ファクト ～真実～

討伐編 前幕 獣に牙を向ける鳥たち

3.

　透がそう言葉を発して何かを言いにくそうに口を噤む。

「何かあるの？」

　冴子がそう尋ねる。

「奏には広斗さんがいますよね？紅蓮と一緒に住むとなったら心配するのではないでしょうか？」

　透が心配そうな顔でそう言葉を綴る。

「大丈夫よ♪奏ちゃんをしっかりガードしてくれる人がいるから♪」

　冴子が愉快そうにそう言葉を綴る。

「その人は女の人なんですか？」

　槙がそう尋ねる。

「そうよ♪と～ってもカッコイイ女の人よ♪」

　冴子が笑顔でそう答える。

「だから、その点に関しては問題ないわ♪」

　冴子が笑顔でそう言葉を綴る。

「まぁ……それなら大丈夫ですかね……？」

　透がどこか腑に落ちないが冴子が言うなら大丈夫だろうと思い、そう言葉を綴る。

（まぁ、別の意味で心配だけどね……）

　冴子が心でそう呟く。

「じゃ♪そういう訳だから今から家に帰って荷造り開始してね♪」

　冴子がそう言うと、奏たちは一週間後の移動に向けて急ピッチで荷造りを行う事にした。



＊＊＊

『……え？！移動？！』

　家に帰ってきた奏から電話を貰い、話を聞いた広斗が電話越しに驚きの声を出す。

『それに、シェアハウスで共同生活って……大丈夫……とは思えないんだけど……』

　広斗が心配そうにそう言葉を綴る。

　広斗が心配するのも無理はない。そのシェアハウスには透や槙だけではなく危険人物である紅蓮もいる。

「その……冴子さんの話だと、私には女性のボディーガードみたいな人がいるから大丈夫って言う事なんだけど……」

　奏がそう説明する。

『う～ん……。とはいえ、心配だな……。だけど、仕事関係だから駄目とも言えないし、それって決定事項なんだよね？』

「うん……」

　広斗の言葉に奏がそう返事をする。

『まぁ、冴子さんの言葉を信じるけど、何かあったらすぐに連絡するんだよ？』

「うん。分かった」

『荷造り、頑張ってね。離れ離れになるけど、僕はずっと奏の恋人だからね』

「ありがとう、広斗さん」

　広斗の言葉に奏が嬉しそうに微笑む。

　その後は二言三言交わして電話が終わる。

「……よし！時間もないし、頑張らなきゃ！！」

　奏はそう言うと、気合を入れて荷造りに取り掛かった。



　そして移動の日になり、奏たちは東京に向かうための新幹線に乗った。