品も社会にメスを入れるような話ばかりで、それによって恨まれることもあったけど、一部の人には絶大な人気を誇ったあの『黒錬』よ……」

 冴子がそう言葉を綴る。

「でも、なんでそんな人がこんな事を……?」

 紅蓮が奏を狙う事件とその男がどう絡んでいるか分からなくて疑問の声を出す。

「実は……彼は少し前まで刑務所にいたのよ……」

「「「え?」」」

 冴子の言葉に透たちがはてなマークを浮かべる。

「彼は妻と友人を殺害して逮捕されていたの……。そして、服役を終えて、割と最近、刑務所から出てきたのよ……」

 冴子がそう言葉を綴る。

「でも、それと奏とはどこでどう繋がるんですか?」

 槙が不思議そうにそう声を出す。

「実は彼は――――」

 そう言って、冴子がある真実を透たちに話す。

「マジ……かよ……」

 冴子の言葉に紅蓮が驚きのあまりうまく声が出せない。透と槙もその真実に愕然としている。

 その時だった。

「……すみません」

 一人の女性と一人の男性が冴子たちに声を掛けた。



「なぜ……こんな事を……」


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