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華ノ月

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第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる

第7話

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「……また、死体が発見されたそうです」

 お昼休み、颯希たちがいつもの場所でお昼休みを過ごしていると、颯希がおもむろに口を開いた。

「今回発見された方も悪さばかりをしている人だったみたいです。おそらく警察も連続殺人として捜査していると思います……」

 颯希が今日の朝、誠に掛かってきた電話の内容を話す。

 静かな町で立て続けに起こっている事件。警察は手を焼いており、被害者や関係者に当たっているが、被害者の関係者に当たる人物たちはその時間にほぼアリバイがあり、犯行を行なえない。殺された青年たちはそれなりにガタイもいいので、殺そうとして反対に殺されてしまう可能性の方が高い。捜査はかなり難航していた。そうなると、暴行事件絡みの連続殺人ではなく、また別の事件の可能性が浮上する。

「……なんか、どう言ったらいいか分からない事件ね」

 亜里沙がパンを齧りながらぽつりとつぶやく。そこへ、雄太が思い出したかのように口を開いた。

「……あ、そう言えば静也くん。颯希さんにお願いしてくれた?」

「まだ……。雄太、本気なのか?」

「うん。ダメかな?」

 雄太の言葉に静也が「うーん……」と、頭を悩ます。

「えっと……、何のことですか??」

 颯希が何の話か分からずに静也に尋ねる。颯希の問いに静也が口をもごもごさせながら言葉を選んで言った。

「その……、雄太が……えっと……、こ……今回の事件を捜査するなら自分も加えて欲しいって……」

「「「えぇっ?!!」」」

 その言葉に颯希だけじゃなく、亜里沙と来斗も驚きの声を上げる。美優も唖然としており、開いた口が塞がらない状況だ。

「……多分、今回の連続殺人は犯人による復讐が大きいと思う。でも、だからって復讐して自分の人生を狂わせちゃいけないと思うんだ……。そんなことをしても大切な人が余計に苦しむだけだから……」

「雄太くん……」

 雄太の言葉に、颯希が声を出す。


 復讐は何も生まない……。

 悲しみが更に増えるだけ……。

 だから、大切な人のことを思うなら復讐はしてはいけない……。


 雄太が綴る言葉に颯希たちが食べるのを止めて静かに聞いている。雄太の表情はどこか遠くを眺めながら過去を振り返っているようにも見える。まるで、過去の自分がそういうことをしようとしていたような、そんな雰囲気が見受けられた。



「今回殺された小林こばやしは、今までの被害者同様、グループでよく悪さを行っていたという事だ。犯行で使われた凶器は最初の被害者である上田と同様の凶器が使用されたことが分かった。今まででも殺された上田、前田、小林、この三人の足取りを全力で調べろ!いいか!これ以上殺人が起こらないためにも犯人の検挙に急げ!」

「「「はい!!!」」」

 芝原が声を上げながら、発する言葉に捜査員たちが返事をする。

 まだこの連続殺人は続くのか……?

 そして、犯人はいったい誰なのか……?

 先の見えない捜査に捜査員たちが苦渋の表情を浮かべていた。

「……一体誰なんでしょうね、今回の犯人……」

 呉野が今回の事件がなかなか進展しないことにため息を吐く。

「容疑者と思われる人が多すぎだからな……。全く……、仏さんが悪さをしなきゃよかったのに……」

 木津が苦々しそうに答える。

 捜査を立ち上げている一室では、今回の事件でほとんど進展がないことに皆焦りを感じていた。一つは容疑者が多すぎること、一つは第一の事件と第三の事件で使用された凶器が見つかっていないこと。

「とりあえず、一つ一つ可能性を当たっていくしかなさそうだな……」

 木津が重い腰を上げて、呉野と共に部屋を出ようとした時だった。

「……失礼します!」

 一人の男が捜査室に尋ねてきた。

「特殊捜査員の青木と言います。お話があって伺いました」

 友成の言葉に芝原が捜査室へ招き入れる。そして、友成はパソコンを起動するとある画像をいくつか出した。

「例の暴行罪の動画と他の被害者のスマホを確認したところ、特徴や動きから暴行罪の実行犯がすべて分かりました。今回の事件で殺害されたのは全て実行犯です。そして、その中でまだ生きているのはこの男だけです」

 友成がそう言って、一枚の顔写真を見せる。

「名前は岡本おかもと 竜司りゅうじ。こいつだけがまだ殺されていません!」

 友成の言葉に芝原が叫ぶ。

「よし!岡本を暴行罪で引っ張り出せ!後、今回の事件も知っていることは全て吐かせろ!いいな!!」

「「「はい!!」」」

 芝原の言葉で捜査員たちが部屋を出ていく。



「……後あいつだけなのに……、何処に雲隠れしやがった……」

 ある部屋で男がブツブツと文句を言っている。部屋には他にも人影があった。みんなでこそこそとどうやって見つけるべきかを話している。

「……探すにしても見当がつかないな」

「あぁ、一体どこにいるんだ……?」

 男と人影が苛立ちながら言葉を呟く。

「必ず見つけ出そう……。そして、地獄に送り込んでやる……」

 男たちの目には狂気が宿っていた。



「なんで……こんな目に……」

 ある場所で青年が一人、うずくまりながらガタガタと震えている。その眼には怯えが宿っていた。

 仲間の青年たちが次々と殺されている中で、自分もいつ殺されるか分からない。家にいるのは危険だと感じ、この場所に身をひそめる。

「僕は悪くない……僕は言われた通りにしただけだ……」

 うずくまりながらブツブツと言う。



「じゃあ、まずは聞き込みから開始しましょう!」

 学校が終わり、颯希と静也、それに今回は雄太も加わって近所の聞き込みを開始した。





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